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  デッさま=Johnny Depp 特集  その9

その他いろいろ篇................アリゾナ・ドリーム/妹の恋人

アリゾナ・ドリーム   Arizona Dream ( USA, France 1993/135min)  ネタバレ気味、注意
監督 :Emir Custrica  エミール・クストリッツア
脚本 :David Atkins
 Emir Custrica
 デヴィッド・アトキンス
 エミール・クストリッツア
製作 :Claudie Ossard  クローディー・オサール他
主題歌 :Iggy Pop  イギー・ポップ

出演
Jonny Depp ジョニー・デップ (Axel Blackmar アクセル・ブラックマー)
Jerry Lewis ジェリー・ルイス (Lew Sweetie レオ・スウィーティー/アクセルのおじ)
Feye Dunaway フェイ・ダナウェイ (Elain Stalker エレイン・ストーカー/グレイスの継母)
Lili Taylor リリ・テイラー (Grace Stalker グレイス・ストーカー/エレインの継娘)
Vincent Gallo ヴィンセント・ギャロ (Paul Leger ポール・レジェール/アクセルのいとこ)

犬、魚、子豚、亀、猫  その他大勢


NYの水産局で働くアクセル(デップさま)は、魚の数を数えるのが仕事のちょっと変わった青年、23歳。エスキモーの夢をよく見る。でっかいカレイのような魚、オヒョウの夢だ。

いとこのポール(ギャロさま)は映画オタク。いつも映画のセリフをブツブツと呟いているようなヤツで、特技はお気に入りの映画のセリフのコピー。

ポールの車に乗って目が覚めたらアリゾナだった。”おじき”の結婚式に出ろ!と連れてこられてしまったのだ。

”おじき”レオ(ジェリー・ルイス)はアクセルの少年時代の憧れで、キャディラックのディーラー。若い東欧系美女と挙式寸前という元気なじいさんで、アクセルに「一緒に車を売ろう!」と迫る。

断り切れないアクセルはレオの店で見習い修業を始める。そこへやってきたのがエレイン(フェイ・ダナウェイ)とグレイス(リリ・テイラー)という義理の母娘。エレイン(40代)は空を飛ぶことに取り憑かれ、グレイスは亀と自殺に取り憑かれている。まったく不思議な母と娘。

エレインとの恋に「落ちるんじゃなくて、飛んでしてしまった」アクセル。なぜ?と問うなかれ、恋に理由はいりません。いい年増になぜ?と思ってしまうそこのあなた、年齢差別はやめましょう。世の中にはいろんな人がいるんですってば。

アクセルは母娘の家に居候してエレインの「飛ぶ夢」をかなえようと飛行機を作ってみたり。いっぽうグレイスもアクセルの気を惹きたくて色々と屈折した仕掛けを繰り出してくる。そうこうしつつもポールの演芸会があったり、レオが月に行ってしまったり、何かと慌ただしく過ぎてゆく日々。

アクセル、エレイン、グレイスの三角関係も煮詰まってついにグレイスは……。


これは好き・嫌いの分かれるタイプかも。私はけっこう好き…いや、かなり好きだなあ。シュールレアリスト・ムーヴィーとかいわれてますけど。

この手のだと絶対いるのよね、わけわらん、意味不明とかいう輩が。じゃあ「わけ」ってなに? 「意味」ってなに?とワタシは問いたい…けれどもこればっかりは、各人の資質もあるのかも、向き、不向き…みたいな。映画に何を求めるかも人によって全然違うし。

そうはいってもこの作品、基本的にはわかりやすいタイプ。

「オヒョウの片目が成長につれて体の反対側へ移動すること」、それが大人になるということ。「それはいいことなの?」と問いかけるアクセルに「失うものもある…片方の自分が見えなくなる」と答えるレオ。簡潔に言い尽くされてます。説明はいらないでしょう。

夢を追い求める「片方の自分」を置き去りにして、人はいつか大人になる。しかし失うものがあれば得るものだってあるはず、と信じたい。夢を夢と知りながら、なおも夢みつづける大人だっている。それがエレインやレオ。二人は不幸なのだろうか。そんなことはないでしょう。

「嵐が去ったあと、僕はもう人生はビューティフルだとはいえない……魚のように感じることはもうできない。でも僕は生きていて幸福だと感じる。」とアクセルは最後のほうでつぶやきます。所詮、人は子供のままではいられないと悟ることは苦いけど、大人になっても夢は見られる、たとえそれが「醒めた夢」だったとしても。だからやっぱり生きていたい…とまぁ、言葉にすればそんなとこだけど、あまり考え込まないほうがいいでしょうね。

この映画独特の世界は、多種多様な物体や生き物、奇妙な夢やらアラスカやアリゾナの風景やらが、緻密な織物のように折り重なりあう画面そのもの。ぎっしり詰まった映像から何かを感じ取らせようというのがクストリッツアの手法で、言葉ですむなら映像はいらない…ってことになりましょうか、結論的には。

エミール・クストリッツァは1954年、サラエヴォ生まれ。ヴェネツィア、カンヌ、ベルリンなど、いくつも賞を獲ってる…と知れば、ああ、そういうタイプ…とちょっと納得。この作品はベルリンで銀熊賞を受賞してます。『ジプシーのとき』とか『アンダーグラウンド』が代表作。


デッさまファン向けコメント

1993年公開作品で、『妹の恋人』と同じくらいの時期だから、若い、かわいい、おとぼけと、三拍子揃ってますねぇ。髪の毛がクシャクシャしてるのもいい感じ。雄鶏になる前の子供っぽい”チキン”を表現するために、うしろの髪を立ててみました、とはご本人の弁。ニワトリの真似をするシーンもあり。

とにかくハッとさせられる美しいショットがたくさん。いやはや、美形でございます。27、28歳にしてはとても若く見え、少年っぽさも残っていて…。浮き世離れしたアクセルにうってつけの風貌でしょう。

お得意の口をポカンとあけたトボケ顔もみられるし、すごくいい笑顔もあれば、緊張度の高い場面では精悍な男っぽい表情になったりして…って顔みてるだけか、お前は!といわれそう。

ギャロさまもいいな、いいコンビですね、この二人。ギャロさまにはほんとに笑わせてもらいました。映画マニアっぷりがすごい。実際もそういう人らしい、要するに映画オタク。”映画コピー”という芸を初めてみました、この映画で。『北北西に進路を取れ』、『ゴッドファーザー』、『レイジング・ブル』…ほんとに面白かった。


ファッション・チェック

フェイ・ダナウェイって1941年生まれなんだ。うわー! びっくり。撮影が1992年として、50歳くらいですよ、既に。40代という設定ですが。けど素敵だわ。昔から好きな女優だったけど、天晴れというしかありません。私もヒラヒラ、フリフリした白いレース使いのスカートはいてみたいもんです(アホー)。

裾が段々になっていてレースも入っている白いスカート、いわゆる”ピンクハウス”系っぽい感じですが、素敵です。ただ木綿でもゴワッとしてなくてちょっと薄手。何枚か重ねてヴォリューム感をだしているのかも。ペチコートとか。白に合わせるのに薄いグレーのジャケット、黒のジャケットとインナーなどすぐに真似できる!

ただラインがちょっと太めなのは流行遅れですよね。厚い肩パッドの入ったジャケットなども。今どきならばトップはもっとタイトで丈も短めにしたいところ。


ちょっとしたメモ

フランスでは2002年に2枚組のスペシャルDVDが出ている模様。そこには、「もう一つのエンディング」やプロデューサーの一人、クローディー・オサールとデップさまとの対談(2002年)も収録されている。欲しいな、フランス盤DVD…。

もう一つのエンディングとは、アクセルが亡くなった叔父の婚約者ミリーと結婚式を挙げる、というもの。

デップ v.s. オサール対談はネット上で発見(とある海外のファンサイト)。画像もあって、シンプルな白の綿シャツとジーンズというとてもナチュラルなデップさまの姿が素敵。

対談の内容もなかなか面白かった。二人でDVDを見ながら、シーンごとに思い出話などをしている。かいつまんで訳してしまおうっと。鎖国言語、日本語のメリットかも。読みたい人はこちらへ

特筆したいのは動物の皆さま。とりわけ犬好きの方にはお薦めの一本。主人を救うエスキモーのリーダー犬(?)の賢そうなこと、泣けるほど。それと、エレイン、グレイスの家にいるワンちゃん。これがまたすごくかわいい。アクセルが飛行機を作っているときなど、ずっと横にいたりする。

もう店終いしてしまったレオのショールームに入っていって眠ってしまうアクセル。その横になぜか猫が。これって『デッドマン』で仔鹿に寄り添うシーンを思い出させるんだけどやはり”引用”ってことになるのだろうか。

(2002/2/14 DVDにて 2003/02/23up)


     

 妹の恋人   Benny & Joon (USA 1993/98min)     ネタバレ気味、注意!

監督 Jeremiah S. Chechik ジェレマイア・S・チェチック
出演 Johnny Depp ジョニー・デップ Sam サム
Mary Stuart Masterson メアリー・スチュワート・マスターソン Joon ジューン
Aidan Quinn エイダン・クィン Benny ベニー
Julianne Moore ジュリアン・ムーア Ruthie ルーシー
Oliver Platt オリヴァー・プラット Eric エリック
CCH Pounder CCH. パウンダー Dr. Garvey ガーヴィー先生
Dan Hedaya ダン・ヘダヤ Thomas トーマス
William H. Macy ウィリアム・H・メイシー Randy Burch ランディ・バーチ



たあいない恋愛ファンタジーと思ったらこれがなかなかによい。この手の映画を英語ではデート・ムーヴィーとやらいうらしい。けど、ほーんと、内田樹センセイじゃないけれど「ほのぼのしちゃったよ」(「おとぼけ映画批評」より)。

現実離れした、おとぎ話的な恋物語ではあるけれど、同じ頃の作品、上記の『アリゾナ…』よりかも”一般人な方々”(なんだそれは)には、はるかにわかりやすい作品でしょう。

『小さな恋のメロディー』の昔から、いやもっとずっと昔から、夢のように可愛い、もしくは美しい恋物語に酔いたいのは人の常。「けっ、そんなん、現実にあるわけないじゃん」とわかっちゃいても、そんなツボを押されるのは気持ちいいですよね。

キートン狂いで字が書けないすごく変わった青年サムがデップ。かわいいったらありません。しかも大道芸人みたいなことしちゃって、すごく芸達者。

エプロンしてアイロンでチーズトーストを焼くシーン(温度はレーヨン)や、テニスのラケットでマッシュポテトを作るシーン(音楽とバッチリ、シンクロしているとこがいい)が大好き。大爆笑。あと、木の上にちんまりと隠れたところ("your tree""not my tree"でクスッと笑えるんだけど、字幕で無視されてる)とか。

ベニーとジューン、兄妹は二人暮らし。そこにひょんなことから転がり込んでくるサム。ジューンは精神に障害があって面倒見ている兄はたいへん…という設定は『ギルバート・グレイプ』でのギル君とアーニーの関係に似ている。

家族という閉じた輪に外部からの侵入者があることで、それぞれの関係が変わるというのも『ギル・グレ』に似ている。家族だけでは決して見えなかったものが見えてきて、ベニーにはルーシーという恋人ができるし、ジューンとサムはたどたどしいながらも二人で自立して新しい生活に入っていくってな具合。

けどこの映画が佳作なのは、輝くように若く美しく、しかもすっとぼけたサム=デップさまと、少女っぽくて”女”としての皮膚温が低そうなジューン=メアリー・スチュワート・マスターソンの持ち味がいい具合に噛み合っているからでしょう。

背景になる町も緑が多くていい感じだし、プロクレイマーズというバンドが歌ういかにも青春な主題歌もいいし(DVDにはヴィデオ・クリップ収録)。

監督はキートンとチャップリンとタチに捧げるといっている。なるほどね。タチの映画みよーっと。


デッさまファン向けコメント

服装からしてキートン+チャップリン÷2みたいなデップさま。色調は常に白黒グレーのモノトーン。あとはインディゴ・ブルー。サスペンダーつきのパンツに白いシャツとか、タキシード風とか。そしてステッキと帽子。ほんとによく似合ってた。

ワタシの観察では、この時の衣装や小道具は、ちょっと見よりもずっとよく考えられているものだと思います。無声映画時代を意識したクラシカルな雰囲気が基調で裾にボタンがズラッと並んでいる細身のストライプのパンツや、太めの黒っぽいやつなど、どれもハイウエスト気味でサスペンダー使用。

白のシャツは地紋や細かい模様が入っていたりなどけっこう凝っていて、袖丈が長い。カフのところなどよくデザインされていて素敵。欲しい(観察細かすぎ)。

あとモノトーンにアクセントをつけるのがタイやベスト。黒地に白の水玉とか。ベストは白のシャツと微妙なコントラストを見せるミルク色などで、これも織り地の感じがクラシカルでいいです。地味なチェックや縞もあり。どれも古着を思わせるつくりになっている。

ダークな色の長髪がこれまたいい。プレミアの時のスナップ写真なんか見ても、惚れ惚れしますなー、きれいで。誰にとっても、人生のほんの一時期だけにしかない綺麗さ。人はどんどん変わっていくから、こんな姿をスクリーンに止めてくれてありがとう、といっておきましょう。

サムはキートンやチャップリンが好きなだけじゃなくて、そうとうな映画オタク。女優だったことがあるルーシーがおそらくたった一本だけ主演したと思われるB級…どころか、C、D級かも知れないホラーまで見ていて、セリフも全部いえたりする。これって『アリゾナ』のポールじゃありませんか、まるで。だから貸しヴィデオ屋で働き始めるサムは映画のことはなんでも知ってる。こういう設定が好きなんでしょうかね、アメリカの映画人たちは。


ちょっとしたメモ

『妹の恋人』ってダサ系タイトル賞にエントリーできそう。原題の Benny & Joon はスッキリしていて洒落てるが、そのままじゃあちょっとね、というのもわかるけど。しかし最近ではそのまま片仮名にした何の芸もないタイトルが氾濫しているのに、こういう時に限って…。

デート・ムーヴィーと馬鹿にするなかれ。なかなか丁寧に作られてます。映像もきれい。音楽もいい。ベニーとジューンの住む家もいい感じだし。

(2002/12/16 日乗にup DVDで 2003/02/23 改訂up)

       

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