老子は「先ず、一歩引く」べしと言う。
老子を始め菜根譚などもそうだが、先ず「相手に譲り、自分の立場を自由にして最後は勝つ」と言う戦略性を秘めた「引き」である。「先ず引いた方が何かとその後は有利に展開する」と言う読みがある。先ず引くと相手は出てくるから、その分情報を多く取る事ことが出来るのだ。今度の中国における北朝鮮亡命事件にしても、中国が態度表明をしたのは日本の出方を十分に見てからであった。
台湾に行って見た蒋介石は椅子に座り、左手に杖を持って穏やかな顔をしている。長い顎髭を生やした細面の、静かで知的なおじさんである。
ところが、英国ロンドンのトラファルガー広場に銅像として立つ西欧の指導者は、いかにも「自分は強いんだゾー」と、馬に乗り、槍を振りかざして居丈高だ。
西欧文明は自己を明確に主張することが原点となっている。会議においても、沈黙していると無能だと見做される。東洋では自己主張は重きを置かれない。むしろ自己主張を無くすることを通して人間修行をするのが理想とされる。
東と西はリーダーシップの在り方が違う。老子の学問は、才能を隠し、無名であることを旨とした。