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  シネマの部屋


                                  大幅ではないがネタバレ気味、注意!
マイノリティ・リポート   Minority Report (USA 2002/146min)

監督:Steven Spielberg スティーヴン・スピルバーグ
原作:Philip K. Dick フィリップ・K・ディック
脚本:Scott Franck, Jon Cohen

出演:
Tom Cruise トム・クルーズ・・・・・・・・・・・John Anderton ジョン・アンダートン=犯罪予防局捜査チーフ
Max von Sydow マックス・フォン・シドー・Director Lamar Burgess 犯罪予防局局長バージェス
Collin Farrell コリン・ファレル・・・・・・・・・Detective Danny Witwer 司法省からやってきた男ウィットワー
Samantha Morton サマンサ・モートン・・・Agatha プレコグの一人、アガサ
Peter Stormare ピーター・ストーメア・・・・Dr. Solomon Eddie 眼球を移植する医者


1956年に発表されたディックの原作はわずか70頁足らず (ハヤカワ文庫)。

映画はそのエッセンスのごとき部分を大幅に拡大したものといったらいいでしょう。
よくもまぁ、ここまで膨らませたなとビックリ。

◎三人の”プレコグ”、すなわち予知能力者の存在。
◎犯罪予防局が、プレコグの予言を受けて犯罪を未然に防止する。

この二つの要素までは原作と同じ。こっから先はすべて映画のオリジナルな発想といっても過言ではありません。

主人公ジョン・アンダートン (トム・クルーズ) は犯罪予防局 (プレクライム) の捜査チーフ。プレコグによる犯罪抑止は映画では殺人事件に特化されており、アンダートンはその威力に絶対の信頼を置いている。

プレコグの予知が、玉突きのボールみたいな木のボールに刻印されて出てくるっていうのはちょっと笑えた。

また、プレコグは夢をみるような格好で犯行の現場を見ている。その脳内映像をモニターして、外部で分析可能なものとして描いているところが秀逸。もっともそうでもしないと、映画としては成立しませんが。

プレコグの脳内予知映像をでかいディスプレーに映し出して、犯行現場を特定するわけです。両手にセンサーがついた手袋のようなもんをつけて、体操でもしているみたいに、次々と予知映像を映し出すシーンはおもろい。

未来型コンピュータってこんな風になってゆくのだろうか…、人間の脳内のイメージを取り出すことができるようになるんだろうか…。興味はつきません。

映画の冒頭部、アンダートンと彼のチームがプレコグの予知を必死に分析し、間一髪で殺人事件を止めるシーンがある。辣腕なアンダートン・チームの颯爽たる活躍を紹介する場面であって、スピーディーな展開にほれぼれさせられる。

しかし逮捕される瞬間、犯人が叫ぶ、「なにもしてない!」 と。そりゃそうだ、彼は自分の浮気妻にハサミで襲いかかりはしたが、ブスリといく瞬間にアンダートンに羽交い締めされてるんだから。

ここで見ている者は、このシステムが何かしら矛盾を孕んでいるのではないか、と気づくだろう。いくらプレコグが予言したからといって、犯人はまだ犯人じゃないのに逮捕され収容所送りになるのは何か変じゃないかという思いを。

ここで果たしてプレコグが予知した未来は変更可能か、という疑問も提示され、後半の重要なファクターになってゆくわけです。

おりしも、犯罪予防局には司法省の役人、ダニー・ウイットワー (コリン・ファレル) が送り込まれている。どうやら司法省サイドはプレコグ・システムに疑いの目を向けているらしい。官僚組織内での対立、権力争い。

これは米国ミステリーによく出てくる、地元警察と FBI の対立や、FBI と CIA の非協力関係なんかと似ている感じ。一種の定番。

ウイットワーは若くてやり手で、ガムをくちゃくちゃやっていてやなヤツ。とりあえず、こいつがアンダートンのカタキ役。なんとかあら探ししてアンダートンを引きずり降ろそうと画策しているっぽい。

そこへもってきて重大事勃発。なんとアンダートン自身が数日後に殺人を犯すというご託宣が下ったからさぁ大変。「これは何かの陰謀」 と逃げつつ事態を解明しようとするアンダートン。

自らの部下に加え、ウィットワーにも追われる身となった彼は四苦八苦して事の真相に迫るのだが、そこには意外な黒幕が…。というわけで、チェイス・シーンは息もつかせぬ緊迫感で楽しめます。

ここまではメインの流れだけど、サイドにアンダートン自身の不幸な過去が描かれます。

彼は6年前に息子を誘拐され、それが原因で離婚。その悲しみからまったくぜんぜん、立ち直れないでいる人間だったのだ。それゆえ薬物を常用、家では楽しかった頃の映像を見て気を紛らわすという情けなさ。

犯罪予防局の仕事に没頭しているのも、自分のような不幸な事件が起こって欲しくないという正義感とともに、むなしい生活からの逃避という意味あいもある。

これもまた米国ミステリの定番っぽいんですよね。家庭的な不幸をひきづっている男が凄腕刑事だったり、ニヒルな探偵だったりするパターンが。で、フトした折りに、元妻やら愛児の写真をそっと眺めて悲しみに浸る、みたいなのが。

で、アンダートンは、自分が殺人を犯すはずがない、と、プレコグの一人アガサを拉致、その予言映像を分析するうちにとある欺瞞に気が付くわけです。

プレコグの予言は果たして絶対無謬なのか、なんらかの操作が可能なのではないか…自分が信じてきたシステムそのものへの挑戦。

アンダートン自身の殺人映像と、プレコグ=アガサが繰り返し見せる意味不明な映像が二本立てて出てくるのでわかりにくい、という意見がありますが、我慢して見ていりゃ、最後にすっきり解決されるので問題なし。

話が進むにつれて、ある”謎の黒幕”が過去の自らの犯罪を隠蔽し、地位保全、権力の維持拡大のため政治的陰謀をめぐらす、というのが基本ラインだったのだとわかってきます。

結末はハリウッド的予定調和といわれるでしょうけど、カルトなファンだけで満足するならともかく、娯楽としても成功させねばならないスピルバーグとしてはまぁ、当然の選択ではなかったかと思われます。


変なこだわりメモ

とにかく、いろんな要素が詰まっていて、未来都市造形好きの私としては二度見てもまだ見たいっていうくらい、面白かった。ストーリー以前の部分で。

あえて私流にいえば、これは 「ブレードランナー・エピソード2」 に他ならない。
何を隠そう 「ブレードランナー」(1982) はマイ・カルト・ムーヴィーの一つなんだもの。

むろん 「ブレラン」 を超えたとか言うつもりはない。というか当然ながら超えてなくて、「ブレラン」 なくして 「マイノリティ」 なし、でしょうね。

今から50年後のワシントン D.C.、高度に機械化された高層ビル群とスラムの対照、あちこちに溢れる電子広告…。ワカモトはなかった(笑)。

広告や新聞や雑誌、みな映像が動くのね、この映画では。薄気味悪いです、ちょっと。新聞の写真がじわーんと動いていたりすると。

プレコグ=アガサはまさにレプリカント的な存在。「ブレラン」 の秀逸なメイクや衣装と違って、こちらではきわめてシンプル仕様でしたが。が、しかし、未来には、人間とよく似ているけれど、普通の人間とは違う存在が現れるという想定にはとても惹かれる。

室内に目を転じれば、アンダートンのマンションはまるでデッカードの部屋と二重写しになってしまう。過去のメモワールたる写真 (映像) へのこだわりなども。

眼球屋 (ピーター・ストーメア) のシーンだって、ちゃんと 「ブレードランナー」 に下敷きがあるじゃないの。しかも、あの部屋の汚れたたたずまい、ヘンテコな助手の女やら器具類もいい。九龍風水伝 (ゲームですが) の美脚屋やらも思い出す。ツボにはまりまくり。

ピーター・ストーメアは怪演だったな、鼻水たらした不気味な男。『ショコラ』 ではちょっと可愛そうな扱いでしたけど、こちらではほんまにいい味だしてます。

コンピュータの未来形というのもたまりません。映像メモリーは透明の5cm角くらいの板になっている。それをスライドを映すみたいに装置に差し込むと壁スクリーンに拡大されて投影される。ホログラムになって立体的にもみることができる。すごいな、すごいな〜(笑)。

アガサの脳内映像の分析で、見過ごしがちな細部を 「ここ、ここ!」 とかいって拡大してゆくシーンがある。「ブレラン」 で、デッカードがどこぞのホテルの部屋の鏡に写った細部を角度を変えたり拡大したりして事態解決の鍵を掴むシーンを思い出す。

「ブレラン」 のLDを手に入れた時、このシーンが気に入って、そこだけコマ送りで何度も見た。斜めにゆがんで写っている映像を、角度を変えてちゃんと見えるようにする…すごいじゃないかっ! コンピュータに将来そんなことができるようになるなんてっ!と興奮した。

実際、10数年たったらできるようになってるし。映画のほうが先取りなのね。しかもものすごいかっこいいイメージで。

あと交通手段もいいっすね。都市を縦横に走るあれは 「マグ=レブ交通システム」 というんですって。オフィシャル・サイトに書いてあった。リニア・モーター・カーと同じだそうで、垂直も水平も自由自在。うまくアクション・シーンに利用してました。

それと巨大な巻き貝、アンモナイトみたいにも見えるやつは、プレクライム・ホバークラフトというんだそうな。犯罪防止局の人が現場に急行する時に使う。あれも面白い。

人間が背負って飛び回れるアレ、あれはなんというんだろう。絶対エンストしないという保証があるなら体験してみたいなー。高所恐怖症の人には無理だろうし、私も高いところ恐いんだけど、でも生身で飛びたいという願望は絶対誰にでもあるに違いない。


ちょっとした小ネタ

トヨタ・レクサスという車が登場しますね。あれって後ろ向きに走っているように見えて仕方がないんですけど、デザイン的に。

そのレクサスの組み立て工場があって、そこでウイットワーと追いかけっこしたあと、組み立て済みのレクサスの中に現れるアンダートン。なぜか「ミッション・インポッシブル」のテーマ、すなわちスパイ大作戦のテーマが脳裏に流れたのは私ばかりではないでしょう。

目の光彩をアイデンティティー・パスにするっていうのは既に実用化されている? あるいは実用化寸前なのかもしれない。その認識機械が町中のいたるところにあるっていうのは不気味。悪いことできない完璧な管理社会ってことなのか。

捜索活動に使われる 「スパイダー」 っていったっけ? 直径10cmくらいの銀の円盤に細長い足がついてるあれ。ロボットの一種なんでしょう、自分でたったか歩いていって、人々の目をスキャンして特定するやつ。

まるで自分の意志をもっているみたい。なんだか可愛い感じまでする。マスコット・グッズとして売ってたりすると面白いのに。

笑えたのは、GAP (今現在も人気の服屋) にアンダートンが入っていった時。光彩認識で 「ヤカモトさま、いらっしゃいませ〜。先日のタンクトップはいかがでしたか?」 とかなんとかアナウンスされる。ヤカモトさまって…やっぱし 「ワカモト」 を意識してるのか? まさかね。

映画を見終わって通りがかったとある洋服店のガラスの壁に映画の中の電子広告みたいな映像が映っていた、しかも動画。それも2面も。これ、現実の話。80x100cmくらいで、それほど大きなものじゃなかったけど、ドンドン、こんな風になっていくのかな。

(2003/01/25 映画館にて  DVD早く出ないかな〜 2003/01/26up)

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