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2004年12月
31日
なんと、シロイヌナズナの野生型は、夜に花から揮発性のモノテルペンやセスキテルペンを放出しているそうだ。1年前に、Aharoni & al (2003)が、報告していた。例によって、Scholar.googleで、三宅くんとの共著論文からたどって、見つけた。この論文は、Plant Cell Previewのページから、まだ全文を見ることができた。
この論文を読むと、花の芳香成分の遺伝的背景に関する研究の最前線がだいたいわかる。シロイヌナズナは多くのテルペン類を作るが、これらはほとんど花から放出される。シロイヌナズナのゲノムには40個のテルペノイド合成酵素(TPS)の遺伝子ホモログがある。植物のTPS遺伝子の系統関係を描くと、6つのサブファミリーに分かれるが、シロイヌナズナのTPSはこのうち5つに属す。シロイヌナズナは、CHSなど虫媒受粉に必要な遺伝子を失っているが、なぜか芳香成分をつくる遺伝子は、ほとんど失っていないようだ。
いったいなぜシロイヌナズナは多くのTPSを持ち、多様なテルペン類を花から放出するのだろか。しかも、夜に限って。
Aharoniらによれば、オランダイチゴから単離したリナロール・ネロリドール合成酵素の遺伝子FaNES1をシロイヌナズナに導入したところ、リナロールが夜に花から放出された。興味深いことに、アブラムシは、この組み換え体を避け、野性型を好んだ。しかし、有意な結果が出るまでに20時間かかっている。そんなに強い忌避効果ではないと思う。遺伝子の解析に比べ、機能の解析は弱い。しかし、分子生物学者がこういう実験をするような時代になった。これからの発展が楽しみである。
Aharoni & al (2003)からたどって、花の匂いに関する最近の論文をいくつか読んだ。夜咲きで蛾媒花のClarkia breweriと、昼咲きの近縁種C. concinnaを比較したRaguso & Pichersky (1999)によれば、C. breweriは、C. concinnaの約1000倍のリナリールを放出するが、この性質はリナリール合成酵素の花での発現量の増加と、花全体のサイズの増大によって、新たに獲得されたものである。この論文は、種生物学会発行の Plant Species Biologyに出ていた。PSBは、まだ Web of Science に登録されていないが、Scholar.googleのおかげで、検索にヒットするようになったのは喜ばしいことだ。
Clarkia breweri の リナロール合成酵素の cDNA をペチュニアに導入する実験を行ったLuecker & al (2001)<によれば、リナロール合成酵素は植物体全体で発現されたものの、内生的なグルコシル転移酵素の作用で、非揮発性の成分にすみやかに転換されるため、リナロールの放出は起きなかった。リナロール放出の進化は、1ステップでは無理なようだ。
まだ緒についたばかりとはいえ、一連のテルペン合成酵素遺伝子ファミリーが、花の芳香の進化の鍵を握る存在であることは、はっきりした。キスゲ・プロジェクトでも、TPSの花での発現を調べることを考える必要がある。
ところで、「花」「リナロール」「テルペン」で検索すると、アロマテラピー関連のサイトが大量にヒットした。「送粉」を加えると、ヒット件数0。花は、アロマオイル用に香りを出しているのではないゾ。少しは花の立場も考えてほしいものだ。せっかく検索したので、多少は情報的価値がありそうなサイトをメモしておこう。
あと1時間弱で新年である。ウェブサイトのカウントは、15775。年末でも1日に100回をこえる訪問が続いている。ありがたいことだ。紅白は、すっかり演歌モードに入った。JUPITERは聞いたし、さぁ、風呂に入って寝よう。
30日
奄美に住み込んで、マングース−クマネズミ−ハブの三者関係を調査している前園泰徳くんから、自家製のカレンダー"AMAMI, The Wonder Island"が届いた。しかも、<Birds><Amphibians & Reptiles><Insects><general collection>の一挙4冊! いずれも、すばらしい出来ばえである。ネット販売すれば、かなり売れると思う。前園くんは、プロ級の生物写真家で、自分のフォトコレクションをもとに、「日本のいきもの図鑑都会編」・「郊外編」・「千葉いきもの図鑑」という3冊の図鑑を出版している。これらの図鑑は、写真が小さくて、物足りなかったが、今回のカレンダーは、写真が大きくて、どれも迫力満点である。
<Birds>編では、クモをくわえたリュウキュウアカショウビンの写真(5月)が良い。もちろん、アマミヤマシギ(2月)・オオトラツグミ(11月)・オーストンオオアカゲラ(12月)の絶滅危惧種トリオの写真も、バッチリ撮れている。
<Amphibians & Reptiles>編は、ハブがクマネズミを飲み込もうとする決定的瞬間をとらえた1月の写真から始まる。オットンガエル(5月)の表情はなかなかりりしい。ハロウェルアマガエル(10月)の可愛い顔は、正面からアップでとらえられている。私はどちらかといえばヘビは苦手な方だが、水中から顔だけ出したガラスヒバァ(7月)の写真は、眼光から水中の様子まで、見事に表現されていて、すばらしい。アオウミガメ(6月)の写真も、動きがうまく表現されていて、素敵である。
<Insects>編では、リュウキュウアサギマダラの集団越冬風景(2月)が圧巻だ。アカボシゴマダラ(8月)・マルダイコクコガネ(11月)など、絶滅危惧種のクローズアップ写真がずらりと並んでいる。初めて見るものばかりだ。個人的希望としては、奄美ならではのハナアブ類の写真が1枚ほしかった。
<general collection>は、アマミノクロウサギ(1月)に始まり、樹上のケナガネズミ(12月)で終わる。土盛海岸の透き通った海(4月)と、台風で荒れ狂う海(9月)の対比が印象的だ。
29日
「九州大学生物多様性研究コンソーシアム」のページをようやく開設した。リセウム悠遠の実験室に、安定同位体比測定用の機器と、加速器質量分析用試料作成のための真空ラインが入り、共通実験室も新年にはようやく稼動しそうだ。これで、1月6日の会議で、歯切れの良い説明ができそうだ。ふう〜。
28日
カウンターが表示されなくなってしまった。human5.comにつないでみたら、つながらない。年末年始はお休み、なんてことがあるだろうか。サーバーメンテナンスのためか? それとも、HUMAN〜無料レンタルは、倒産したか? 誰か知ってたら、教えて。・・・5時半に復旧しました。サーバーがダウンしたのでしょう。
今津干潟に隣接する水田跡地に計画されている、西南大学グラウンドの環境影響評価準備書縦覧が、12月24日に開始された。来年2月2日まで元岡公民館と西南大学で閲覧できる。意見提出は、2月16日まで。「準備書のあらまし」をウェブ上で見ることができる。このグラウンド計画は、九大移転の波及効果の一つと言えるだろう。昨年、西南大学学長にお目にかかって、生物に配慮した事業計画を検討していただけるよう、お願いした経緯がある。時間を作って、準備書を読んで、少しでも良い方向に向かうように意見を言おう。
27日
P&P「生物多様性研究拠点形成」の公式サイト「生物多様性研究コンソーシアムのページ」を、生命科学研究拠点ワーキンググループが開催される1月6日までに整備する予定である。このサイト準備の一環として生物多様性関連サイトリンク集のドラフトを作った。「生物多様性研究コンソーシアムのページ」ができたら、そちらに移す予定である。
故井上民二さんが立ち上げに努力されたDIWPA/IBOYは、アジア・太平洋地域の生物多様性研究に大きな足跡を残してきた。しかし、植物レッドデータブック → 九大新キャンパス生物多様性保全事業 → 屋久島プロジェクト、と一貫して保全研究に関わってきた私は、DIWPA/IBOYの研究の流れにどうしても違和感を感じてしまう。「臨床研究」の発展なくして、基礎研究の発展はないと思うのだ(もちろん、逆もまた真である)。私が考えているBIOCOREは、IBOYの観測ステーションと似ているが、「保全」を強く意識している。具体的には、個々の種の絶滅リスク評価ができるように、定点観測手法を工夫している。この思想は、IBOYの共通観測マニュアルにはないように思う。
2月11日には、九大生物多様性研究コンソーシアムの第1回シンポジウムを開催する。この場では、私の問題提起のあと、DIWPA議長の中静透さんと、IBOY公式サイトである苫小牧研究林の日浦勉さんに講演していただいて、九大生物多様性研究センターのあり方を議論する予定だ。DIWPA/IBOYの流れと、私や鷲谷さんが育ててきた生物多様性保全研究の流れを、統合すべき時が来ていると思う。
27日続き
全学FD会場にて。総長が、挨拶で、大学院でも共通教育が必要ではないか、という問題提起をされた。たとえば、倫理やマネージメントについては、院生全員が学ぶ必要があるのではないか、というご意見である。この意見には賛成だ。教官の意識改革にも役立つだろう。
最初の講演は、九大の全学共通教育の問題点について。コア教養科目に代表される、授業のマスプロ化が進んでいる。多くの教員の嘆き・・・学生の基本的素養の欠如。ドストエフスキーを知らない。慣性の法則がわからない。1945年に何があったか、答えられない。しかも、学生が、知識の欠如を恥じない。「そんなことは習ってこなかった」・・・素養の欠如に対応するには、教員側の対応の変化が必要。コア教養科目の採点の経験で、面白い文章に出会う割合が減っている。理系と文系の格差がひろがっている。理系には、文章を書きたくないという学生が増えているようだ。少人数ゼミの経験。文章の添削指導の結果、20名のうち伸びたと思えるのは、1名。多様化した学生に対応して、細かな指導をしても、指導しきれない。どういう学生をとるのかが、重要になると思う。一方で、上位層への配慮を忘れ、上位層が「このくらいで良い」と思うようであってはならない。学生の変化は、社会の変化を反映している。研究者は、世の中の変化に疎い。意識が変わらない教官と意識が変わった学生が、新学期に出会う。教員の側が、時代に応じた感覚を取り戻す必要がある。
次は、物理の未履修クラスの指導経験の話。理学部生物では、90%が物理を未履修だという。履修クラスの点数分布は、50〜80点台が大半をしめ、50点台、60点台、70点台、80点台がほぼおなじくらい。40点台は、少ない、未履修クラスでは、40点以下が半数以上をしめ、10点台〜60点台に点数が幅広く分布。勝ち組と負け組の二分化が起きている(しかしグラフを見ると、ふた山分布ではないぞ)。未履修クラスの授業評価では、半数以上が「授業内容をもっとやさしくしてほしい」と要望している。また、「具体的な演習をうやってほしい」「物理履修者が3年かけて学んだことを10数回で履修することに無理がある」「レポートを提出させておいて、それについての解答・解説を行わないのはいったい何を考えているのか」という意見が上位を占めている。理系のある学科の学習実態は、試験前を除く1日1時間以下が70%、そのうち30分以下が30%。大学院の試験に突破できるのは、試験前の猛勉強ができるから。このような受験型の勉強では、知識が定着しない。最後に提言。「教える中身さえ良ければ学生の学力と学習意欲を向上させうるとは単純にいえなくなった」「学生のレベルに教官は目線を下げよ」「学生は、それを学んで何になる、という実用主義的学習観を強く持っている」「学問をおしつけるとますます学問から逃げる」。
次は、18年度問題とその対応に関する講演。まず新学習指導要領の紹介。卒業単位が80単位から74単位へ。必修科目が38単位から31単位へ。ゆとり路線について。昭和55年以前にくらべ、小学校の主要4教科の学習時間が3割減少、学習内容は5割減少。中学校も・・・。高校では中学校からの積み残し分を教育、5日制による授業時間の減少、授業内容の歯止め規定撤廃への対応のため、土曜セミナーを実施して対応している。数学では、小中学校の212時間(2学年半分)の削減内容が高校に移行しており、これに対応しなければならない。英語では、中学・高校でそれぞれ約100語づつ削減され、英検3級程度の履修内容。新課程生の学力変化についての高校からのヒアリング調査結果。まず、全般的知識量の減少と、個人格差の拡大。語彙力・読解力・計算力・・・の低下。真面目・素直・授業態度も良好。学習したことを自主学習で深化させる姿勢が乏しい。暗記すべきことを敬遠する。国語では、論理的文章や長文がかけないし、読解力の低下がもっとも低下している。古典の学力低下が顕著。地理歴史に関しては、地理的な知識の不足、歴史・社会・政治・国際問題への興味の低下。暗記科目としてとらえている。数学では、計算力の低下が深刻。図形に対する知識と想像力が低下。理科では、物理現象に興味があっても、論理的に思考する姿勢が弱い。化学では暗記や公式に頼る。生物でも年々成績が低下する傾向。「理科総合A」を履修し、「物理I」を履修しない学生では、「力の合成・分解」「力と加速度の関係」を学んでいない。英語では、英語によるコミュニケーションには積極的。リスニングの得点は上昇しているが、語彙力・読解力は低下。(さんざんな言われ方やなぁ)。・・・話はまとめに入った。キーワードは、「学力の多様化」。「優秀な学生をのばす手立て」と「総合的に学力の低い学生を引き上げる手立て」の両方が必要とされている。低年次全学教育の重要性が増す。
研究室の卒業生で、高校で教えているO君が昼休みに研究室にあらわれた。高校現場の生々しい話を聞けた。これは、分科会メンバーにも聞いてほしい話だと考え、1時からの基礎科学科目生物学分科会に出て、話をしてもらった。旧課程の生物IB(4単位)、生物II(2単位)が、新課程では生物I(2単位)と生物II(2単位)に再編成された。単位数は変わっていないが、生物Iの内容は少ないので、半期で終わってしまうという。逆に、生物IIは、内容が多すぎて、1年間では教えきれない。生物IIの4つの単元のうち、(1)生物現象と物質、(4)課題研究は必修、(2)生物の分類と進化、(3)生物の集団、は選択である。実際には、学生の受験先に応じ、受験校の出題傾向に照らして、教える内容を選択しているという。したがって、大学がどのような問題を出題するかによって、高校生の学習内容が大きく変わる。
新課程の学生の特徴として、数字に弱い傾向があるそうだ。午前中の「計算力が低下している」という報告と合致する。組換え価の計算を授業でとりあげると、「それは生物ではなく数学の内容だ」というクレームが学生からつき、保護者会でも学生のクレームがとりあげられるので、教科書に数字が書かれていない現状では、数理的な思考法を教えるのはとても難しいそうだ。また、「海水の塩分濃度は?」と質問すると、50%とか、100%と答える学生が少なくないという。数字で物事を考えるという訓練が、日常生活の中でできていないことを象徴する事態だ。料理をした経験があれば、こんな答えはかえってこないだろう。
分科会を終えて、全体会。基礎科学科目生物学分科会の議論の内容については、私がパワーポイントを使って報告した。新課程の生物II未履修者対策として、コア教養科目「地球と生命」を廃止して、「生命科学入門」を新設したほうが良いという提案をした。また、ウェブ教材の重要性を強調し、小早川さんの「細胞生物学」のウェブサイトと、私の新キャンパスゼミのウェブサイトを紹介した。例によって、b-mobileのカードからネットに接続した(この会場も無線LANが使えなかった)。小早川さんは、授業のたびに学生に質問を書かせ、ウェブ上で回答されている。大変な努力だ。このような各教官のボランティア的な努力を、個人のものに留めずに、教官群全体で共有していくことが大事だ。最後に、ウェブ教材の開発のためには、ボランティアだけでは限界があるので、学内の支援(予算・人員)が必要だという提案をして報告を結んだ。
コア教養科目「地球と生命」に関連する質問に対して、コア教養科目は、「国際」などいくつかのキーワードで再編成され、「国際」というテーマのサブテーマの一つに「生命」があるという説明があったため、批判的な意見を述べた。教育熱心な教官のやる気をそぐ改革をしても、うまくいくはずがない。
26日
新キャンパス用地で、アナグマの巣穴堀りをした。今夜はぐっすり眠れそうだ。新キャンパスゼミ・哺乳類チームの改訂原稿が届いたので、アナグマとテンの解説ページを更新した。内容がかなり充実してきた。参考文献紹介を書くことを、次の課題にしようと思う。
25日
九州大学P&P「生物多様性の保全と進化に関する研究拠点形成」で提案している、「生物多様性研究センター」の設立に向けて、熱帯農学研究センターの緒方一夫さんと相談をしてきた。
12月16日に開催された、総合技術会議、第27回重点分野推進戦略専門調査会で、「地球観測研究戦略(案)」が提示された。この文書を紹介して、「アジアリソースセンター」構想と、「生物多様性研究センター」構想の連携について、相談をした。
この文書 は、「生態系」に関して今後10年間をめどに取り組むべき課題として、次の4項目をあげている。
これまでの「生態系観測」では、生物多様性に関する観測が弱かった。今後は、生物多様性を含む、複合的な観測拠点を整備していこうという方針だ。きわめて賢明だと思う。
「生物多様性観測」が十分展開されていない理由の一つに、標準的観測手段がないことがあげられる。九大新キャンパス生物多様性保全事業や屋久島プロジェクトでは、観測手段の標準化を進めている。これらの地域での成果をもとに、アジアに研究を展開し、上記の4課題を推進することに、九大の生物多様性研究関係者が協力して取り組んではどうか、という相談をした。
私は、大学院時代に3ヶ月、東大助手時代にも3ヶ月、タイに滞在して、植物相の調査に携わった経験がある。そのころ手がけた仕事を、もっと発展させたいという思いはある。私が助手のころ、多くの研究者がアジアで野外調査を始めたので、私はアジアに背を向けて、新大陸のフィールドに挑んだ。メキシコのステビアの仕事は、これからも続けるつもりだが、私をとりまく諸事情は、私をアジアに回帰させる方向に進んでいるようだ
私の教育・研究に関する「中期目標・中期計画」で、「生物多様性変動学」の必要性を書いた。このような研究を推進するためのフィールドステーションを、「生物多様性変動観測・研究ステーション」(BIOdiversity Change Observation & REsearch Station)、略して、BIOCOREと命名しようと思う。このようなステーションを、国内、およびアジア諸国に整備し、ネットワーク化をはかってはどうだろう。
類似の構想に「長期生態研究(LTER)」ステーションがある。しかし、これまでに整備されたLTERでは、生物多様性観測が弱かった。日本国内で、LTERがいまひとつ、大きなトレンドになっていない理由の一つは、そこにあるかもしれない。BIOCOREという新しいコンセプトを提案することで、長期生態研究を活性化したいと思う。
関連する事業として、環境省が推進している「モニタリングサイト1000」というプロジェクトがある。しかし、検索エンジンで、「モニタリングサイト1000」をキーワードに検索してみても、具体的な情報が得られない。環境省政策評価分野4のページに、15年度の予算要求額が出ていたが、具体的な内容はわからない。サイトの選定基準や、観測手段の標準化など、検討すべき課題は多い。九大新キャンパスや屋久島での観測手段を、早く論文に書いて、標準化に貢献しよう。
24日
福岡への機中。日記のページからリンクをつないだサイト名を抜き出して、"Diary-Link"を作った。私個人のエピソード記憶に沿って並んでいるので、個人的に使いやすいリンク集である。エピソード記憶を定着させるという効用もある。ほかの人に役立つかどうかはわからない。
福岡空港から大学に向かう地下鉄車中。ウェブサイトの更新をはじめてから、1ヶ月が過ぎていることに気づいた。この間、5000件近い訪問者があった。ありがたいような、怖いような話である。新キャンパズゼミに活用する、屋久島をフィールドとしている研究者のリンク集をを作るという、所期の目的はほぼ達成できたと思う。屋久島研究ネットワークについては、最近、更新していないが、旅先で書いたものが多少あるので、近日中にアップロードする予定である。箱崎九大前着。アップロードしてから、大学へ向かう。
午後は演習Iの2回目。先週の日記にも書いた文献:
を読んだ。第一著者は、共進化の地理モザイク説で有名な人で、この論文は彼のアイデアを実証した研究である。彼の最近の動向を知るべく、JN Thompsonをscolor.googleで検索したら、"[BOOK] The Coevolutionary Process - Library Search - Web Search"が最初に出た。この本は、1994年出版で、出版されたときにすぐに買ってななめ読みした。"Web Search"をクリックすると、この本の在庫案内や書評に続いて、Thompson Lab Homepageがヒットした。このサイトの"Publications"のページには、ほぼ全論文のpdfファイルへのリンクがある。上記のNature paperも、このページからダウンロードできる。とても便利だ。別刷り代を払って買ったpdfファイルだろうが、ここまでやって、良いのかなぁ。Publicationsの筆頭には、
とある。出版が楽しみだ。
全学共通ゼミの哺乳類チームから、タヌキ・イタチの解説原稿の修正版が届いたので、新キャンパスの哺乳類・鳥類のページを更新した。預かっていた画像のファイルも載せた。次に届くのは、アナグマの原稿かな?
「アナグマ」は、里山に多い動物なのだが、なぜか知名度が低い。「ムジナ」という名前のほうが、まだ人口に膾炙している。その「ムジナ」について、お化け好きの友人から、耳寄りの情報が届いた。国際日本文化研究センターの「怪異・妖怪伝承データベース」に各地の伝承が収録されているというのだ。さっそく覗いてみると、おおおぉぉぉ! このデータベースはすごい。「ムジナ」については257件の文献を収録していて、これらの要約が見れる。広辞苑によれば「ムジナ(狢)」は、アナグマの異称だとされているが、「格子戸から出た真っ赤な手が襟元を掴むという噂があった。戸が鳴るので、天井裏の狢のせいだといわれた。この狢が憑いて、気がおかしくなった人もいたという。♯バレロン化もの♯と呼ばれている。」(新潟県民俗学会発行「高志路」9巻7号37-40)などという記述を読むと、「ムジナ」は正体の見えないお化けだ。アナグマは、天井裏にのぼったりしない。
埼玉県立自然史博物館企画課長の駒宮史朗さんの解説「貉(むじな)か狸(たぬき)か」(埼玉県立自然史博物館 自然史だより 第20号 1993.03)によると、「貉」という漢字は、中国ではタヌキを指すのだそうだ。では「狸」は何かというと、ネコ科の動物を指すという。以下は、駒宮さんの解説からの抜粋である。
『平安時代になると狸は普賢菩薩(ふげんぼさつ)に化身して白象の背に乗って現れるのです。(宇治拾遺(うじしゅうい)物語1200年頃)狸の変身パフォーマンス第1号です。ところがはたしてこの当時、たぬきが現在の動物学的タヌキに相当するかどうかは不明なのです。それは平安時代の国語辞典「類聚名義抄(るいじゅうみょうぎしょう)」に狸の訓として、たぬき、いたち、野ねこなどがあげられているからです。どうして日本では狸が色々な動物にあてられているのか不思議です。それはたぶん漢字が日本に伝わったときの日本の動物相が原因と思われます。つまり狸に当てはまる山猫は、日本列島の本州には生息していなかったため想像するよりほかはなかった。当時の人々は中国の書物のなかに描かれている狸、すなわち山猫のあらゆる要素を抽出しながらイメージをふくらませ、様々な特徴をもっ複合動物のたぬきができ上がったのでした。あるものは空をとび、水に潜り、木に登り、土中にひそむ。それはムササビであったりイタチやタヌキ、アナグマなどの要素を備えていました。最初は貉も狸も一つとなっていたのです。だから狸と貉が混同されているのは無理からぬことだと思います。狸のイメージがしだいに定着し、狸がタヌキにあたると考えられるようになると、本来タヌキであるべきはずの貉は、行き場を失いタヌキによく似たアナグマにあてられるようになったのでした。こうした混同が近世まで続いたとみえ、明確な動物の種の位置付けを行った辞典類は見当たりません。』
結局、猟師をのぞけば、多くの日本人は、「タヌキ」と「ムジナ」をはっきり区別してはいなかったようだ。タヌキとアナグマは夜行性なので、電灯がなかった時代には、暗闇をガサガサ・ゴソゴソと動く妖怪変化の類だったのだろう。ちなみに、「同じ穴のムジナ」という諺の由来は、タヌキとアナグマが同じ穴に入っていて、一緒につかまることがあるからだと聞いたことがあるが、どこまで本当なのだろう。
23日
福岡空港サクララウンジにて。月曜は卒論予備審査会、生物科学部門運営委員、生協理事会などであわただしく過ごし、火曜は、P&P「生物多様性研究拠点形成」の継続申請書提出準備に追われた。しめきり日の水曜日朝に、無事提出を済ませ、午前中は新キャンパスゼミの準備をした。水生生物チームのウェブサイトは、2つの解説原稿へのリンクもつながり、完成度が高い。ゼミでは、新たに届いた哺乳類チームのウェブサイトの動物解説の原稿についてみんなで議論した。今回は、討論が活発で、建設的な意見が出た。1月末までには、かなり充実した新キャンパスの生物多様性紹介サイトができそうだ。
京急車中。新キャンパスゼミの討論で、ノウサギの食糞が話題になった。食糞用の軟便と、乾いた丸い糞を、どのように「糞」別しているのだろうか。「草を食べるときには草ばかり食べ、糞を食べるときには糞ばかり食べることで、糞別している」という仮説がゼミで提案された。この問題については、きっと答が出ているだろう。調べておこう。ウサギと同様に糞食をするコアラでは、子供のときにはユーカリの成分に対する解毒酵素が作られないので、直接ユーカリを食べずに糞食するのだそうだ。学生に教えられた。この点も、後日文献で確かめておこう。
東京国際フォーラムG401(日本生態学会常任委員会会場)にて。東京駅から会場に来る途中で、東京ステーションギャラリーに立ち寄り、暁斎・国芳展を見た。第一展示場に入ると、妖怪引幕の大きな絵が目にとびこんだ。圧巻だった。暁斎の絵の中では「鴉」が、国芳の絵では「巨鯨」が良かった。印刷では何度も見ていたが、実物の迫力は、まったく別物だった。美人画の猫は、国芳のものですら、あまり可愛くなかった。引き立て役なので、控えめに描かれたのだろう。それでも、やっぱり可愛い。「東海道五十三次」をもじった「猫飼好五十三疋」は、猫好き国芳の秀作だ。宿名の駄洒落は、苦しい語呂あわせが多くて、親しみがわいた。規模は小さいが、満足度の高い展示企画だった。〜なんでもこいッ展だィ〜という副題も◎。
ステーションギャラリーを出たところで、斉藤成也さんにばったり会った。編集者との打ち合わせに出かけるところとか。先日、2冊目の本「ゲノムと進化−ゲノムから立ち昇る生命−」を贈っていただいたばかりだが、早くも次の本の計画があるのだろうか。久しぶりにウェブサイトを覗いてみた。Sayer Says(最近考えたこと)のページが15日に更新されていた。ショーペンハウエルの格言をもじって、All Biology Aspire to Evolutionという標語を提案されている。なかなか良いと思う。そろそろ、常任委員会が始まりそうだ。
日本生態学会常任委員会で、宮地賞について、「時間がかかっても着実に内容のある研究を行っている会員の応募」を促進しようという議論があった。宮地賞は、生態学会の奨励賞である(学会のウェブサイトからのリンクが切れているので、第5回受賞式のページにリンクをはっておく)。宮地賞については、できるだけいろいろな分野の若手に贈りたいという意見が多い。長期にわたる野外研究をしている人は、論文数が少ない傾向があるかもしれないが、論文数だけで審査をするわけではない。この2年ほど、野外研究をしている人の受賞がないので、次回は野外研究で頑張っている若手に、ぜひ応募してほしいと思う。もちろん、ラボワークや、理論的研究の方にも応募してほしい。宮地賞が、生態学会の若手全員にとっての目標になることを切に望む。
20日
North Carolina State UniversityのMichael Purugganan Labに留学中の清水健太郎くんから、「自殖の進化の論文がScienceに出版されました」という連絡が届いた。題して"Darwinian selection on a selfing locus"。17日発行の最新号に、確かに載っていた(Scienceを電子ジャーナルで見れる人はここをクリック)。清水くん、おめでとう。シロイヌナズナでは、自家不和合性に関わる遺伝子SCRがpsuedogeneになっている。このpsuedogene alleleの固定に、正の淘汰が作用したことを実証した研究論文だ。他殖から自殖への進化のプロセスが、遺伝子レベルで具体的にわかるようになった。このテーマに関わってきたものとして、感慨深い。
今日はあわただしい一日で、メールの返事を1通しか書けなかった。明日の1時限目の授業のプリント8枚×65名分をコピーしたあと、帰宅途上の地下鉄車内で、日記を書く。やや、「み○か」化してきたような気がする。福岡の地下鉄車内は、11時半を過ぎると、人気が少ない。ノートPCをひろげてキーボードをたたいても、はた迷惑ではないのである。車内で少しづつ作ってきた2005年度のエクセル・カレンダーが12月まで完成。とりあえず、IBCの日程を書き込む。
19日
毎日新聞朝刊「時代の風」欄で、米本昌平さんが、「科研費アジア枠」を提唱されている。科研費の1割をアジアの研究者に開放し、アジアの学術研究を支援せよという提案である。賛成だ。EUでは、共通グラントが設けられ、研究費に恵まれない国の学術研究をEU全体で支援している。スペインで開催された国際会議に参加して驚いたのだが、たとえばスペインの大学院生が、旧東欧圏諸国を含むヨーロッパ全域で調査を実施し、資料を集め、分子系統学的解析を行った成果を発表したりしていた。ヨーロッパの野外系研究者は、少なくともヨーロッパ全域を視野に入れて、研究計画を考えている。そういう時代が到来している。この点で、日本の現状は、ちょっと寂しい。
環境研の竹中くんから、「18日の日記を拝読しました.・・環境勾配にそった分布について,以前にこんなシミュレーションをしたことがあります.」というメールが届いた。竹中くんのウェブサイト→植物生態学→森林の個体ベースモデルLatFor-Gの解説ページ、をたどると、公開されている文書だった。竹中くんのサイトにはときどき訪問しているが、「森林の個体ベースモデル」というタイトルから、プロット内の群集動態を記述するモデルだろうと思って、見過ごしていたようだ。温暖化の過程での、種の分布の北上を記述するこのモデルは、たしかに私の問題意識にピッタリだ。私のアイデアがこのモデルの枠組みでどう扱えるか、考えながら、福岡に戻ろう。そろそろ、チェックアウトの時間だ。
高松に向かう車中。岡山までは「のぞみ」のグリーン席のチケットを送っていただいたので、快適である。3番A席だったが、空いていたので、17番A席に陣取って、コンセントを使用。Let's noteのバッテリーは長持ちするが、コンセントが使えるときには、使っておきたい。
昨日の演習I(英語の論文を輪読する科目)では、Natureに掲載された次の3つの論文をとりあげた。
最初の論文はキスゲ・プロジェクトと、2番目の論文は九大新キャンパス生物多様性保全事業や屋久島での生物多様性調査と、最後の論文は、ヒヨドリバナとジェミニウイルス、あるいはツバキとツバキシギゾウムシの共進化と深い関連がある。これらのうち、3番目の論文だけが、地理的構造を明示的に取り上げているが、ポリネーション・シンドロームの進化や、種多様性の維持機構を解明するうえでも、「地理的構造」を本格的にとりあげるアプローチが欠かせない。
九大新キャンパスと屋久島での植物分布調査の結果をもとに、rank-abundance関係を比べると、前者では見事に等比級数則が成り立つが、後者では、分布の広い種のabundanceが、等比級数則からずれる。具体的には、分布の広い種は、等比級数則から期待されるよりも、さらに分布が広い。これはなぜだろうと考えているうちに、そもそも分布の境界はなぜ進化によって移動しないのだろうと、考えるようになった。体サイズや耐性など、分布境界での適応に関係する多くの性質には遺伝分散がある。このような性質に方向性淘汰がはたらけば、適応進化が進み、分布域は拡大するはずである。なぜ、そうならないのか。これは、これまで見過ごされているが、とても重要で、面白い問題だ。この問題について、有力な仮説を考えた。数理に強い人の協力を得て、早急にモデル化したいと考えている。このモデルは、上記の3つの論文がとりあげているテーマすべてに適用できるかもしれない。保全を目的として実施した植物分布調査だが、思わぬ方向に展開しそうである。
高松行きマリンライナー車中。快速なのに、グリーン車がある(そういえば、総武線の快速にもあった)。でも、壁際の座席にも、コンセントはなかった。仕方なく、チケットどおり、7Aに着席。車外は水田が広がるが、荒れている。川の土手は、ペットボトルなどのごみだらけだ。住民も、行政も、風景を、もっと大切にしなければいけない。
清水さんが副所長をされている畜産草地試験場のウェブサイトをのぞいてみた。データベースのページには、写真で見る外来雑草、飼料作物病害図鑑、草地植生ファクトデータベース、などへのリンクがある。どれも、面白い。飼料作物病害図鑑→菌類図鑑、を見ると、さび菌の夏胞子と冬胞子の写真集がある。ミゾソバさび病菌、ツユクサさび病菌などもある。でも、キツリフネやノカンゾウにつくさび病菌は、載っていない。もっと充実させてほしいが、あんまりニーズがないだろうなぁ。病気は野外での植物個体群や植物群集の動態にも、重要な役割を果たしているに違いないのだが、生態学者はほとんど病気に関心を示さない。九大生態研10年の歴史を通じて、病気に興味をもって研究にとりくんでくれたのは、大井くんただ一人だった。気持ちは、わかる。ポリネータのほうが、ずっと生き物らしくて、生き物好きには面白い。でも、マイナーな生き物たちにも、もっと関心を持ってあげたい。「生物多様性」の大部分は、マイナーな生き物たちに支えられているのだから。
九大・大学院の教え子の結婚式で、東北大学の千葉聡さんとばったり遭遇。新婦は千葉さんが静岡大学在籍中の教え子だという。なるほど、九大生物研究部出身者の中でも、「とくに濃い」人たちに数えられる「F君」が選んだ相手は、「その筋」の人だったわけだ。検索をしてみると、新婦+千葉聡+河田雅圭、らによる論文がヒットした。偶然にも、河田雅圭さんは、現在新郎が勤務する、丸亀高校の出身である。「ルークが気になるんだろ」というハン・ソロに、「あら、ルークと私はきょうだいよ」と返すレイア姫のエピソードなみに、世間は狭いというオチである。
ちなみに、wikipediaによれば、「エピソード3/シスの復讐」は、2005年5月19日にアメリカで封切りされるそうだ。さすがはwikipedia、小説版などから推測したと称して、「あらすじ」まで載せている。しかし、実はエピソードIIIの公式サイトのdatabankのページには、かなりの情報がすでに「リーク」されている。たとえば、登場人物リストにChewbaccaの名前があるし、Padmeのページには、power policyを推進するPalpatineに対して批判的な、理想主義的議員にとって、彼女がmoral centerになっていく、と書かれている。
エピソードIVが公開されたころ、冷戦下の合衆国民にとって、アメリカ合衆国は民主主義を体現する連邦だった。レイア姫の呼びかけに応えて、デス・スターを建設する帝国の圧政に対し、ひとり敢然とたちむかう主人公は、熱狂的な支持で迎えられた。時はめぐり、新たな主人公は、ダークサイドへと堕ちて行く。Palpatineのpower policyは、いまの合衆国を暗示していると考えても良いだろう。ジョージ・ルーカス監督は、自らが描いたシナリオが、あまりにも現実を先取りしていたことに、戸惑っているかもしれない。きっと、Padmeの運命は、想像以上に悲劇的なものとして描かれるのではないか。その演出にこめられた希望が、現実のものとなることを願いたい。
9/11事件がアメリカ社会に与えた影響の深さは、当時、アメリカの名門女子高校に留学中だった岡崎玲子さんが、瑞々しい感性で綴った『9・11ジェネレーション』に、よく描かれている。多くの人に読んでほしい本だ。彼女の第3作が待たれる。
結婚式で摂取したアルコールのおかげで、今日はずいぶん能弁饒舌になってしまった。さて、「F君」のその後の「活躍」を知るべく、「F」と「丸亀高校」で検索をかけたところ、瀬戸内むしの会会誌「ヘリグロ」の注文を受け付けている、知る人ぞ知る六本脚のサイトがヒットした。やはり、「とくに濃い」サイトが出てきたゾ。「F君」には、これからの時代にも「とくに濃い」学生を育ててくれるよう、期待したい。とくに、九大のゾウムシ研究の後継者をぜひ、育ててほしい。待ってるからね。
17日
昨日の対談では、畜産草地研究所副所長の清水矩宏さんに、興味深い話をいろいろ伺った。内容は、種生物学シリーズ『雑草の進化生態学』(文一総合出版)に収録される。農業技術環境研究所植生管理課長当時、ちょうど「生物多様性」がクローズアップされてきたため、鷲谷・矢原『保全生態学入門』をテキストに、ゼミを開かれたという話を伺った。私はこの本の中で、農業の問題をあまりとりあげなかったことが気になっていたのだが、農学分野の方にもテキストとして読まれていたことを知り、とても嬉しかった。日本の農業の将来を考えるうえで、「生物多様性」というキーワードが大きな手がかりになるという清水さんのご意見には、全面的に賛成だ。農学分野で日本をリードされてきた方から、このような発言を伺い、意を強くした。清水さんは、菊沢さんと同期で、3月に退官されるそうだ。退官されても、日本の農業と農学の発展のために、引き続いて活躍されることを祈りたい。
ちなみに、菊沢さんは、学生時代に応援団で活躍されていたそうだ。その菊沢さんの画集が、『雑草の進化生態学』と同じ出版社(文一総合出版)から出版される。これも何かの縁である。
16日
福岡空港サクララウンジに到着。昨日、ウェブサイトのファイルサイズが、個人契約のプロバイダが設定しているメモリーの上限をこえてしまった。新キャンパスゼミの学生が作成中の新キャンパス紹介原稿で、画像を多用しているためだ。じきにこの事態を迎えることはわかっていた。当初の計画どおり、研究室のサーバーを使った公式サイトを再整備し、教育のページなど、画像が多く、また研究室で更新するページを公式サイトに移した。結果として、個人サイトは、日記・スケジュール・意見に特化することになった。もちろん、相互にリンクがつながれている。おっと、もう出発の10分前だ。
機内サービスのスープを飲んで、一息つく。ウェブ用のファイルを公式サイトと個人サイトに分離した結果、教育のページ、新キャンパスゼミの原稿で使われているかなりの画像(哺乳類・水生動物・生物多様性保全ゾーンの景観など)について、リンクのつなぎ換えが必要になった。きっと、脳内メモリーに関しても、ときどきこういう整理が必要なのだろう。脳内メモリーに関しては、リンクは0/1ではなく、強弱がある。そして、リンクの強さは、時間とともに減衰する。よく使うリンクは強化されるが、使わないリンクは、次第に消えていく。昔のことが、思い出せなくなるのだ。しかし、キーワードは強く記憶されるようだ。キーワードを目にすると、突然記憶が甦ることがある。
私にとって、ウェブサイトの価値は、さまざまなキーワードを外部記憶装置に書き込み、それらを体系化・ネットワーク化しておくことによって、脳内メモリーへの検索機能を維持することだ。竹中くんの、「ウェブ上にないものは、世の中に存在しないのと同じ」という発言を、私は意図的に曲解して、「ウェブ上にキーワードがない記憶は、脳の中に存在しないのと同じ」と考えた。もっとも卑近な例は、スケジュール表である。スケジュール表は、過去・現在・近未来の諸事象に関するエピソード記憶への、優れたリンクサイトだ。この日記もまた、さまざまなキーワードを、時系列で関連づけておくのに役立つ。
昨日は、芸術工学研究院の佐藤優教授(総長特別補佐)にお目にかかり、「九州大吟醸」の商標の件で、お詫びをするとともに、善後策を相談させていただいた。うかつにも、「九州大吟醸」の名付け親である佐藤先生と、商標利用に関するきちんとした相談をしないまま、浜地酒造と学内NPO法人「環境創造舎」に九大生協が協力する形での、九大ブランド酒づくりプロジェクトをスタートさせてしまった。浅慮を猛省。佐藤先生のご尽力を仰いで、良い方向を見つけたい。
佐藤先生のご専門は、「視覚記号学」。動植物の共進化を通じて発達したさまざまなシグナルに関心がある私には、少なからず、興味をそそられる分野だ。ウェブサイトの解説を読んでみよう。佐藤先生は、科学技術振興調整費「戦略的研究拠点育成プログラム」に採択されたユーザーサイエンス機構(USI)の副機構長もつとめられている。USIのウェブサイトを見ると、
羽田空港にて。これから、このページをアップロードしたあと、丸の内へ向かう。午後は、外来雑草・薬剤抵抗性・遺伝子組み換え体などの雑草問題をめぐる対談。楽しみだ。
14日
基礎生物学研究所の森永真一くんから、「実は、以下の論文を見つけまして、メールをお送り致しました。・・矢原さんが御存じないということはないとは思いましたが、」というメールが届く。
ひぇ〜、知らんかったよぉ〜。森永くん、感謝。早速、pdfファイルをダウンロードして、skim。蛾媒花で、花筒が細長〜くて、蜜がたっぷりで、夜に強い香りを出すPetunia axillarisと、ハナバチ媒花で、花筒が短くて広く、蜜が少なく、香りが弱いPetunia integrifoliaが、どちらも今やモデル生物の仲間入りをしたPetunia hybridaと交配できて、雑種に稔性があって、後代までとれるなんて、反則やんか。Petunia hybridaには、染色体特異的なマーカーがいろいろあるし、形質転換系が確立しているし、何たって、transposon taggingができるもんね。キスゲの強敵・・というより、遺伝学ではかないっこない相手だ。
花筒の長さに関しては、5つのQTLがあり、ぜんぶ別の染色体に乗っている。花蜜量に関するQTLは2つあり、1つは花全体の大きさにも関与している。花蜜中のショ糖とヘキソースの比率に関与するQTLが1個ある(P. integrifoliaではこの比率が低い)。香りに関しては、2つのQTLが見つかった。ハナバチ媒のP. integrifoliaはベンズアルデヒドだけを分泌するが、蛾媒のP. axillarisはこれに加えて、ベンジルアルコール、メチルベンジエイト、安息香酸などを含む複雑な香りを出す。染色体の一部を交配を通じて入れ替える実験から、P. integrifoliaも香り成分を作る基本的な代謝系は持っており、安息香酸の派生物を作るための少数の遺伝子の変化で、蛾媒の複雑な香りが進化したことが示唆された。
う〜ん、いよいよこういう時代になったか。この調子なら、花の香りの進化が遺伝子レベルでわかる日も近いと思う。
矢原研では、蛾媒花のユウスゲと、蝶・ハナバチ媒花のハマカンゾウを交配し、花色・花形態・香り・開花時間などのQTLマッピングを一つの目標にした「キスゲ・プロジェクト」を進めている。形質が分離した実験集団を野外に置いて、ポリネータによる淘汰を実測するのがもう一つの目標だ。Petuniaでの研究は、参考になってありがたい。とはいえ、有力な競合システムが登場してしまったことも確か。うかうかしれられんなぁ。
ちなみに、ペチュニア野生種の探索・分類に関しては、千葉大園芸の安藤敏夫さんの貢献が大きい。
13日
京大生態研センターの辻野亮くんから、ウェブサイトを開設したという連絡があった。早速、「屋久島研究ネットワーク」のページからリンクをつないだ。「矢原さんのトランセクト調査ではシカがどれくらいいるのかという視点が抜けているように感じました.・・トランセクト付近で糞粒によるシカの個体数密度も推定しておくと良いのではないでしょうか.」というアドバイスをありがとう。トランセクト調査では、食痕調査もやっていて、どの調査区で食痕が多いかは把握しています。これに加えて、赤外線センサーカメラによるシカの活動量調査を予定しています。まずはトランセクト調査の調査地点を増やし、食痕調査データを補完する形でセンサーカメラによる調査を行い、希少植物全種についての絶滅リスク評価をします。(「屋久島研究ネットワーク」更新履歴より)
昨日、種生物学シンポの帰路(土浦→上野)では、渡辺名月さんの質問攻めに会う。ノートを片手に、学振の書類の書き方から、モチベーションが低下したときの気分転換法まで、執拗に聞かれた。「研究者として大事な資質は?」→私の答えは、こだわり、好奇心、意地。自分が興味を持った問題に、徹底してこだわり続けられるかどうか、自分が知らないことに好奇心を持ち続けられるかどうか、人まねでない成果を出すことに意地を張り続けられるかどうか、そんなことが案外大事ではないかと思う。「自信を持つには?」→私は、自信なんて、ない。私よりすぐれた研究者はたくさんいる。そういう人と接していると、自信なんてものはとても持てない。でも、生物の世界は、面白すぎる。自分の能力も省みず、いろいろな研究に手を出してしまう。新しい研究を始めるときは、いつも不安でいっぱいだ。でも、始めてしまう。あとは、こだわりと意地で、研究を続けている。
12日
種生物学シンポ2日目。「枝」シンポ3人目の鈴木新くんの講演中。講演は、ロダンの彫刻から始まった。「部分から全体へ」アプローチするためには「急がば枝次数」だという視点をまず提示。芸人度が高い(注:自分のアイデアを上手にアピールできる)人だと感じる。ウェブサイトを検索してみると、「新生児からはじめる樹木生態学」が見つかった。おおっ、昨日から参加者に笑顔をふりまいているあのお方の写真だ。・・・と書いていたところで、スクリーンいっぱいに、恵果ちゃんの写真が・・・。「水分環境(お風呂)によって、可塑性が変わる(笑顔をふりまく)・・・」という振りで、木部の水分通導度の話に。子煩悩まるだしですねぇ。菊沢研で、「研究者に必要なのは、やる気とあつかましさだ」との薫陶をうけ、学位取得の段になると、「君のようにあつかましい人間には学位はやらん」と言われたと、ウェブサイトにある。いまは寺島研で、ポスドクをしているそうだ。
ヒサカキとサカキの比較研究の結果が聞けるものと期待したが、ヒサカキとサカキでは研究内容が違い、結果の比較はできない。いずれも「枝次数」に注目した研究ではあるが、私には「全体」が見えなかった。ちょっと残念。
午後の部。渡辺名月さんの講演「ツル性ヤシ科植物ロタンの多様な形態と成長パタン」で、ロタンらしき植物が木に巻きついている図をスクリーンで見せられ、「一番前の矢原さん、この図はロダンを正しく描いていますか」と聞かれる。「いいえ」と答えると「なぜですか?」とさらに追求された。「よじ登る器官が描かれていない」と即答して面目を保つ。花序をつけたロタンの1種を切り倒して、標本を作ったことがあるもんね。あのときは、登攀器官の棘が痛くて、標本を作るのが大変だった。デカイ花序は、新聞紙の何倍もあって、さばくのが大変だった。
渡辺さんの講演では、ツル性のロタンが、ロゼット段階から、数十メートルの樹上に伸び上がる段階で、どのように形態と資源分配を変えていくかが、わかりやすく紹介された。
11日
種生物学シンポで、東北大の陶山さんから、マイクロサテライトのgenotypingには"Qiagen の Multiplex PCR kit"が抜群に良いという話を聞いた。手間がかからず、多量のサンプルがこなせるだけでなく、今まで増幅できなかったサンプルからも増幅できたという。また、同時に複数の座位がチェックできるので、nullかどうかを容易に、高い信頼度で判定できる。キスゲ・プロジェクトのQTLマッピングには、多量のgenotyping作業が必要なので、朗報だ。
青木誠志郎くんの講演が続いている。マメ科植物側で、根粒バクテリアからのリターン・シグナルを認識する因子(NFR:Nod Factor Recognition)の遺伝子が昨年、同定されたそうだ。早速、scolar.googleで検索してみたところ、Nature 425, 585 - 592に出ていた。根粒バクテリアのnod genesに関する青木君の話が続いているが、「植物とっての共生者であるにも関わらず、根粒バクテリアになぜ宿主特異性が進化したか」という疑問に答えるには、NFRの分子進化に関する分析が欠かせないぞ。この疑問に対する「Y教授」の仮説の説明は不正確だったので、あとで訂正しよう。
根粒バクテリアの中に、「ぼったくり菌」がいるに違いない、という仮説を、駒場にいたころに青木君に言ったことがある。この仮説は、すでにモデル化されている。このアイデアが、最近実証されたそうだ(Nature 425;78-81)。アイデアだけでも、発表しておけば良かった。
10日
種生物学会和文誌編集委員会に参加。発行が遅れていた『植物の生活史』の原稿が揃い、日本生態学会大阪大会までに出版できそうだ。種生物学シリーズ既刊の4冊は、いずれも売り上げが伸び続けている。Amazon.comでの最近の売れ行きは、『森の分子生態学』・『光と水と植物のかたち』・『花生態学の最前線』・『保全と復元の生物学』の順番だ。『保全と復元の生物学』が売れていないわけではない。トレンディな『保全と復元の生物学』以上に、基礎的な3冊が売れているのだ。心強い。6冊目の『雑草の進化生態学』についても、原稿がほぼ揃った。来夏に出版される予定。7冊目の『動く森の生態学』の編集も順調だ。和文誌の単行本化を決めたとき、10冊出せれば、時代を画する事業になると思った。その目標の実現は、ほぼ確実になってきた。
9日
東京行きの機内で、久しぶりにこのページに書く。大学にいると、なかなか日記を書いている暇がない。屋久島滞在中に開設した「屋久島研究ネットワーク」のページについて、メールが毎日届いたので、このページの更新だけは続けた。
今朝は9時半から、12月16日の浜の瀬ダム検討会の資料について、説明を受けた。ダム水没予定地は、絶滅危惧植物のホットスポットである。テキサスと南九州に隔離分布するキリノミタケという変わったキノコの大きな自生地でもある。また、渓流沿いの急峻な地形に残された広葉樹林の枝には、着生植物が群生しており、熱帯の山地多雨林を思わせる景観である。最初に現地を見たとき、この林を水没させるのかと絶句してしまった。
10年に1回規模の渇水に対応できるようにたてられた水利用計画ついて説明を聞いた。この水利用計画によって、農地の生産性が大きく向上するという数字が並ぶ。しかし、現存量が増大した農地で、10年に1回をうわまわる渇水がくれば、被害は今よりも深刻になるのではないか。ぎりぎりの資金で事業拡大をした会社では、資金調達できずに倒産するリスクが増大するはずだ。「10年に1回規模の渇水に対応」という目標設定は果たして妥当なのだろうか。リスクを考えに入れたうえで、「9年に1回」「10年に1回」「11年に1回」・・・規模の渇水に対応する計画のコスト・ベネフィットを計算し、最適な規模を選ぶのが妥当ではないか。
6日
昨日屋久島を離れる予定だったが、午後の便が強風のため全便欠航したため、滞在を一晩延長した。今日の便は、昨日3時半の時点で、3時15分発しか予約できなかったので、今朝7時過ぎに空港に出かけ、空席待ち番号「JGC1番」をとった。9時25分発の始発便に乗れそうだ。
昨日は、レーザー測距計を使って、ツルラン調査区の地形を測量した。前回借りたデモ機は、短距離での測定値が不安定だったので、短距離をより高い精度で測定できる機種(Laser Technology社:IMPULSE)を借りてきた。確かに、短距離での測定値がとても安定しており、これなら使える。ツルラン・標識杭間の水平距離・斜距離・角度が簡単に測定できてとても便利だ。
昨日は、奈良教育大の寺川眞理さんから、屋久島関連の情報が届いたので、屋久島のページを更新し、ついでに屋久島をフィールドにしている植物研究者の紹介を書いた。屋久島は、たくさんの研究者にフィールドとして利用されているが、研究者間の連絡は、必ずしもとれていない。私は、屋久島をフィールドにしている植物研究者については、ほとんど全員を知っている。この機会に、研究者間のネットワークづくりをしたいと思う。
10時09分:鹿児島空港に到着。ケータイでの通信から開放され、モバイルカードが使えるので、雨の日や待合室で書きためたページを一挙にアップロードしよう。。
4日
今日は朝から本格的な雨。西からは低気圧、南からは時ならぬ台風が迫り、大台ケ原で頑張ってくれた高気圧も、さすがに勢力を失い、東に去ってしまった。メールをチェックしたら、12-1月のスケジュール表に新たに予定を記入する必要が生じ、ホームページを更新することにした。
2日
午後2時半ころに、大株歩道入り口にたどりつく。急がねば、明るいうちに白谷雲水峡に戻るのは難しい。大株歩道入り口からウイルソン株まで、駆け足でのぼり、所要時間13分(道標25分、昭文社地図のコースタイム40分)。目的のヤクシマワラビをチェックしたあと、くだりは7分(昭文社タイム30分)。大株歩道入り口から楠川分れまで25分(昭文社タイム1時間10分)、楠川分れから辻峠まで、一気に登りきって23分(昭文社タイム1時間)。東大助手時代の、20分を切った記録には及ばないが、ノンストップでかけ登れたからよしとしよう。白谷林道に、無事5時すぎにたどりついた。曇天だったこともあり、林内はかなり暗かった。
久しぶりに、筋肉痛というものに、なったらしい。
1日
鹿児島空港で、屋久島行きの便の搭乗待ち。サクララウンジのビジネステーブルから、明日屋久島入りする竹中明夫さんに連絡。彼も、三中さん同様に、マメに日記を書いている人だ。11月24日の日記で、私の日記ページ再開を紹介してくれた。私にウェブページづくり再開を強く勧めてくれた人である。今回の再開は、4年目を迎えた新キャンパスゼミで、新キャンパスの生物多様性を解説するウェブサイトづくりを目標に設定したことがきっかけだ。このアイデアは、昔から持っていたが、なかなか実現できなかった。竹中さんの「ささやき」が、潜在意識に残って、私を決断させた可能性はあるかもしれない。
しかし、何よりもモバイルカードを使って、出張先から簡単にインターネットにアクセスできるようになったという事情が大きい。私は大学生協連特約のb-mobileを使っている。年間使い放題契約で、9000円台。お得である。先日の新キャンパスゼミでも、このカードで、ネットにアクセスして、HTMLの書き方、アップロードの仕方などを実演した(なお、このゼミに使う六本松キャンパス新5号館は、無線LANが使えない)。このカードの欠点は、PHSの電波が入らない屋久島で使えないことだ。したがって、5日まで、ウェブサイトの更新は、しない、つもり。そりゃぁ、ケータイから更新するという手はありますが・・・。
なに、「息をしなければ死んでしまうでしょう」(三中日録:11月23日)だって? 少なくとも私は、日記を書かなければ息がつまることはないなぁ。この間、書き続けているのは、出張が多いからですよ。つれづれなるままに書きつらねるのは、待ち時間の暇つぶしにちょうど良いから。記録として役立つし。でも、大学でこんな日記を書いていたら、大学院生・卒業研究生の冷たい視線をひしひしと背後に感じて、それこそ、息がつまりまっせ。
2004年11月
29日
「シカと森」シンポジウムで、屋久島の手塚さんから、臥蛇島にヤクシカがいるという情報をいただいた。早速、この島について調べてみた。臥蛇島は、トカラ列島北部に位置し、口之島の西にある。面積/約4km2、周囲/約9kmの小島だ。昭和45年まで人が住んでいたが、いまは無人島である。人が住んでいたころに持ち込まれたヤクシカが、島に住み着いているらしい。また、トカラヤギもいるそうだ。狭い島で、これらの哺乳類の個体群がどのように維持され、植生にどのような影響を与えているか、興味が持たれる。
Soay sheepのような組織的な哺乳類研究が、日本でも発展してほしいものだ。
28日夜(新幹線車中)
とても意義深いシンポジウムだった。参加する前は、大台ヶ原と北海道と屋久島の話がうまくかみあうだろうか、屋久島から参加するメンバーに参考になるだろうかという不安があった。しかし、「シカと森と人」の関係については、3つの場所で共通する問題が多く、3つのセッションの講演は見事にかみあっていた。このシンポジウムの内容は、参加者が聞いただけではもったいないので、本にまとめるように提案した。オルガナイザーの一人の湯本貴和さんと、シカ問題のブレーンである松田裕之さんに編集をお願いした。福岡に戻ったら、アレンジのダメ押しをしよう。
岩本泉治さん(NPO法人 森と人のネットワーク奈良)の講演がとくに印象深かった。山里の文化、とくに狩猟の文化が、森の生き物たちのバランスに寄与していたという話であった。私も似た話をしたことがあるが、経験に根ざしたものではない。岩本さんは、大台ヶ原の山里で、猟師や修験者の文化とともに育った経験にもとづいて、狩猟の文化の重要性を説かれた。頭で考えた研究者の話と違って、圧倒的な説得力があった。修験者になるには、100種類くらいの薬草を覚えたという話にとくに興味を惹かれ、講演後にぜひ資料がほしいとお願いした。
屋久島から参加された現役の猟師、牧瀬一郎さんの話も、参加者に感銘を与えたようだ。かつて猟だけで生計をたてていた方が、屋久島には50人くらいいらっしゃったという。屋久島での狩猟文化を受けつぐために、猟友会での活動のかたわらで、ご存命の方々に面談を続けられている。一時は島外に散逸した「屋久犬」を島に戻し、「屋久犬」による猟の復活に努力されている。
これらの話題に関連して、パネルディスカッションで、「生活と切り離して文化だけを残していくのは難しい。シカ肉を食品として売れるようにして、狩猟の文化を残していく基盤を作ることが大事だ」という発言をしたときには、会場のあちこちで拍手が起きた。シンポジウム終了後に、「シカの個体数管理に関する合意形成をすすめるうえでは、狩猟の文化を受け継ぐ意義に目を向けることが大切だ」というような内容を、自然再生ハンドブックに書き込んでほしい、というご意見をいただいた。有意義なご意見だ。しっかりと覚えておこう。
28日朝
昨日のエクスカーションは快晴。この日だけは雨の予報だったが、例によって、天気予報に完全勝利。しかし、寒かった。歩道・木道からはずれることができず、参加者の歩みは遅いので、汗が乾くときに体を冷やさないように注意した。山を降りてからの待ち時間には、車内や建物に入って待機。懇親会終了後は、タクシーで宿に戻り、風呂に入って、すぐに就寝。同宿の参加者と交流を深めたかったが、風呂あがりで体を冷やすと、風邪をひきやすい。年をとったというより、体調を崩してはいけないという責任感が強くなったと思う。最近は、研究室で風邪がはやっているが、私は元気である。7時に起きて、パワーポイントのスライドをアレンジした。あと30分で、シンポジウムが始まる。
27日
シンポジウムのエクスカーションで大台ケ原に向けて移動中。夕方まで、携帯も通じないことが多いでしょう。お急ぎの方は、夕方までお待ちください。夜は、KKRみかさ荘(0742-22-5582)。
26日
朝、東京から戻り、午前中は新キャンパス緑地管理WGコアチームの会議。午後、メールの処理などをしていたら、もうすぐ5時だ。発表準備は、新幹線の中だな。講演要旨にリンクをはっておく。プログラム・会場案内は、スケジュール表からリンクした。あとは、講演で使いそうなパワーポイントファイルをメモリーキーに詰めて、出発しよう。
24日
今日の「新キャンパスゼミ」に向けて、「教育のページ」に、過去3年間のレポート集と、今日までに届いた今年の受講生の草稿を載せた。最初の年のレポートが、一番よく出来ているように思う。教官側にそれだけ力が入っていたということだろう。教育は一種の吸熱過程で、High cost→High performanceだと思う。しかし、時間は有限だ。昨日、「教育のページ」作成に時間を割いたために、H君の論文改訂が遅れた。分身の術があれば良いのだが・・・。
23日
0時をまわってから日記を書く日が2日も続く。いかん。
ようやく、教育のページを開設し、「新キャンパスゼミ」の2001年度のレポート集を公開した。24日のゼミでは、このサイトを使って、学生にHTMLエディターの使い方を解説する予定。今年のゼミ後期の目標は、来年10月に新キャンパスに移る学生・教職員向けの解説原稿の作成。今年は、ウェブに草稿をのせながら、改訂を重ねて、完成させていく方法を採用してみようと思う。
京大の東樹君来訪。UC DavisのJohn Gillespie博士のセミナー。
John Gillespie博士は木村資生博士の中立理論に対抗して、変動淘汰理論を主張してきた理論家。攻撃的な人かと思いきや、マイルドで、接しやすい人だった。知人のBrad Sahffer博士が、UC Davisの集団生物学センター長になったとか。UC Davisとは、縁がある。もっと組織的に交流を深めたいものだ。
22日
0時をまわって、22日。今日がしめきりのグラント審査のレポートを自宅でケータイから地球の裏側の某国に送信。便利になったもんだ。昨日は、三中さんから、私のウェブサイトが更新されたのは、サプライズだ、革命的だと、「賛辞」をいただいた。私には、とても三中「日録」のように、毎日書き続ける余裕はないですよ。「日記」を書いている暇があったら、さっさと「論文を見てくれ」「論文を書いてくれ」「グリーンリストのバグとりをしてくれ」「RDB見直し調査結果の入力を進めてくれ」・・・、という声があちこちから聞こえてくるのです。
21日
科学研究の情報専用の検索サイトscolar.googleがとても便利だというメールが届く。早速、Yahara と pollinationで検索してみた。大橋一晴君とCognitive Ecology of Pollination, Cambridge University Press, 2001という本に書いた論文を筆頭に、私が送粉生態学分野で書いた論文がすぐにリストされる。筆頭にリストされた大橋・矢原論文については、cited by 7という表示が出た。この被引用回数は、Web of Scienceと違って、google検索にひっかかる、つまりウェブ上ですぐに見れる論文(雑誌のサイトのアブストラクトなど)に何回引用されたかという数字だ。この数字をクリックすると、大橋・矢原論文を引用している7つの論文がすぐにリストされた。本に書いた論文は、Cambridge University Pressから出たものでも、Web of Scienceでは引用をトレースしてくれないので、これまでどれくらい引用されているかわからなかった。これはとても便利だ。そのほかにも、さまざまなリンクが貼られているので、「Yahara」「pollination」のキーワードにつながる電子情報は、完璧に把握できる。カナダ留学中の大橋君のウェブサイトにもすぐに行けて、久しぶりに彼の元気な笑顔が見れた。知らなかった論文もいくつか見れたし、pdfファイルがダウンロードできるものまであった。研究者にとって、これは情報スーパーハイウェイだ。
20日
久しぶりにウェブサイトの更新をはじめた。最後の更新は2003年4月22日だから、1年7ヶ月ぶりだ。4年前から行なっている全学共通科目の少人数ゼミナール「新キャンパスにおける生物多様性の保全」(タイトルは毎年少しづつ違う)の今年の後期の目標として、新キャンパスに移る学生・教職員に向けてのウェブサイトを作ることにした。前回のゼミで、HTMLの初歩の初歩を教えたが、2年近く使っていないと、自分でもかなり忘れている。
以前に使っていたHTMLエディターは、もうかなり時代遅れになっていたので、ez-HTMLをダウンロードした。まだ使い慣れないが、新しいものを面倒くさく感じるようでは年だ。使いこなそう。
当面の重要課題:グラント審査(海外、22日まで)。H君、Oさんの論文原稿改訂。11月28日開催のシンポジウム『シカと森の「今」をたしかめる』の講演準備。