テリー・ギリアム監督...............ラスベガスをやっつけろ
ラスベガスをやっつけろ Fear and Loathing in Las Vegas (USA 1998/118min)
監督 Terry Gilliam テリー・ギリアム
原作 Hunter S. Thompson ハンター・S・トンプソン
脚本 Terry Gilliam テリー・ギリアム/Tony Grisoni トニー・グリゾーニ
Tod Davies トッド・デイヴィス/Alex Cox アレックス・コックス
撮影 Nicola Pecorini ニコラ・ペコリーニ
出演
Johnny Depp..................ジョニー・デップ (Raul Duke/Hunter S. Thompson ラウル・デューク=トンプソン)
Benichio Del Toro.......ベニチオ・デル・トロ(Dr. Gonzo/Oscar Zeta Acosta ゴンゾ=アコスタ)
Tobey Maguire...............トビー・マグアイア (Hitchhiker ヒッチハイクの若者)
Christina Ricci...............クリスティーナ・リッチ (Lucy ルーシー)
その他むちゃくちゃ大勢
こりゃもう、大して語ることないですな。ハンター・S・トンプソンというジャーナリストが書いたドラッグ読み物をテリー・ギリアムが映像化したくて、した、そういうもの。
原作は『ラスベガス★71』、山形浩生訳、1999年、ロッキング・オン刊。
文章で読んだほうがさらに無茶苦茶ぶりが増幅して感じられます。ひたすらクスリ依存珍道中。訳文もすごくて、訳者氏は「訳していて楽しかった」とお書きになってます。そりゃ楽しいでしょう、こういう訳って。
解説もなかなかよいので興味のある人は必読。この本、カバーの後ろ全面に 5mm 四方くらいの幅でミシン目が入ってて、裏表紙をあけるとギザギザに切れている。これって、切り離して口にいれろって意味? 吸い取り紙ですか? でもトリップはできないでしょうけど (できたらタイヘン)。なかなか洒落た…というか人を喰った装丁であります。
1989年に筑摩書房から室矢憲治訳が既に出ている。タイトルは映画と同じ『ラスベガスをやっつけろ!』。ただし副題があって「アメリカン・ドリームを探すワイルドな旅」。
原著は下記。
Hunter S. Thompson ; illustrated by Ralph Steadman, Fear and Loathing in
Las Vegas : a Savage Journey to the Heart of the American Dream, New York,
Random House, 1971.
(検索したらサイン入り初版本って$700 だって…いいお値段というべきなのか、どうなのか)
初出は Rolling stone magazine, issue 95, November 11, 1971 and issue 96,
November 25, 1971. だそうです。
いちおうドキュメンタリーらしいけど、主人公二人が手当たり次第にドラッグを摂取し、グルグルにわけわかんなくなっている状態のドキュメントだからして、何もかもハチャメチャ。
頭上を蝙蝠が飛び交ったり、床の絨毯の模様はドローっと動き出すわ、人々は爬虫類になって喰らい合うわ、よくそんな状態で生きていられますね、え? と聞きたいくらい。麻薬でトリップってああいう感じなんでしょうかね。全然わからないけど。
主人公二人の行く先々、トラブル続出。あたりまえだけど、こんなヘロヘロ状態では。で、ホテルの部屋は散らかり放題、汚れ放題。床から壁から、なにからなにまで、ものすごい状態になり果てる。きもちわりー!
デップさまは原作を 「何度も読んでいた」 といい、もっと早く映画化されるべき作品だったと監督もいっている。著者ハンター・S・トンプソンはアメリカではかなりの有名人らしい。ビート・ジェネレーションからの流れがあるんだろうけど、こういうのほんとに好きね、アメリカの人たちって。
トンプソンは ”King of Gonzo” とか呼ばれていて、ファンサイトもけっこうある。ゴンゾ・ジャーナリズムって何のことかと思っていたら、このお話の二人組の片割れ、ゴンゾ博士に由来するんですね、それもまた凄いことではある。
で、ゴンゾ・ジャーナリズムというのは、現場に飛び込んで直接体験したことを主観的に書くというものらしい。ジャーナリストといえば、綿密な調査をしてあくまで客観的にドキュメントを書いていくのが通常だったけど、ハンター・S・トンプソンが『ラスベガス』の前に書いた『ヘルズ・エンジェルス』あたりで
”客観写生” じゃなく体を張ってナンボの”主観バリバリ” もアリだということになった…らしい。
要するに一つのジャンルの元祖になっちゃった人、60年代カルチャーを総括して、70年代につないだ人?っていう感じ?かな、よくわかんないけど。
それにひきかえ日本では、60〜70年代にかけてのロックやジャズ、ドラッグ・カルチャーに関心の高い人は知っているだろうけど、それ以外の人はまるで知らないでしょう。だから「おー、あの名作がついに映画化されたのか…」なんていえる人が大量にいたとはあまり考えにくい。
まとにかく、テリー・ギリアムがトンプソンの原作を借りて描いた狂噪のトリップ作品ってことで、監督とは実に好き勝手な人種である…と認識できます。
デップさまファン向けコメント
主演デップさまとくれば当然、ファンは雪崩をうって見に行ったことと思われますが…きゃー、やめてー、なんとかしてーその髪型…つうよりその頭部、ですかね、髪の毛、ないんだもん、ほとんど。
それでも私なんぞ、頭の形、いいのね〜なんていって見てるんだから、世話ありません。どうでしょう、いっそのこと「ファンシー・ダンス」みたいな、ブッディズム修業映画なんてのは(やめれ!)。
インタビューで語るところによれば、著者ハンター・S・トンプソンとデップさまはこの撮影のために、かなり長い時間を一緒に過ごした、ということです。トンプソンの家に泊まったりもした、と申されてます。んで、写真見ると、ほんとにそっくりなんでビックリ。
ホルダー付きで煙草をいつもくわえているのも、色の薄いサングラスをかけているのもトンプソンの特徴らしい。このシガレット・ホルダーのおかげでセリフの英語がすっごく聞き取りにくいったらありません。
歩き方がガニ股っぽいのも本人模写なんでしょう。ヘンテコなタイプライターの打ち方も。もともとデップさま、「トンプソン、リスペクト!」だったらしいから、役に取り憑かれてのめり込んでいた模様。
ベニチオ・デル・トロもゴンゾ先生を演じるためなんと、10数s太って、わざわざお腹を出っ張らせて頑張ってます。せっかくだからといわんばかりに、お腹を突き出してみせてます。キレっぷりもすごくてなんか不気味。
ちょっとしたメモ
アメリカではこの2003年2月に2枚組のスペシャルDVDが出たばかり。これが、最初のDVDよりもずっとたくさんのインタビューやらメイキングが入っているうえ、2002年に新たに収録された、デップさまがハンター・S・トンプソン作品を朗読する映像も入っているらしい。見たいな〜。
山形浩生訳版ではラルフ・ステッドマンのイラストもちゃんと入ってます(というか、最初の訳は見ていないので、イラスト入りかどうか不明)。映画化ではこのイラストもかなりお手本になっているのがわかります。トビー・マグアイア扮するヒッチハイカーも若いくせにしっかり禿げてるし。トビー君もかわいそうに…。
ラルフ・ステッドマンはイギリスのイラストレイターだそうですが、いいですね、こういうグロテスク系のイラストって。この話にすごくあっていてかっこいい。ギリアムの出自であるパイソン系との血縁も感じられます。
そういえば『ジャバー・ウォッキー』とか『ホーリー・グレイル』とか、見たくなってきた…。
テリー・ギリアム監督+ジョニー・デップという組み合わせの第2作、The Man
Who Killed Don Quixote、かなり壮大な規模のプロジェクトで期待大だったんだけど、見事に頓挫ちう。なんでも洪水にあったとか、主演の俳優、デップさまではなく、ドン・キホーテ役の爺さんだけど、その人の腰が悪くて馬に乗れなくなったとか…とにかくトラブル続出。保険会社に権利を取り上げられてしまったのだとか。ギリアム監督はまだ諦めてない、といってますが、どうなんでしょうね。
で、その撮影風景を追ったドキュメンタリー、Lost in La Mancha が2003年3月末、もしくは4月に日本でも公開されるらしいです。「ラ・マンチャで迷子になっちゃった…」とでもいいましょうか、このタイトル。
上に書いた『ラスベガス』DVDスペシャル版発売というのも、なんとなく、『ドン・キホーテ』再開に向けての資金集めという気がしないでもないですが、ほんとうのところはわかりません。
デップさまもガンバっていたというのに、残念至極な成り行きでしたが、せめてこのドキュメンタリーを見て楽しむことにしましょう。公式サイトは
こちらです。 撮影風景の画像もあり。もちろんデップさまのお姿も見られます。
(2002/02/24 DVDにて 2003/03/03up)
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