リッチで上品な街の或る朝の出来事

五月の明るい陽光、この街は上品な人々が住む街である。

私は朝の一刻(ひととき)、ハンバーガー・ショップのマクドナルドでコ-ヒを飲みながら大きな一枚ガラス越しに街行く人々を眺めていた。一人の、野球帽を被った元気そうな高齢者(多分70歳位であろうか、A氏と仮に呼ぼう)が子犬を連れて通行した。A氏はどう言う訳か、二回もわが前を通行した。多分、この店を周回する散歩コースでもあるのであろうか。

そして遂に、彼はこのマクドナルドの店に入って来た。行列に並んで朝食メニュを注文した。彼は朝食セット(ハンバーガー1個、ハッシュド・ポテトと暖かいコーヒー)を持って店外に設置されているテーブルに座った。すると、何処からともなく先ほど連れていた子犬が彼の足元に走り寄って来た。その時、A氏の手が忙しく動いた。何事ならんやと思いきや、彼はハンバーガーを包み紙ごとチャグチャに握り潰し子犬に与えたのである。ハンバーガーは子犬の朝食で、ホット・コーヒーはA氏自らが飲んでいた。

私が数分前に食したハンバーガーは子犬が食べているそれと同じものだったが、だからと言って子犬に罪があるわけではなかろう。