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<<各国蔵書票協会で発刊された資料>>

 
<イタリア>

"L'EX LIBRIS ITALIANO"

イタリア書票協会の機関誌(2001年9−12号)
同誌は年に4回発行され、日本書票協会にも
定期的にとどいています。
今回は、特に日本の蔵書票に関し、次のとおり
2編の論文が掲載されていますで、その概要を
ご紹介しましょう。

 ENZO PELLAI  "Un ramo di ciliegio in fiore"
(エンツォ・ペラーイ:協会誌編集委員)
「満開の桜の枝」

CLIF PARFIT  "L'ex libris in Giappone"
(クリフ・パーフィット:日本書票協会会員)
「日本における蔵書票」

 
上記2論文について、日本書票協会会員である田翠氏が日本語に訳されましたので、それを
もとにして、その概要を下記のとおりご紹介します。
この2つの論文の抄訳は、それぞれ『日本書票協会通信』の2002年7月号と10月号に掲載
される予定です。日本の蔵書票に関する外国人の評価が分かり参考になります。

 

「満開の桜の枝」
ENZO PELLAI  "Un ramo di ciliegio in fiore"
(エンツォ・ペラーイ:協会誌編集委員)

●西洋の人間にとって、日本の蔵書票は、枠に
はまったおとなしさ、木版画技法に結びつく主題
の繰り返し、デザインの単純さから、パット目を
引くものではないように見える。
●西洋では、精神の優位というプラトンのイデア
の宇宙に属し、精神的な高みを追い求め、情熱
にも悲劇にもこれを必要としている。
●したがって西洋の蔵書票も、美術史の中で目立たないが、その影響をうけてイデアの美という
喜びを反映している。「芸術をつかさどるミューズ
神たちではなく、創造力のひらめきというプラトン
のミューズ(美)を迎え入れる(J.Martain)」ために
非常に高い料金を払っている。

●東洋の宇宙観の中では、自然と精神の旅人の
間は調和していて、すべてがマンダラの不思議な
円の中に広がっている。
●それで日本の絵は、光と影のコントラストより、
澄んだ色、明るく輝く色調で表現される。
●ブッダや女性の顔、花、風景など、形あるもの
を愛でる。日本人は四季の移ろいの中で人生の流れを捉える「物事の感受性(もののあわれ)」
を持っている。
●全てが静けさを語っている。「雪月花」は生れ、
死に、再び生れるという表現のために用いられる
シンボルである。
●西洋の観念的な思考は、自然を「物質」とか、
「創造され安定した世界」と受取る。日本では、
自然を「創造するもの」、「変化するもの」ととる
のである。
●しかし、西洋でも他の文化を受入れる動きは
あった。初期印象派の中には、日本の初期の
木版浮世絵に理解を示したものもいたが、反面
それにより犠牲にしたものもあった。
●19世紀の後半、西洋と東洋の文化の交流に
より、日本における蔵書表示(文字の捺印で
マークをする)にも、20世紀初頭には木版画で
作られた装飾模様のヨーロッパ風な様式が加
わった。
●ただし、これらの図柄は決して徳とか知的な
独創性や、票主の社会的地位を表現するもの
ではなかった。
●日本美術では、創作よりも制作の意図の方
が常に勝り、蔵書票も多くの場合には、主題や
伝統的な様式にヒントを得た映像芸術だった。


 


 

●西洋人が、日本の蔵書票の芸術性をすぐに
理解できないのは、まさにこのような美的感覚
と意味についての根本的な相違による。西洋
人は、創作上での構成の単純さ、色彩の類似
性、遠近法の不在などを前にして途方にくれる。
●西洋人は、知識人ぶった気取りや無意識に
行う分析を習慣としている。この二つの要素が
感覚を感知することを忘れさせる。モネは自然
の官能にどっぷり浸ってしまい、同時代のパリ
ジャンたちに軽蔑されたのである。
●1980年に、初めて自分のコレクションに
日本の蔵書票が入った。満開の桜の枝だった。
それは取り立てて重要なものではなかったし、
自分の美の信仰を覆すものでもなかった。

 
●いまでも自分のこの考えは変わらず、それ
には納得していない。というのは、日本の蔵書
票は、西洋のものと同じくらい(あるいはもっと)
平凡だからである。
●けれども、今はこの蔵書票が当時の自分の
精神尺度で考えていたより、もっと違ったもの
を自分に語りかけているのが分かった。
●それは、自然に結びついたテーマ、簡潔で
流動的なデザイン、色彩の豊富さ、偉大な職人芸という日本芸術にいつもある要素を、さらに
多く使っていること知っている。これらの要素が
うまく調和している時は、作品は満開の桜の
枝だけで高い質を得るのである。
●美の探究には対象とその表現に多様性が
あることを知り有意義であった。
 

 

「日本における蔵書票」
CLIF PARFIT  "L'ex libris in Giappone"
(クリフ・パーフィット:日本書票協会会員)

●日本は島国であり、多くのものの見方が閉鎖的で、その結果、蔵書票のテーマも日本独特の
ものになっている。
●例として、多くの蔵書票の絵柄に民芸玩具が
扱われているが、日本を知らない者にとっては
不可解なことである。
●票主を象徴して使われるものに、東洋の干支
がある。
●日本人の季節概念は、西洋人よりも親しく、
花、着物、蔵書票などの模様は、選んだ花で
季節を示すことができる。
●宗教的な題材もあるが、寺や神社、仏塔や
他の宗教的な建造物、神様の一人や民間信仰の対象人物などが、そのテーマとなる。

●風景が、あまり一般的ではないのは、日本の
どこにいても丘や山々を眺めることができるから
であり、また紙を使うため雪をテーマにしたもの
は制作が難しい。それでも、近頃、風景や雪を
テーマにする作家がいる。
●南北に長い日本の地理的特徴からすれば、
花のテーマは大変多様なものになる。
●浮世絵のように工程を分業する版画と違い、
前世紀の初頭に日本の芸術家がヨーロッパで
習った版画は全ての作業が自分の手仕事で
あり、そこから多色刷り木版画という新しい
タイプの創作版画が誕生した。
●蔵書票の値段は、版画の年代、芸術家の
名前や能力、版画の状態、希少性などによると
推定できる。最も高いものは、すでに亡くなった
過去の有名版画家のものであり、最も経済的
なものは、趣味でやっている人の作品である。

●このように本来の職業は持っていて、同時に
素晴らしい作品を制作するのは、日本では当り
まえのことであり、また彼らが蔵書票コンクール
で賞を勝ち取っている。
●一般的に言えば、良質の日本蔵書票収集は
お金を使うことに気を配らなければならない人
の趣味ではない。

●この文にはイタリア人の知らない言葉が多く
あっても、好意的な友人たちが、この内容を受
け入れてくれるものと期待する。
○そして、この2ページにある蔵書票のテーマ
である「瞽女」、「鳳凰堂」、「下駄を宙に投げて
明日を占う子供」、「紫式部」などについての
親切な解説が続く。

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