第45夜 bidet(ビデ)

  仏語で「子馬」という意味のビデ(bidet)は「女性用局部洗浄器」のこと。子馬にまたがる要領で腰掛けると、細い管からお水がチャ〜ッと噴き出し、膣の中を洗浄してくれる仕掛けだ。ポータブル用は、douche bag とも言う。
  新兵器ビデは19世紀末に登場した。もっとも、膣の中を洗えば避妊ができるという理屈は、ビデが考案される前から分かっていたようで、それまではお化け浣腸みたいな器具を使っていた。これをドイツ語でもって、Irrigator(イルリガートル)っていう。この単語を分解してみると、ir-(中を)+ rigare(洗う)ってことになる。
  それにしても女性用局部洗浄器を「子馬」とは、よく名付けたものだ。ところがですよ、調べてみると、中国で「馬児」(マールー)って書くと、ビデの姉妹みたいな「オマル」のこと(日本語のオマルもこの中国語こからきた)。

  そんなわけで、話はお馬さんのこと。
  英語だと子馬はfoal,colt,filly,foal などに分類できる。foal は「離乳するまでの子馬」、colt は「離乳してから4歳までの雄の子馬」、filly は「離乳してから4歳までの雌の子馬」。
  pony は「小型馬」のことだが、映画『リオ・ブラボー』の主題歌『Rifle and Pony』では「愛馬」と訳されている。ディーン・マーティンとリッキー・ネルソンのデュオ、懐かしいなァ。
  もうすこし馬に関する単語を並べてみと、bronco「気の荒い馬」、gelding 「去勢馬」、hack「最盛期を過ぎた馬」、mare「雌馬」、stallion 「種馬」…。ちなみに、nightmare(夜の雌馬)で「悪夢」となる。元々、mare に「悪霊」「悪魔」という意味があったからだ。
  I was caught horsing around with my secretary in the office.(事務所で秘書とウマくやているところ、見つけられちゃってね)
  horese around(馬を乗り回す)で「性交する」、horseshit(馬糞)で「でたらめ」「たわごと」ってことになる。B.S.「牛糞」(bullshit)でも同じ意味。

  ライフルがでたついでに、回転式6連発自動拳銃(リボルバー)の「コルト」ってのは、考案者の Samuel Colt(1814-62)の名がつけられている。「子馬」と勘違いしちゃいけない。ガンマンたちの腰のピストルは大半がこのコルト製で、なかには超殺傷力のある45口径(100分の45インチ)を振りまわす無頼漢もいたようだ。

  ところで、欧州のホテルならどこでも、四の五のいわずに備え付けているビデだけど、米国ではあまり人気がない。普及していないのはナゼ?
  アチラで避妊の一番はなんたって pill「ピル」。次いで sterilization「避妊手術」、condom「コンドーム」、sithdrawl「腓外射精」、diaphragm「ペッサリー」、IUD「避妊リング」、douche「膣洗浄」の順。ビデの使用はごくわずか。愛の証しを水に流したくないっていうことか。
  ここらでちょいと、diaphragm「ペッサリー」にくっいている接頭語 dia- にふれておこう。
  dia-は「隔」「通」「乱」などを表しおり、diaphragm なら、flame(炎)をばっちり隔てる「隔壁」のこと。さらに派生して「ペッサリー」という意味も持つようになった。贅沢病の diabetes「糖尿病」はdia「通」と bet「間」に解体できる。つまり体内の水分がすぐに尿となって通過してしまい、しょっちゅう渇きを訴える症状が顕著なことから名付けられた。

  糖尿病にかかるとインポになるという話をよく聞くが、これは単なる俗説にすぎないようだ。糖尿病がかなり進み、神経障害の合併症を起こしたときにインポになることがあるというだけのこと。「もうアッチの方はからっきしダメ。なんたって、糖尿病だからね」と決め込んでしまうほうが、よっぽど体にはよくないようだ。

   語根の gn「知」と、dia「乱」が一緒になった diagnosis「診断」は、体のなかで乱調をきたしているところを検知すること。diaper「生理用ナプキン」はパーフェクト(per)に経血をシャッタアウトしてくれる。赤ん坊の使い捨て「紙おむつ」もダイヤパー。ウンチもオシッコも外へもれないようになっている。
  My husband refuses to buy me tampon when he goes shopping.(主人たら、買い物にでかけてもタンポンだけは買ってきてくれないの)
  IUD「避妊リング」は、intra-uterine device の略語で、つまり、uterine「子宮」の intra「内豆」の device「装置」のことだ。IUCD(intra-uterinecontraceptive device)でも同じ。

  しかし、避妊の努力もむなしくデキちゃうことだってある。なんたって、精子包囲網をすんなりかいくぐってしまう大胆不敵な精虫だっておる。こうなったらしかたがない。あきらめて胎教に励んだほうがよろしいようですな。
  2人の妊産婦が大きくふくらんだおなかをさすりながら立ち話。
  「あたし、この子をプロ野球選手にするつもりなの」「マジで? そうか、なにか胎教やっているんだ」「毎晩、ダンナのバットとタマを握ってるもん」「あ〜ら、それならうちの子はアーティストだわ」「…」「コンドームはカラー以外使わないの」
  2人とも見栄はっちゃって。とくにコンドームなんか当分の間、必要ないはずなのに、。色事師の子供ができちゃったらどうする! ま、この伝でいえば、妊娠後もず〜とビデを使ってりゃ、生まれてくるベビーの将来は騎手ってか。horseshit「たわごと」でした。

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