天童荒太『あふれた愛』集英社,2000年
懸命に生きる人たち,懸命であるのに,いや,懸命だからこそ傷つけあったり,涙を流したりする,そんな人たちの物語だった。
ただそこにいるだけで,確かに存在しているということ,そのままで充分なんだということ,
このことを受入れるために,どれだけ自分を責めたり,人を責めたり,何かにすがったり,気付かないふりをしたり,強がったり・・・ということを繰り返してしまうんだろう。
『あふれた愛』を本屋で手に取ったとき,すぐ読みたいと思ったけれど,この本が「『永遠の仔』の執筆過程から生まれた」という一文に手を止め,まず『永遠の仔』を読むことにした。
『永遠の仔』では,死んでいく登場人物への深い悲しみがいつまでも残ったけれど,
この物語はこの世界への希望が残されているように思った。
4編とも,とてもいい作品です。
この本を貸してくださった方は,私が普段のアホさで「『ありふれた愛』貸してください」と頼んだら,
「ちょっと!『あふれた愛』よ。『ありふれて』ないのよ,『あふれている』のよ!」
と身振り交えて訂正してくださった・・・。
読んでみて,やっぱこの本は「あふれた愛」なんだと実感しています。