第六十三夜 swapping(スワッピング)

 日本初のスワッピング紙『全日本交際新聞』(タイプ印刷12頁、現在『ホーム・トーク』)が誕生したのは1972(昭和47年)のこと。ミネラル魚田、創刊号を『ホーム・トーク』編集長から見せてもらったんだけど、例えばですね…、「私たちはセ歳とケ歳の仲の良い夫婦です。妻は浅丘ルリ子似、セックスに強い探求心と刺激を求めています」 ってな具合で、掲載されているメッセージはすご〜く真面目印象。
 ところで、swapping「スワッピング」の swap には「交換」という意味がある。swapmeet なら「不用品交換市」のこと。「ご家庭内で不要になった古新聞、古雑誌」とチリ紙交換の軽トラックが町内を巡りはじめたころと、スワッピング紙の創刊は一致するところが、けっこう面白い。
 「ご家庭内で不要になった古亭主、古女房」…、ン?
 それじゃ、いったいどんなタイプの夫婦がスワッピングを実行しているのだろうか。ある調査では「一般的には週4回以上性交する夫婦は16%であるのに対し、スワッピング組は、55%が週4回以上の交わりがある」として、「愛好者はセックス以外になんの趣味も持たないスキモノ」と一方的に決めつけている。でも、なんか偏見がありゃしないか、この調査って?
 もっとも、スワッピングってのは、そう目新しい性風俗ではない。高橋虫麻呂といえば万葉の歌人だけど、この虫麻呂の歌に、
  他妻ひとづまに 吾あも交らむ
  吾が妻も 他ひとに言問ことどへ
という一節がある。「おれも人妻と寝ることにするから、おまえさんもだれか見つけなよ」ってな意味で、まさにスワッピンという風俗は、万葉の時代からあったとうい証拠なのだ。
 歌垣といってグループセックスもお盛んだったし、江戸時代になると真言立川派という当時の新興宗教団体が、寺院内でハチャメチャな乱行パーティーをやらかし信者を拡張していった。
 Don't swpped horses in the midstream.
 (流れの途中で馬を乗りかえるな)
 つまり「危機にあっては現状維持」という諺だが、これをパロってみると、
 Don't swapped wemen at the midnight.
 やっぱり、夜中に女は乗りかえないほうがよろしいようで…。
 スラングで circus love は「グループセックス」「乱行」のことを指す。サーカス(circus)には「バカ騒ぎ」という意味があり、乱行パーティーが大騒ぎになることからできた。circle jerk(円形の動き)なら「男が輪になりマスをかく」ことだ。
 語根の circ は「周囲」。
 circle「円」、circulation「循環」、circumcision「包茎切除手術」、circuit「サーキット」、encircle「取り巻く」、semicircle「半円」…。cycle もこの仲間で「輪」を表し、cycle「周波」、cyclone「温帯性低気圧」、cyclotron「原子核破壊装置」、encyclopedia「百科事典」などの単語がみつかるはずだ。
 swing の本来の意味は「揺り動かす」だが、こちらにも「スワッピング」「グループセックス」という意味がある。
 Lyle swings a lot,although he has a nice wife.
 (ラルフにはすてきな奥さんがいるのに、多くの女性とセックスをたのしんじゃったりして…)
 まぁ、スワッピングは倦怠期の夫婦にとって、夫婦生活を長続きさせるためのひとつの手段ではあるが…。米国のある結婚カウンセラーは、スワッピングよりも家庭内寝室別居を真剣になってすすめている。
 「過去、夫婦は一体性重視の倫理観が支配してきた。しかし、このことにとらわれたばかりにプライバシーを損ない続けている」と前置き。「寝室をわければ、配偶者のイビキ(snore)や歯ぎしり(gnashing one's teeth)に悩まされることもなく、就寝時間からくる問題も解決する。おまけにセックスもフレッシュになるはずだ」と主張する。
 スワッピングからどんどん遠のいていくが、snore「イビキ」、sneeze「くしゃみ」、sniff「クンクンかぐ」など、sn- で始まる単語は、鼻が奏でる音と大いに関係がある。
 snarl「うなる」、sneer「鼻で笑う」、snort「(馬が)鼻をならす」、snuff「鼻から吸う」…。いびきは、drive one's pigs to market(豚を市場に追い立てていく)という言い方もある。アチラのいびきは、oink-oink と豚の鳴き声に聞こえるらしい。
 寝室では今まさに亭主の歯ぎしりと、豚…じゃなかった女房のイビキとがスワッピングごっこ。さらに寝言(talking in one's sleep)も加わっているのに2人は目を覚ますこともなく、眠りをむさぼっていたとしたら、これぞ誰も踏み込むことのできない真の夫婦だとおもうのだけど…。いかがなもんだろう。
 もっとも、エリザベス・テーラーは[63]歳で8回目の離婚。なんとその原因は豚のようにムザンに太りすぎた彼女のイビキだったそうだ。懲りないリズの次の結婚は、一体いつになるのやら?

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