夏目漱石が東大の学生だった時に教えを受けたドイツ出身のケーベル先生は、「この世で最も大切なものは、人と人を結びつける愛と情けだけ」と言う考え方だった。そして、夏目漱石も感化を受けて同じ価値観を共有したようだ。
即ち、金や地位や名誉や個人の能力などは人生にとってどうでも良いことだった。
ケーベル先生が二十数年勤めた東大を離任すべく日本を離れるに際し、夏目漱石に次のメッセージを教え子たちに伝えて欲しいと言った。それは、「さようなら御機嫌よう」だった。
しかし先生は突如、勃発した第一次世界大戦の為、ドイツへの帰国を果たせずに横浜で亡くなった。