|
ミネラル魚田の世代って、明治元年つまり西暦1868年を「いっぱし(ヨー)ロッパの仲間入り」なんて暗記したもんだけれど、それから100年たった1968年は、米国が『ポルノの文明開化』を迎えた年なんである。 というのも…。 ジョン・クレランドの『ファニー・ヒルの思いで』って読んだことありますか?14歳の女の子のセックス遍歴で、この本が出版されたのは1748年のこと。ところがたたちまち発禁処分の扱いをうけてしまう。それから240年間スッタモンダが続く。やっと発禁解除になったのが19〓年ってわけだ。 ニューヨークの巡回裁判所の判事イワク。「人間のいかなる身体の部分も猥褻ではない」。ポルノ文明の開化を迎えた米国は、堰を切ったようにセックス産業が氾濫していくことになる。 もっとも、勘違いしては困る。いまでも大半の州が18歳未満の pornshop「ポルノショップ」への立ち入りを禁じているのも事実だ。ちなみに、pornoshop でなく pornshop と綴るのは pawnshop「質屋」の韻を踏んだためらしい。 それじゃ、ポルノって1968年まで存在しなかったのかというとさにあらず。南北戦争(1861-65)が終わったころから、盛んに出版されていた。このアメリカン・ポルノに欠かせないのが、fellatio,cunnilingus などの性器接吻なんですな。というのもアチラさんは「セックスはあくまで子孫繁栄」というピューリタンの思想がやたら強い。この厳しいタブーが反動となって、ナマナマしいポルノが生み出されたってわけだ。 フェラチオは、ラテン語の fellare「吸う」が語源になっている。 Go down on me,will you?(フェラってよ) 「下方に向かう」が「フェラチオる」「尺八る」の意味になる。イメージできるよね。この作業のスラングには、B.J.(blow job = 吹く仕事)、deep throat(深い喉)、mouth jpb(お口の仕事)、oral service(お口の奉仕)、spray thetonsile(扁桃腺に噴霧)、sucky-fucky (なめなめ)…、でも通じる。 pornography「ポルノグラフィ」「ポルノ」は、フランス語からの借用で、もともと、porno「娼婦」+ graphy「書いたもの」→「娼婦の教科書」という意味だった。もっとも、いまでは文学ばかりでなく、スケベ書画、スケベ写真、スケベ映画のこともひっくるめて指すようになっている。 ついでに、pornography の綴りを構成する接尾語の -graph「書」に、すこしこだわってみる。 autograph「署名」、biography「自伝」、diagram「列車ダイヤ」、telegram「電報」、phonograph「蓄音機」、photograph「写真」、program「プログラム」…。羅列するときりがない。有名人にサインをおねだるときだって、signature ではなく autograph って言わないと、チンプンカンプンなことになる。 話かわってわが国では、戦後ポルノを『カストリ雑誌』と呼んでいた。カストリ焼酎からできた隠語で、3号(三合)でつぶれる(酔いつぶれる)っていう洒落なんですな。 日活が一連のロマン・ポルノの製作を始めたは昭和46年(1971)秋のこと。第1作は白川和子の『団地妻・昼下がりの情事』だったが、まだ、このころは性についてはヒソヒソと語られた時代で、内容もいわゆるソフト・コア。 これに対して、性器をもろに見せてくれるポルノを hard-core「ハードコア」という。core はラテン語の cor「心臓」が語源で「核」の意味がある。ちなみに、コンピュータの hardware「ハードウェア」、software「ソフトウェア」などの接尾語、 -ware は「品」「器」の意味。 chainaware「陶磁器」、glas-sware「ガラス製品」、スプーンやフォークなどのsilverware「銀製品」、tableware「食器」…。 core と一字違いの cure だと「手入れ」「治療」となる。cureall「万能薬」、curless「不治の」、manicure「爪の手入れ」…。curio「骨董品」も親類筋の単語で、手入れを怠ると価値がなくなるってか。 治療というのは目を皿のようにして見守ることなので、ギラギラの好奇心というニュアンスにも広がり、curious「好奇心の強い」、curiosa「春本」などの単語もできた。 春画ならわがニッポンは、江戸時代に数々の傑作を生んだ先進国。ウタマロの名は世界に知れわたっているが、嗚呼、それなのに、ヘア解禁となったのはなんと平成5年(1993)のこと。セックス後進国もいいところだ。 ところで、世界で最も数多くのポルノを収集しているのはどこか知ってるか? なにをかくそう,あのカトリックの総本山バチカンの図書館なんだって。約1000年間にわたって、発禁本などをシコシコ集め、その数は文書が25000冊、美術品は10万点にのぼるといわれている。 しかし、考えてみりゃポルノに『発禁』の烙印を押し、焚書にしてしまった張本人は、バチカンの坊さんたちなんですねぇ。一方でそれを密かにためこんで、ホゥオゥ〜とばかりひとり閲覧、悦覧だなんてダチカンぞよ。よくもまぁバチが当たらないもんですねぇ。 |