ラッセ・ハルストレム監督篇
ショコラ Chocolat (UK,USA 2000/121min)
ネタバレ注意報発令!
出演
Juliette Binoche ....... ジュリエット・ビノシュ (Vianne ヴィアンヌ)
Victoire Thivisol ........ ヴィクトワール・ティヴィソル (Anouk ヴィアンヌの娘、アヌーク)
Judi Dench .................. ジュディ・デンチ (Armande Voizin 頑固ばあちゃん・アルマンド)
Carrie-Anne Moss .... キャリー=アン・モス (Caroline カロリーヌ=頑固ばあちゃんの娘)
Aurelien Parent-Koenig (Luc リュック=カロリーヌの息子、頑固ばあちゃんの孫)
Alfred Molina ............... アルフレッド・モリーナ (Comte de Raynaud レノ伯爵=村長)
Lena Olin ....................... レナ・オリン (Josephine Muscat ジョゼフィーヌ=カフェの奥さん)
Peter Stormare ........... ピーター・ストーメア (Serge Muscat, Cafe Owner=カフェのダメ主人)
Johnny Depp .............. ジョニー・デッ
プ (Roux ルー=かっこいいジプシーのおにいさん)
John Wood .................. ジョン・ウッド (Guillaume Blerot=恋するじいちゃん)
Leslie Caron ................ レスリー・キャロン (Madame Audel オデル夫人)
Hugh O'Conor .............. ヒュー・オコナー (Pere Henri, Young Priest=新米神父さん)
この監督の作品っていうのは、”ほのぼの” とか ”ハート・ウォーミング”
みたいなキャッチがほんとうに相応しいんだろうか、という気がしてしまう。この作品にしても
『ギルバート・グレイプ』 や 『サイダー・ハウス・ルール』 にしても。
たしかに”ほのぼの” な部分は大きいし、画像もきれい。作りも丁寧なんだけど、でも基本はブラックというか辛辣というか、ちょっと変わった成り行きなんじゃないかな、この監督のものって。
なんだか割り切れない部分や ”人間てこわい…” みたいな部分が混じり合う感じとでもいうか。
『ショコラ』 は不思議な映画だ。北風が吹くと放浪したくなるという変わったな女性ヴィエンヌ
(ジュリエット・ビノシュ)が主人公。娘を連れて、あちこち点々としている彼女がとあるフランスの寒村にやって来てチョコレートのお店をだす、というのが事の発端。
この村がまた、とっても変わっていてゴチゴチのカソリック教徒の村長、レノ伯爵がすべてを牛耳っている。毎週必ず教会に集まらねばならず、告解せねばならず…とにかく小うるさい。
私なら中卒くらいで飛び出してるわ、こんなところ。
小高い丘の上にちんまりと張り付いた、中世の面影を残す村はとても美しい。けれど、こんな風では息がつまってしまいます。
当然ながらこの村はよそ者は受け付けない。得たいの知れない母娘なんてもってのほか。しかも商っているものがまたいけない。「チョコレートは悪徳の象徴」 みたいに排斥しようとする。
川を船でやってくるジプシーたちも当然、よそ者、流れ者。そのリーダー格のルー
(デップさま) は村のカフェで 「動物に売るもんなんかねぇよ」 と店主に追い返される始末。ひっどいじゃありませんか、この仕打ち。
とはいっても、この映画の核をなすのは、頑固ばあちゃん (ジュディー・デンチ)、その娘のカロリーヌ
(キャリー=アン・モス)、カフェの女房ジョゼフィーヌ (レナ・オリン) といった、それぞれに問題を抱える女性たちが、ヴィアンヌと出会って自分も周囲も少しずつ変わっていく、というのが見所なんでしょう。
この4人の女性たちはみんな、ほんとうに強くて美しくて、おもわず 「幸せになって!」
と思ってしまう。特にジョゼフィーヌ役レナ・オリン、最初に登場した時のやつれ果てた姿から、ダメ亭主を捨ててヴィアンヌの店に駆け込んだあと、どんどん変わってゆくのが気持ちいい。
レナ・オリンって 『ナインス・ゲート』 で妖しくてエロい謎の女性を演じていた人だわ。ジョニー・デップ扮するコルソもついフラッと…という場面もありましたっけ。
『ナインス・ゲート』 ではちょっと老けた感じがして、それほどきれいとも思わなかったんだけど、この映画ではグッといい感じでした。さすが監督の愛妻。よく撮ってますです。
彼女がバカ夫を鍋でカーンと打ちのめすシーンはほんまにスッキリした。でも、このダメ亭主セルジュ=カフェの店主 (ピーター・ストーメア) もちょっとかわいそう。彼は自分でものを考える力がなくて、すっかりレノ伯爵に操られていて、とんでもない事をしでかしてしまう。
で、村から追放されてしまうんだけど、伯爵だってセルジュの行いには重大な連帯責任があるのに、釈然としません。
レノ伯爵は伯爵でこれまた、表面は威厳を取り繕っているけど、実は奥さんに逃げられた淋しい男。でも、カロリーヌに密かに思いを寄せられており、最後のほうではカロリーヌと伯爵は
「うまくいきそう」 な風に終わってます。なんでレノ伯爵は責任とらないんだ〜、セルジュの行いに対して。
要はいわゆる ”女性映画” 。おいしいショコラは、複雑な人間関係や登場人物の心の葛藤をあぶりだすうまい触媒といった感じです。
ジプシーのルー (デップさま) は、その格好よさだけですべて許そう(笑)。船上のパーティー・シーンも大切だし。ラストではちゃんとヴィアンヌのもとへ帰ってくるし。「帰さなかったらトマト投げつけてやる」
とプロデューサーの一人がいったとか。こういう言葉は字幕でも訳して欲しいです。そうでしょうそうでしょう、ムフフフ。
デップさまファン向けコメント
これはもう、なんといっても見所はギター! ギター弾いてるっていうだけで満足。もともとミュージシャンになりたくて…というヒストリーはよく知られている。"P"というバンドをやっているらしいというのも話には聞いているけど。
でも映画のなかで楽器弾いているシーンが見られるのは珍しくないですか? うれしいな〜。「ブルースやジャンゴをちらっとね…」
みたいにご本人がインタビューで話している。ジャンゴ・ラインハルトの雰囲気はこの映画にまさにぴったり。
『クライ・ベイビー』 ではモロにバンドやってましたけど。ギターも歌もプロの吹き替えだと思う。そうはいっても
『クライ・ベイビー』、ほんとうにケッサクなので、必見です。エルヴィス並の衣装で歌い踊るデップさま(笑)。
船の上のダンス・シーン。これもオイシイっすね、ワハハ。ヴィアンヌ (ビノシュ) と一緒の。
このシーンで女性のプロデューサーさんが 「とにかく、いいオトコ〜」 みたいな発言をしていて笑った。「ん〜、セクシーなシーンだわ〜」 とも。正直な方々。
オマケ映像でジュディ・デンチとチラッと踊るシーンもみられますね。ジュディに
「恋をした」 とデップ発言。ジュディも 「20歳若かったらねぇ…」 なんていっていて微笑ましいです。
爆笑ものはボツになったカーリー・ヘア姿。似合わないってば!
ファッション・ウォッチ
ほんとうに素敵なファッションばかり。ヴィアンヌのもジョゼフィーヌのも、カロリーヌのも。1959年という設定だったかな?確か。往年のスターのファッションを狙ったという製作者発言どおり、成功してましたね。衣装担当の方はクラウディア・カルディナーレやソフィア・ローレンの名前をだしてました。
色使いがまたうまい。強い印象を残す母娘お揃いの赤のマントから始まって、明るめで鮮やかなヴィアンヌの服。深い赤紫の胸の大きくあいたドレスもいいし、ブルーのハリウッド女優みたいな寝間着とか、フワッと羽織るガウンなど。
カロリーヌの地味目だけど品の良いファッションも見逃せない。清楚な感じ。初めのうちは白、薄いグレー、薄いベージュなんかが主体で、進行につれて色がきれいになっていく。スミレ色や薄いブルーのドレスから、最後はクリーム色の地に細かいプリントのワンピース、薄紫のカーディガンを羽織って。
花柄のプリントやらチェックなんかもとてもかわいい。ヴィアンヌが着た、トップスがサーモンピンクの無地でスカートが同じサーモンピンクを主体にした大柄なチェックという組み合わせなんかも素敵だった。スカートはウエストが締まっていて裾が大きくフレアになっているやつ。オードリー・ヘプバーンとかに似合いそうなタイプ。ダンスすると裾がフワッと広がって。
ジョゼフィーヌが船上パーティーで着ているドレスもナイス。ピンクの花柄。無地のピンクのカーディガン。登場時のうちひしがれたジョゼフィーヌが薄いグレーの粗末なコード姿だったのと対照的に華やかさ一杯。しがらみから解放された気分ってものをあらわしているんでしょうね。監督ってば、「このドレス、レナにプレゼントしたいな」
だって。愛妻家な監督であります。
とにかく、普段着もなにもとってもいいです。色使いもね。いかにもフレンチなパステル・トーン。マネできそう。ただし、ライン的には相当スタイルが良くないと無理でしょう(笑)。
ちょっとしたメモ
犬を連れた爺ちゃんと未亡人 (レスリー・キャロン)。二人はめでたくカップルになるんだけど、ヴィアンヌと爺さんの会話が面白い。
「彼女のご主人はいつ亡くなったの?」 というヴィアンヌに、爺さんは 「戦争でね、ドイツ軍に…」 と答える。「そう…でももう15年もたっているわね…」 とヴィアンヌ。「いや、その戦争じゃなくて、1917年1月12日に」 ですって。
なんと夫を亡くしたのは第一次世界大戦のことだったんですね。時が止まった村というイメージを象徴する言葉。
素敵なばあちゃんたち、二人。ジュディ・デンチと上述のオデル未亡人役レスリー・キャロン。二人とも50年代から映画に出ているベテラン。老いたりとはいえ、ほんとうにきれいでした。
レノ伯爵役のアルフレッド・モリーナは 『デッド・マン』 に出てましたね。
ダメ亭主役のピーター・ストーメア、『マイノリティ・リポート』 で眼球屋を怪演。
Oh! Chocolat!
この映画みて、チョコレートが食べたくなるのは当然のこと。チョコは断然、NEUHAUS
がお薦め。
こういってはなんですが、某GO○VA よりもワタシは断然、NEUHAUS 派。どちらもベルギーのですが、本国では両雄という感じでほぼ同格のトップ・ブランドです。日本では
G....... ばかりがありがたがられているような.…。もっとも映画の特典映像のでもG......が登場してましたけど。
なんとデップさまはチョコ嫌いだそうで。かわいそう〜。
(2003/01/10 DVDにて 2003/01/27up)
ギルバート・グレイプ What's eating Gilbert Grape (USA 1993/117min)
ネタバレ注意報発令!
出演
<グレイプ家の人々>
Johnny Depp .... ................ ジョニー・デッ
プ (Gilbert Grape=グレイプ家を背負って立つ孝行息子)
Leonardo DiCaprio ........... レオナルド・ディカプリオ (Arnie Grape=知的障害をもつ弟、アーニー)
Laura Harrington ............... ローラ・ハリントン (Amy Grape=ギルバートの姉)
Mary Kate Schellhardt .... メアリー・ケイト・シェルハート (Ellen Grape=ギルバートの妹)
Darlene Cates ................... ダーレン・ケイツ (Momma, Bonnie Grape=過食症の母)
<キャンピングカーの旅人>
Juliette Lewis ................... .ジュリエット・ルイス (Becky=ベッキー)
Penelope Branning .......... ペネロープ・ブラニング (Becky's Grandma=ベッキーのおばあちゃん)
<その他>
Mary Steenburgen .......... .メアリー・スティーンバージェン (Betty Carver=いけない奥さん)
Kevin Tighe ......................... ケヴィン・タイ (Mr. Ken Carver=いけない奥さんの夫。保険屋)
John C. Reilly .................... ジョン・C・ライリー (Tucker Van Dyke=ギルバートの友人)
Crispin Glover .................... クリスピン・グロヴァー (Bobby McBurney,
Mortician=ギルバートの友人)
なんだかなぁ、不思議かつ悲しい映画。
アイオワ州のエンドーラという小さな田舎町が舞台。
父がある日突然、家の地下室で首つり自殺してしまった一家。母はその日以来、ショックで食べ続けている。今じゃ”鯨”のごとく太って一歩も外へ出ない。
長男はとっくの昔に家をでてしまい、写真で登場するのみ。仕送りくらいしてるのか?
え?
それはともかく。この一家を支えなくちゃいけなのが次男のギルバート (デップさま)。弟のアーニー (ディカプリオ) は知能に障害があってもうすぐ18歳というのに、ひとときも目を離せない。
姉と妹もアーニーの面倒はみるけど、基本的にギルバートがアーニーのおもり役なのだ。仕事に行く時もアーニーを連れてゆくし、お風呂に入れ、寝かしつけるのもギルバートの役目。
ちょっと目を離すと高い塔に上って騒いで警察のお世話になってしまうアーニー。
これじゃ自分の自由な時間なんてありゃしない。でもギルバートはそれが自分の責任だと信じていて、けなげに役割を果たしているんだけど…。
そうはいってもギルバート、隙をぬって人妻の浮気相手なんぞしてたりもするのがちょっと笑える。そういや、こういうパターン、時々アメリカの映画に登場しますね。若くてかわいい男の子が年上の人妻と…というお話。定番なのか?
よくわらないけど。
そこへ登場するのがキャンピングカーの旅人、ベッキーとそのおばあちゃん。車が故障してしまったので、二人はしばらくの間、この町に滞在することを余儀なくされる。
ベッキー (ジュリエット・ルイス) は両親が離婚したためにあちこち点々としてきた娘で、おばあちゃんと二人、旅暮らしをしている。この子はちょっと変わった風貌で美人型でないけど、気持ちの自由さをうまく出してた。
空の広さ、夕陽の美しさ、川の水の気持ちよさ…身の回りにだって、新鮮な発見はあるのよ、とベッキーはギルバートに教えてくれる。
ベッキーと知り合ってギルバートは今の自分の生活にまったく満足できないでいる自分に気が付くんだけど、結局のところ、解決は母の死によってもたらされるというのが悲しい。
楽しいアーニーのお誕生パーティーのあと、ひっそりと逝ってしまった母。彼女とて、夫の突然の死以来、彼女なりのやり方でゆっくりと死へむかって歩んでいたのではなかったろうか。緩慢な自殺行為。
過食症という病は、何とかしようとすれば何とかなったはず.。食事を管理し運動して、健康になる努力をすべきだったのでは?とは誰しも思うところだろう。子供たちのために、そういう努力をするのが母だろう、と。でもラッセ・ハルストレム監督はそうは描かない。巨体になってしまったママはそのママのまま、静かに死んでゆく。
そしてこの監督独特のブラックなセンスがいきなり炸裂。ギルバートは家ごとママを火葬にしてしまうのだ。
家財道具を外に運び出して火が放たれる。父が作った大きいけどオンボロの家が炎をあげて燃える光景を呆然と見つめる兄弟姉妹たち。彼らを縛り付けていた家、亡き父、そして母…すべてが今、炎とともに消えてゆく。
映画のクライマックスをなす美しい光景だった。家族の重荷やら、”町中知り合い”みたいな息苦しさやら、すべてから解き放たれるような開放感があった。
もしかしてこの監督は、だだっ広くて美しいアメリカの自然と、それとは裏腹な住人たちの出口なき鬱屈を描きたいのかも?
『サイダー・ハウス・ルール』 でも、目が覚めるくらいに美しいニュー・イングランド
だっけか? の自然を背景にしているにもかかわらず、堕胎や捨て子、近親相姦やら階級差別、人種差別、さらには薬物中毒などがゾロゾロと出てきて、テーマ的にはなんか重いな〜と感じてしまった。
デップさまファン向けコメント
ブロンズ色の長髪が似合っていたデップさま。30歳直前の作品かと思われますが、若いですね。どちらかというと老けやすい西洋人には珍しいタイプかもしれない。
ギルバートのキャラクターが”どこまでも優しい人”という風に描かれていたので、当然ながら好感度抜群。
ディカプリオは評判どおり、とても上手い演技。アカデミー賞助演男優賞候補になったのもうなずけます。まだそれほど知名度がなかったディカプリオゆえ、”ほんもの”
と信じた人までいたそうな。その分、デップさまを喰ってしまったということもいえるかもしれない。
『アイ・アム・サム』 を見た時も思ったけど、こういう役は難しいけど成功すれば賞賛間違いなしっていう側面もあるはず。というか、誰もけなせないっていう聖域めいた感じが。
その後、アイドルとしてハリウッドの寵児となりドル箱スターにのし上がったディカプリオ。監督の作家性みたいなものを重視し、気に入った役しか出ず、アンチ・スターとも呼ばれるデップ。この二人の対照的な道のりなんぞに思いを馳せつつ鑑賞するのも面白いかと思われます。
(2003/01/18 DVDで 2003/01/27up)
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