豊饒の渓 2001,07,13
豊饒の渓 広葉樹林に囲まれた夏の渓。先週まで、林道は通行不能、ここでは7月の声を聞いて初めて、人が迎え入れられる。途中には、大きな雪塊があった。


プロローグ

 7月13日土曜日、渓声会メンバーのいばらさん、ミミズ仙人さんと、新潟・魚野川水系の支流源流部に行って来ました。
 今回は、いばらさんが毎年行く場所でして、しかもなんと!! 会社の保養所のリゾートマンションが休憩所として使えるという、なんともリッチな釣行となりました。土曜の夜私の自宅〜仙人さん〜いばらさんを順調にひろい、あとは一路関越道を湯沢まで一走り。ICのすぐそば、最高のロケーションにマンションがありまして、そこで小宴会&仮眠です。

土曜日は、朝3:30起床予定が、ついつい眠さに負けて4:00過ぎに出発。「な〜に、入渓点まで30分くらいですから...」と余裕のいばらさんの言葉にすこし安心したが、それでもちょっと飛ばしてダートの林道にはいる。。「これは、今朝だね...」ダートには、まだ新しい轍がはっきりとわかる。少しの不安が、失望へと変わった。ゲートにつくと、ななんと。すでに車止めには4台の車が入っている。そのうち1台は2人の釣り人が、準備をしている。1台は、すでに出発した釣りの車らしい。「う〜ん、あの30分が命取りだったのね〜」と、ちょっと悔やまれた。さて、ほかの2台は...というと、実はこれが漁協の監視員の兄ちゃんたちだった。さすが土曜日だけあって、ここで検問はって現場売りの釣り券売ろうという魂胆だ。

準備はばっちり 足元を固め、いよいよ出発...

「先の人たちは、どこに入ったんでしょうねぇ...(我々)」
「この(最初の車の)人は、2人でここから入っていったよ。いま準備している2人は、滝2つ目から入るそーだよ(漁協)」

 漁協の2人は親切だ。3組のパーティーの沢割までしてくれたのはよかったが、滝2つ目といえば、我々と同じ釣り開始ポイントだ。

「どうしましょう、下に行きますか...」
「まあ、せっかく来たんだから、上がいいですね。あの2人が上がって30分くらいしたら、追いかけていきましょう...」いばらさん、長者の風がある。

ということで、もうこれ以上ひとも来ないでしょう(来ても車3台見たら、帰るはず...)と決め込んで、しばらくのんびりしてから出発することに決定。これが、結果的にあたりだったのは、ラッキーとしか言いようがありませんでしたが...、それは後ほど。
 現場売り釣り券を値切って(!!)買い、しかも待ってる時間に、最近の状況やポイントなどをしっかり聞き出して、準備は万端。「そろそろ行きましょうか」と、足回りをがっちり固めてブッシュにはいる。



つりびといずこ....

遡行5:00AM。冷気の中、冷たい川床を歩く


「....おかしいねぇ、さっき入った人、ここを通っていないよ。」
いばらさんが首をかしげた。先行者の足跡が全くない。どう見ても、道(らしきもの)はここしかないはずだ。
「そういえば、漁協に入渓路を聞いていましたよ。だいたい一人はチノパンだったし、あの格好でこの道行けますかねぇ...」
ブッシュをかき分けながら、そんな話題で結構盛り上がる。
たしかに、ここは入渓路が難しい。知らない人は絶対にわかりそうもない。いばらさんでさえ、最初通り過ぎてしまった。
「多分彼らは、わからないでこの林道まっすぐ行っちゃったんじゃないの...」

 先行者の形跡が無い... あの2人はどこに行ったのだろう...? 謎が謎を呼ぶ越後の渓 遡行

ちょっと気の毒に思いつつ、反面、そうであれば滝上は予定通り一番乗りだ...、という悪魔のささやきを脳裏に聞きつつ、ただひたすら歩きました。
 そうこうするうち、最初にゲートから入った2人が立ち込んで釣っているところに追いついきました。やはり、チノパン2人組は道に迷ったらしい。挨拶をかわし、滝2つ上にいくので、追い越させてほしいむね伝える。とくに問題なく、OKしてもらえた。
「(釣果は)どうですか??」
たずねると、25cmクラスが何尾か上がっているという。これは上流は期待できますね、と胸躍らせ、遡行スピードは自ずと上がる。

もっとも、スピードがあがったのはいばらさんと仙人さんで、私は相変わらず、ドテドテとバランスの悪い歩きで、ときどきお2人に休憩時間を提供しながらの遡行である。何しろ酒量・食う量については誰にも負けない自信があるが、運動量だけは決定的に不足している。それが、泥坂高巻きと藪こぎ、そして昨夜の夕立で増水気味の川通しの繰り返し。水は夏とは思えない冷たさで、腰まで浸かると息が止まる。教習所で言うならば、「見通しのきかない交差点にあるクランクに縦列駐車」みたいな、結構しびれる遡行だ。お2人は、「初級レベルよ、ダイジダイジ」と余裕でスタスタ....。要するに、絶対的な基礎体力不足だ。頭からコップで水をかけているかのように、汗をドバドバ流しながらの遡行は続く。


川煙の立つ渓で、期待の第一投.....

「ここが最後の難関です。」
 情けないことに、限界に近いところまで達していた私の耳に、しかしそれはあまり重要な言葉ではなありませんでした。壁に近い泥坂を、木々を手がかりにズルズルドスンと降り立つと、そこがほんとに、ようやく、やっと釣り開始のポイントでした。仙人さんは、早速第一投。降りたところはゴルジュのすぐ上、絶好の落ち込みポイントです。歩くこと1時間ちょっと、待ちに待った場所だったのですが... 私はしばらく呆然と腰を下ろし、ただボーッすることに熱中していました。仙人さんの釣り姿が、なにか絵画でも見ているような、すごく現実味のない世界に写っていましたが、それだけ放心状態だったのでしょう。

第一投仙人氏第一投。霊気を感じる。


 この景色、日常生活ではなかなかみれません... 遡行

 しばらく阿呆のようにじっとしていた私は、それでもようやく心身共に回復し、釣り支度を整えて、2人とともに川通しで釣りながらの遡行開始。ブナ林の新緑につつまれ、朝の冷気に息が白い。水はやはり冷たいが、それ以上に谷底の気温が低くなっているのか、上流は見通せる限り、特殊効果のように川煙が立っている。なんとも幻想的な世界です。1時間ほど釣り上がったでしょうか、それまでさっぱりあたりがなかったが、ようやく期待の初ヒット。順繰りで一段下にいた仙人さんに「きましたよーっ」と叫びつつ、チョウチンにプランブランとぶら下げていた7寸くらいの初岩魚ちゃんは、「あっ」と思ったら、ナチュラルリリース
 でも、3人とも魚がいることがわかって一安心。「ここからだね〜」、期待がにわかにふくらむ。こうなると、釣り人はマインドチェンジが早い。仙人さんが最初のキャッチを決める。いきなり、9寸近い良型です。

岩魚9寸仙人氏にきた9寸。体高はないが、引きがすごい。7寸程度でも、竿をのされるときがある。

 いそうなポイントでは必ずあたりがでる。アベレージは、7寸〜8寸が半々というところ。仙人さんは、「尺をばらした〜っ.......」と悔しがる場面も。聞けば、駆け上がりまで完全にあげて、あとはすくうだけ、というところで、痛恨のバラシだったそうです。頭が見事に大きく、魚体は輝いていたということ。「今日は、予感がする。尺でるまでは、キープ断ちだっ」と、なんとも剛毅に、7寸8寸を釣ってはリリースの繰り返し。わたしといばらさんも、7寸クラスの連釣を楽しみつつ、遡行を続ける。

   
かかった!!岩魚岩魚




 
大淵 大淵でダブルヒットを狙う?


岩魚9寸 こんな岩魚ちゃんたちが、次々に遊んでくれちゃう。




9寸 私にも川の恵みが与えられた。ひれがきれいな9寸。スレンダーな魚体が印象的だ。




「仙人さん、ダイジですよ、この上の最後の滝下には、二尺がいますから。」
 なにゅ〜ん!! に、にしゃく〜?? 信じられないが、いばらさんは実際に何回も、その「潜水艦」を目撃しているそうです。俄然意欲がでてきた我々は、とうとう最後の滝の手前に到着。ところで、一抹の不安は、3人があることに気づいたことです。例の尺バラシがあった前後で、新しい足跡がぽつぽつと現れ始めたのです。「まさか、チノパン2人組、やっぱりこの先を先行しているのだろうか...」 いばらさん曰く「ひとは見かけによらないからねぇ...(ボソ)」


9寸 「この先の滝壺には、二尺がいますよ、二尺....  ふっふっふっふっ....」いばら氏が不敵に笑った。




始末  〜リベンジならず、しかし再会を誓う〜

 ここで今回の2回目の謎の出来事が発生。先ほど追い抜いた2人の釣り人が、上流から忽然と現れた。
「あれれ、たしかさっきの...」と思って声を掛けると、どうやら私たちとは違う高巻きルートで、さらに先行していた模様。ただ、ここまでの釣果を考えると、我々の最終目的地(2番目の滝)まで、ほとんど釣らなかったらしい。
聞くと、その滝のさらに上を狙ったそうだったが、釣果はいまいちだったそうで、一人はザックに大量の山ウドを詰め込んでいた。「では」といって、瞬く間に川を下っていった2人に、「いったいどこから越していったのでしょう...」という感じで、いつまでも不思議な視線を送っていました。
さらに気になるのは、もう一組の2人。気になっていた足跡は、滝から現れた2人のものだったようだ。この2人も、「後一組いるはずなんだけどねぇ」と不思議がっている。
やはりもう一組は、結局入渓できなくて、あきらめて返ってしまったのだろう。(後ほど車止めに着いたとき、思った通り彼らの車は無かった...)
 仙人氏の尺への執念は強い。ここぞという場所は必ず狙うが... 執念



 時計は午後1時。自然の神様は、さすがにすべてを恵んではくれないようです。こんなに楽しんだのだから、これくらいで満足しなさい、ということなのでしょうか.... 問題の滝下は、増水のため、核心ポイントには近づけず。その手前の深トロで、いままで楽しませてくれた元気な岩魚ちゃんを最後に何尾かあげて、納竿となりました。車止めへ向かう水線通しの帰りがけ、「ここだ」といって、仙人さんが尺バラシポイントでほんとに最後のリベンジ。しかしながら、輝く魚体は、二度目はお相手をしてくれなかったようです。15分ほど粘ったでしょうか、残念そうに、だけどさっぱりと、「さぁ、帰りましょう。」

記念 3人で記念写真。アーモンドチョコをもってなぜかご機嫌のいばら氏。


 この豊かな山と渓にそれぞれが感謝と再び訪れることを想いつつ、また、3人で再会を誓いつつ、豊饒の流れを後にしたのです。

またこよう...





追伸.....今回は、私の経験&体力不足で、お2人にはいろいろ気を遣っていただきました。ご案内役に徹していただいたいばらさん、ヘツリ方をその都度アドバイスしていただいた仙人さんに、改めて感謝いたします。帰りに食った「あかさか屋」のらーめん、旨かったですねっ。
 ちなみに、今回は「泳ぎ」は4回(内ダイビング1回)ですみました。携帯は、未だにウンともスンともいいません。ほっほっほっ。( ̄ー ̄;)


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