自分で監督...............ブレイブ
ブレイブ The Brave (USA 1997/118min)
ネタバレ、注意!
監督 Johnny Depp ジョニー・デップ
脚本 Johnny Depp ジョニー・デップ/D.P.Depp D.P.デップ/Paul McCudden ポール・マッカダン他
撮影 Vilko Filac ヴィルコ・フィラチ
編集 Pasquale Buba パスクァーレ・ブバ
プロダクション・デザイン Miljen Kreka Kljakovic ミリアン・クレカ・クリアコヴィッチ
(↑なんて訳すんでしょうか?)
音楽 Iggy Pop イギー・ポップ
出演
Johnny Depp..................ジョニー・デップ (Raphael ラファエル)
Marlon Brando...............マーロン・ブランド(McCarthy マッカーシー)
Marshall Bell...................マーシャル・ベル (Larry ラリー)
Elpidia Carrillo.................エルピディア・カリロ (Rita リタ、ラファエルの妻)
Frederic Forest.............フレデリック・フォレスト (Lou Sr. )
Luis Guzman...............ルイス・グスマン (Luis ルイス)
Floyd "Red Crow" Westerman....フロイド ”レッド・クロウ” ウェスターマン
(Papa ラファエルの父)
その他大勢
輝け! 記念すべき初監督作品!いやー、頑張っているんだなあ、というのが第一印象。
…ではありますが、とにかくいろんな意味で難しいことに挑戦しているな、というのも正直な感想。テーマにしても、あのゴミ捨て場の横のコミュニティの有様にしても、映像的にまとめるのが難しそうな設定で。監督・主演の二役もかなり大変だったようだし。
ストーリーも無茶苦茶、重苦しい。死を覚悟した男の最後の7日間というんだから。しかもスナッフ・フィルムに出演することを選んだ、つまり金で命を売ってしまった男。その残酷な場面は描かれないが、見る人の脳裏には常に主人公ラファエルの悲惨な最期が想像されてしまう。
なんかこう、背筋がゾーッとするような感覚が終始つきまとう。時計を止めて!
とか、あれはなにかの間違い、なかったことにして!…とか、軟弱な私はもう、やり切れなかった。
お芝居ではなく、本当に人が殺されるシーンを撮影しそれを鑑賞するという、おぞましさの極北をゆくスナッフ・フィルム。道義的にどうのこうのとか、そういうものがまったく通用しない、人間の暗黒面をむき出しにする特殊ジャンル。マーロン・ブランド扮するマッカーシーがそこらへんの蘊蓄(?)を縷々述べている。あの場面は、主に家族との絆を描くそれ以外の場面とは際だった対照をなしていた。
地下奥深く、剥き出しの石の壁に囲まれたその場所。なんか電気椅子? 拷問具?
みたいな物も置いてあるちょっとゴシック・ホラーなそこは、しかし、脳天気なホラーの要素なんて微塵もなくて、ひたすら薄気味悪かった。そこになぜか車椅子のマーロン・ブランド。存在自体がほとんど不気味、このじいさま。
ネイティヴ・アメリカンの問題も重いんだろう。デップさまがわざわざ映画にしたかったというのは理解できる。それも『デッドマン』のような白黒の映像美にニール・ヤングの音楽が被さる詩的な雰囲気ではなくて、あくまでも社会派な描き方で。
とはいえ私が思うに、主人公ラファエルはそもそも最初から虚無に取り憑かれているのだ。自殺願望。で、どうせ死ぬならお金と引き替え、そうすれば家族のためにもなる…という発想じゃないか。家族を救いたい→お金を稼ぎたい→仕事なんてみつからない→じゃあスナッフ・フィルム…という順番じゃなくて、むしろ逆。
映画の中でそこいら辺もいちおう押さえられてはいるけど、さほど強調されてはいない。見ている人にどれだけ伝わっただろうか。むしろ
「ブレイブ」=勇気というタイトルで、彼の選択を、家族愛を貫徹するための勇気ある行動という風に印象づけているし、監督デップさまもある程度そういう発言をなされてますね。
もっとも「彼はすでに死んでいる、ところが死ぬと決めたとき、生き始めるんだ」というような監督発言もありましたが。
私は、「もうどうなってもいいや」的な気分に陥ってしまうところが実は本当のネイティヴ・アメリカンの問題の所在ではなかろうか、という気がした。どん底、赤貧の生活で、どうあがいても浮かび上がれそうもない人生。様々な局面でつきつけられる差別。まともな職につけるあてもないし。
だからってネイティヴ・アメリカンの人々がすべて、ラファエルのような刑務所出たり入ったりの犯罪者人生を歩むかっていったらむろん、そんなことはないわけで、ラファエルという人のどうしょうもないダメダメさ加減があくまでも前提になるんだと思う。ラファエルは日本流にいうなら「チンピラ」、極道者だ。
もし「組」ってもんがそこに存在したなら、彼は「家族の面倒はみるから山森組の組長とってこい!」といわれて、「おーし、とったる!」といって駆けだしていってしまう馬鹿、川谷拓三みたいなもんである。失礼、これでは「仁義なき戦い」になってしまふ。
または「仁義の墓場」における渡哲也、田中邦衛のごとき、真の自暴自棄。救いもなんにもなくてただ破滅めざして突っ走るアナーキーな人生。ラファエルの人生もそれに似ている。死を覚悟するまでの彼は、綺麗な奥さんも二人の可愛い子供も、さして顧みることなく、飲んだくれて暴れたり、悪の仲間と犯罪を犯したりしていたらしいのだ。
ともかくも、もしかしたら突飛な発想かもしれないが、この映画ってなんとなく、日本的なヤクザ映画っぽいノリにしたほうがしっくり来るような気がしてしまった。
だがここで大きな問題が。なんせデップさま、美形過ぎ。あくまでも真っ直ぐで澄んだ眼差しからは、世を拗ねた邪悪な思念や捨て鉢な気分はあまり伝わってこない。なんか善良そう。前段で思いっきりやさぐれた姿を見せておいて、死を覚悟して初めて”良き父”、”良き夫”に目覚めるという対照的な演出があればよかったのに、という気もする。…って、お前は監督かーといわれそうだけど。
とにかくラファエロの役にデップさまは美し過ぎ、かっこ良すぎたんじゃなかろうか。不細工でダメダメで情けなーいチンピラ男のほうがむしろ、こういう役には向いていたのかも。そんなダメで馬鹿な男が浅はかな決断を下してしまう、その無知さ、単細胞さが哀れで悲しい…そして最期へ向かって突っ走ってゆくときの一瞬の輝きを捉える…という感じの展開、いかがでしょう?
ダメ?
そうはいっても最後の日、悪い仲間を襲撃するシーンで炸裂したラファエロの暴虐ぶり。一旦切れるとどうしようもないヤツだというのがよくわかる。口から胸まで血を滴らせたあの姿はこの作品中でもっとも印象的。そして斎戒沐浴の場面の美しさ。やっと辿り着いたネイティブ・アメリカンな自然との神秘的な合一場面。つまりは、そこに至るまでがちょっと長かったかな、という気も。
デップさまファン向けコメント
DVDのおまけには、メイキングが7分弱、撮影風景9分ちょっと収録されてます。この二つは重なっている部分もあるんだけど、違う箇所もあってけっこうオイシイかも。役柄の姿のまま監督もする…ほんとにたいへんそう。でもかっこいいです
(だからファン限定コメントですってば)。肩の下まであるダークな長髪もいいっすね。
インタビューだけの画像もあり。声は上述のメイキングで使われてます。この画像では既に髪を短く刈り込んで
『ノイズ』 スタイルになってましたね。
ラファエロは小さなメモ帳になにか書きつけていて、最後のほうでそれを神父さんに渡すんだけど、あれなんだったんでしょう。その後、メモ帳は登場しないまま、終わってしまった。
前金として 1/3 を受け取ったラファエル。残りはちゃんと支払われるのだろうか、だってその時はもう彼はこの世にいないんだもの…嗚呼、悲しい。ああ心配。
ちょっとしたメモ
スタッフにはクストリッツア組が入ってますね。スロヴァキア・コネクションというか。『アリゾナ・ドリーム』 の体験がかなり強烈だったみたい。作品全体のトーンもクストリッツアの影響が感じられます。とにかく”物”が多いという部分も。手作り遊園地やお祭りのシーンね。でもそこいらへん、ちょっと長い感じがしたし、コテコテな感じ。
『アリゾナ・ドリーム』 で共演したヴィンセント・ギャロも 『バッファロー'66』(1998) で監督デビュー。いやこれ以前に2本撮っているみたいだけど、まったくの自主製作。実質的デビューはこれでしょう。
ギャロさまは小さい町の狭い世界を、登場人物も少なめにこぢんまりと撮ってた。実際はどうか知らないけど、あまり予算もかけてない感じで、どっか手作り感覚を漂わせる邦画みたいなタッチ。でも、なかなかにオタク魂炸裂の佳作という評判。私にはよくわからなかったけど、かなり凝ったカメラとからしい。全編にわって寒々しい空気の感じを漂わせ、見ている者にそれがピリピリ伝わってくるいい映画だった。
片やデップさま、監督と主演の二役はかなり大変だったことを伺わせる発言もあって苦労したみたいですね。ああいうセット、手作り遊園地ですが、ああいうのをいい感じに見せるのは難しそうだし。むしろもっとシンプルというか、殺伐としていてもよかったかもしれない。
パパ役の「レッド・クロウ」氏はネイティヴ・アメリカンの著名なミュージシャンだそうですね。音楽は聞いたことはないけど。
(2002/02/24 DVDにて 2003/02/28up)
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