第六十六夜 carnal desire(性欲)

 1944年は6月6日のロクロク並び。連合軍はこの日を『Dデー』と名付けた。フランスをナチスから解放しちゃおうってわけで、午前6時半にノルマンディー上陸作戦を開始したのであ〜る。
 そのノルマンディーには、その昔バイキングの末裔(ノルマン人)が住み着いていた。連中、これまたロクロク並びの1066年に、大挙して英国に殴り込みをかけ、あっという間にノルマン王朝を打ち立てちゃう。
 日本も戦争に負けたあと、進駐軍がドヤドヤッとやってきて、その後、やたらとカタカナ文字が氾濫したじゃん。同じように仏語の方言がドド〜ッとまぎれ込んだのであ〜る。
 その証拠に…、英和、仏和辞典を一度つきあわせてごらん。ちょいと長めの単語なら、たいがい綴りも意味もそっくりだ。例えば、carnal「肉体」。やはりフランス産単語のひとつで、語根の carn は「肉」と大いに関係があ〜る。
 欧州原産といわれる carnation「カーネーション」も花の色が元々、肉色をしていたから。carnival「謝肉祭」にしたって、肉だちをする直前のお祭り騒ぎのことだ。もっともリオのカーニバルじゃ、騒ぎに乗じて豊満な肉体がつぎつぎと食べられちゃうけど。
 まだあるぞ。cannibal なら「人食い人種」を指す。オランダ人の恋人を食べちゃった日本人がいたが、cannibalism だと「食人風習」のことだ。
 ついでに、carnal acquaintance(面識)、carnal connection(関係)、carnalcopulation(結合)、carnal engagement(結婚)、carnal enjoyment(おたのしみ)、carnal intercourse(交際)、carnal knowledge(知識)はいずれも「セックス」「性交」の意味になる。
 もっとも、いまじゃ、carnal を省略して、copulation,intercourse でコトたりる時代だ。ついでだから、carnal desire(欲望)なら「性欲」、carnal abuse(悪用、乱用)なら、法律用語の「強制猥褻」のこと。
 フィジーでは20世紀の初めまで、人間の肉を食べてたらしい。煮る、焼く、蒸すの料理方法があってさ、一番うまいのは子供の肉、ついで女性の肉だと伝えられている。それも肩からヒジまでと太モモが上等なんだと。
 人間が人間を食べる。昔はごく日常的な習慣のようだった。
 中国4000年の歴史でも人間を食べた話は跡を絶たない。孔子(前551頃-前479)の弟子に子路という男がおった。この男、塩辛にされて食べられてしまったとあの『論語』にちゃんと書いてある。
 ちなみに、犬の肉の味って毛の色によって、「一赤、二黒、三斑ぶち、四白」とランキング。赤犬の肉が一番とされている。一方、お隣の韓国じゃ、「一黒、二赤、三斑…」と順番が入れかわる。
 なんだって? 男性自身だってメラニン色素が沈殿した、黒いのが美味しいってか。そういえば、肉棒の陰水焼けってのは、カクカクたる武勲をかさねた証拠だもんな。うまいはずだわな。
 肉にこだわっている。
 『酒池肉林』は紀元前11世紀の殷の紂王(ちゅうおう)が催した『乱痴気騒ぎ』からできた熟語だ。さて、この≪肉≫は肉体(女体)のことか、それとも食べる肉のことか? 後漢の歴史家、司馬遷の『史記』には「酒をもって池となし肉を懸けて林となす」とある。やはり食べる肉で、ピンポ〜ン。  excrescence なら「贅肉」のことだ。一見、手ごわそうな単語にみえるけど、語根の cre は「成」「増」を表しており、これに接頭語 ex-「外」がドッキングしただけ。お肉がブヨ〜ンとはみだしている感じがなんとなく掴めるだろう。
 語根に cre をもつ単語を掘り下げてみよう。
 crescent は「三日月」のこと。月はだんだんと成長して、やがて満月となる。仏語だと「三日月」は croissant と綴りクロワッサンと発音する。朝食に出てくるクロワッサンが三日月型をしている理由もこれでおわかり?
  三日月は痩せるはずだよありゃ闇上がり
 で、もう一度ノルマンディーの『史上最大の作戦』のこと。
 連合軍はなぜに、1944年6月6日の作戦名を『Dデー』と名付けたのか?
 この日の月がD形、つまり兵隊さんたちは上弦の月明かりをたよりにオマハ海岸に上陸していったとミネラル魚田はにらんでいる。この日が三日月だったら『Cデー』、満月だったら『Oデー』ってね。
 再び cre のこと。recruit「雇う」という行為は、再び(re-)人を増やすることなのだ。贅肉と似た綴りの excrement「排泄」で、体の外に(ex-)こんもり増えたイメージがわいてくる。procreation「出産」は地球の人口が完全に(pro-)一人増えたというニュアンスだ。
 仏語でも発音は別にして、excr〓ment「排泄」、procr〓ation「出産」と綴る。ほらねッ、冒頭でもいった通り、英語はかなり仏語の影響を受けているだろう。それはそうとしとて、前門の営み『出産』と後門の…、いや肛門の営み『排泄』が、ごくごく緊密なケツ縁関係にあるなんて、アナ不思議ではある。そうそう、肛門の営みアナルセックスをアチラじゃ『66』『99』と言ったりもする。

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