第44夜 semen(精液)

  難解そうにみえる単語だけど、fertilization で「受精」の意味になるんだ。語根の fer には「運」のニュアンスがあり、精子が子宮内に運び込まれ、卵子に tile「張りつく」、つまり受精ってわけ。
  fertile egg「受精卵」、fertility drug「排卵誘発剤」、fertility pill「排卵誘発避妊錠」、fertility symbol「男根」…。
  綴りの中に fer がまじっている単語って、けっこうあるぞ。
  ferry boat はこちら側の岸から向こう側の岸へと人を運ぶ「連絡船」のこと。conference は一緒に(con-)問題を持ち寄るんで「相談」、difference は別々(di-)持ち込むから「相違」、inference は心の中に(in-)いろんなデータを運び込むんで「推論」するっきゃない。
  offer「申し出る」なら人の前に(ob-)足を運んでクカクシカジカ。preference「優先権」にしても前もって(pre-)運び込んでおけばおのずと優先権が生じてくるじゃん。reference だと元(re-)に運び戻す感じで「照会」(身元の照会)、sufferance は下になって(sub-)運ぶことから「忍耐力」、transference はあちら側からこちら側に運ぶ意味で「譲渡」ってわけ。

  話かわって、sperm,semen は「精液」のこと。
  ドイツ語だとザーメン(Samen)。昔から日本じゃザーメンのほうが馴染みが深いけれど、これらの単語のルーツは、seed「種」、seminar「苗床」「保育所」「ゼミナール」、sow「蒔く」と同じ。season「季節」だって、この種は春、あの種は秋ってなふうに、四季は種蒔きの目安になっているわけ。
  fertilization は「受精」だけど、そんなわけで、insemination なら「授精」「種蒔き」の意味になる。artificial insemination だと、いわゆるひとつの「人工授精」ってやつだ。

  WHO(世界保健機構)の報告によると、wimpy sperm「無気力精子」がやったら増えているそうな。精子ってのは1ccの中に約5000万個以上いることが正常とされている。そのうち50%から60%が卵子めがけ、膣から子宮までの約8a、プラス子宮から卵管までの12aの距離を突進する。そうして、メデタシご懐妊となる。
  ところが、精子の数が正常値を下まわる傾向がでてきているうえに、せっかく放出されても、ウジウジいじけちゃって、ゴールめがけて進まない無気力精子が多くなっているらしい。
  一方、苗床のほうだって結婚しないかも症候群、ダブルインカム・ノーキッズ主義の傾向が強いから、このままだと日本でも出生率は、一大危機をむかえなければならないことになる。もちろん、生めない体も増えている。

  というわけで、世の中、代理母(surrogate mother)や人口受精が脚光を浴びることになる。もっとも代理母の役目が果たせるのは、これまでのデータだとシシ奮迅しても[44]歳が限度なんだって。一方、人口受精で生まれてくる子供は当初、8割が男の子という問題をかかえていた。

  その理由をさぐる前に、精子の染色体には、「X」と「Y」の2種類があり、卵子は「X」だけだということを頭に入れておこう。精子が「X」なら卵子「X」と結合して女の子、精子が「Y」なら男の子ができるってわけだ。
  人口受精がはじまったころは、試験管の精子はうわずみだけが使用されていた。「Y」の精子は「X」の精子よりやや軽いため、「Y」の精子を注入してしまう率が高かったのである。でもって、オチンチンのくっついた子供ばかりができちゃった。

  「X」の精子ってのはアルカリ性(alkali)にきわめて弱いということを利用して、男の子を産みわける方法だってある。
  女性の膣内ってのは雑菌が増えないように、いつも酸性(acid)に保たれている。ところが、子宮内はアルカリ性で、しかもオルガスムスに達したときは、さらに「これでもか!」とばかりにアルカリ性の粘液を分泌しちゃう。このとき、一気に射精すれば「Y」の精子だけが生き残り、卵子「X」と結合して男の子が産まれる確立がグ〜ンと高くなる。
  なんだって? それじゃ、オカマはどうやって産みわけるってか。4月4日は「オカマの節句」にでも種付けしますか。

  acid の ac は「鋭」を表す。acute「(感覚が)鋭い」「(痛みが)激しい」「(事態が)深刻な」、語頭の母音[a]が消滅した cute なら「キュート」「鋭敏な」となる。
  acacia「アカシア」だってこの仲間。なぜってアカシアには刺があるじゃん。acetaldhyde「アセトアルデヒド」、acetate「アセテート」、aceton「アセトン」、acetylene「アセチレン」などは、いずれも酸性(酢酸が原料)ということがわかる。

  そうそう、妊娠したかどうかってのは女性のオシッコで判別できるようになった。
  アルカリ性か酸性かを調べるリトマス試験紙みたいなもんで、理屈はこうだ。卵巣の働きを活発にさせるのが性腺刺激ホルモン。ところがアラ不思議、fertilization と同時に、ピタリこのホルモンを分泌しなくなる。分泌しているときは大半がオシッコにまじって排泄されるので、ホルモンが分泌しているか(プラス)、分泌していないか(マイナス)を調べれば、こたえイッパツってわけだ。

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