第42夜 sextary(ヒショ)

  キャリアウーマンとその上司とのフリンピックが、やたらと盛んなご時世であ〜る。家のローンも残っているお父さんにとって、不倫は一歩あやまれば、妻子ばかりか職場まで失いかねない。…てなことは、わかっちゃいるけど、やめられないのがフリンピックなんだよな。
  どんどん深みにはまり込んでいく、42キロ+α のフルフリンマラソン。
  そうゆーわけで相手の選択が大切になってくる。相手を選ぶなら「学歴が高くって、気の強い性格で、自宅通勤を狙え」と男たちの間で、ひそかに語り継がれている。一人暮らしのOLなんかの場合、男のペースにあわせてくるので、避けたほうが賢明なんだそうだ。

  ところで、職場内で一番グジャグジャになりやすい不倫はというと、これはもう重役とキャリアウーマンの secretary「秘書」じゃないだろうか。secretary はセックス(sex)やセクション(section)と同じ仲間で、語根の sec には「切」「離」という意味がある。
  というのも、職場の周辺はいつだって、walls have ears(壁に耳あり)状態。秘書はボスの仕事が他人に分からないように切り離してしてしまうことが、大事な使命でなのである。
  もっとも、仕事上の秘密の重さもさることながら、secretary じゃなかった、sextary はボスとの間に生じるヒミツの重さにも、じ〜っと耐えなければならないようだ。

  米国民主党の実力者で、下院の行政委員長などを歴任したウェイン・ヘイズ議員の秘書だったエリザベス・レイという女性が、1976年に『ワシントン特別給与』という告発本を出版している。
  「急いで夕食をすませると、ホテルのベッドへ直行、彼は4時間も私を求めつづけ、何度私がクライマックスへ達するか、記録するのがクセでした」「私の仕事は彼(ヘイズ議員)のセックスの相手をすることだけでした」。
  レイの暴露は、一大センセーションを巻き起こし、議員たちのセックス・スキャンダルがつぎつぎと明るみにだされることとなった。かくて引退した議員は、50人を越えるたのである。ちなみに、レイの特別給与は当時の金額にして420万円だった。

  secretary が Secretary と大文字ではじまれば、米国では閣僚の「長官」を指す。早い話が長官という地位は、大統領の秘書ってわけ。だから大統領はいつだって、長官の首を切ることができるのだ。
  ついでに書類などは、秘密度の高いものから、top secret「最高機密」、secret「極秘事項」、confidential「機密事項」、restricted「社外秘」にクラス分けされている。

  キャリアに戻そう。
  carreer は「経験」のことだが、本来は車の轍(わだち)という意味だった。だから、語根に car を持つ単語は、carry「運ぶ」、carpentur「大工」など車と関係が深い。大工って元々2輪馬車を作るのが主な仕事だったんです。caricature「風刺」も車に荷物を積みすぎたようすが滑稽なことからできた。
  carry a flag を文字通りに訳せば「旗を持ち運ぶ」なんだけど、
  Shirley is out of commission this week because she's carrying a flag.(シャーリーは今週は生理中。使いものにならないんだよ)
ということになっちゃう。
  carry-over「繰り越し」、carrier「保菌者」、careerism「立身出世主義」、careerist「野心家」、cart「荷馬車」「カート」、cargo「船荷」、carousel「回転木馬」、caravan「隊商」、caricaturist「漫画家」…。

  car は、char にも変化して、chariot「戦車」、charge「詰める」(車に荷を積むこと)などの単語にもなっている。接頭語の dis-「離」がくっいた discharege なら「荷を降ろす」「発射する」「除隊する」となるが、スケベ単語の世界では「射精する」「排泄する」というふうに使われる。
  I had no luck picking up a chick at the dance and finally was forced into dishonorable discharge.(ダンスパーティーじゃ、ついてなくってさ。自分でバンバンしちゃった)

  そして迎えた carsex「カーセックス」の時代。
  クルマってのはアッという間にひと気のないところまで、carrying してくれ、かなりの秘密も保たれる。さっそくリクライニング・シートを倒して、carriage「身のこなし」も巧みにセックスをエンジョイするのはいいんだけれど、興奮のあまりハデにやりすぎて警察に通報されると、6カ月以下の懲役刑をくらうこともある。
  パトカーや囚人護送車(paddy wagon)の厄介になったあげく、カカァーにこっぴどく、どやされるオマケつき。気をつけないと。フリンピックのフルマラソンだって、途中でけっつまずき、こんがらかり、突如として包丁で切りつけられたりして…、まさに「シニイク(かく)ゴ」(42・195)なのよ。これが、皮肉にもオトコの厄年の[42]歳だったりするんですな。

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