英国的冗談生活 ― 「Never do it again」

 

「イギリス人のユーモアのセンス」「英国的ジョーク」はとかく他の国のユーモアやジョークのセンスと区別されて論じられます。なるほど、実際、英国的ユーモアのセンスというのはかなり独特だと思います。

それらは皮肉、自虐的、時には攻撃的であったりして、なかなかアメリカン・ジョークのように素直にバカ笑いができないものが多いことは確かです。人種や階級の差別をはじめとして、Methaにとってはぎょっとするような社会的タブーをかなり過激に取り入れたジョークも平気で一般に使われます。

「笑い」をこれほどまでにひねくれて演出する国民性もなかなか他には見当たらないでしょう。そのような笑いのセンスを「知的」だとか何とか言って愛好する人は、イギリス人以外にもたくさんいます。

 

・・・しかしMethaに言わせれば、そういう感性はハッキリ言って「クラい」のです。英国に蔓延している社会病理をばっちりあらわしているとすら思います。確かに英国的ジョークはある意味で一筋縄ではいかないような知的な要素が含まれているのかもしれません。しかし全然普遍的ではないのです。もっと言っちゃうと単なる自己満足なのです。オタクっぽいのです!

Methaがただ簡単でシンプルで毒の無いごく普通のどうでもいい日常会話をしたいにかかわらず、やつらはいちいち些細でひねくれた、笑っていいんだか悪いんだか判断のつかないジョークをふんだんに織り交ぜてくれちゃうのです。ブラック・ジョークや政治的な小話、ウラ話が大好きなロシア人でも、ここまでネクラな笑いのセンスは持ち合わせていません(と思います)!!

 

食事の席や飛行機でイギリス人と隣になった日にゃあ地獄です。「やめろ〜!!Methaはただ楽しい雑談がしたいだけなんだっ!疲れるからやめてくれ!!どうしてキミ達は、素直で楽しい会話ができないのだっ??」その言葉をぐっとこらえつつ、Methaは顔はにこにこしながら「こ、ここで笑うべきなんだろうか?いや、それともこれからオチがつくんだろうか??」などと頭の中では激しく脳味噌を回転させなければならないのです。

だからたまにアメリカ人とご飯を食べたりなんかすると、妙にリラックスできてしまうのでした。普段はアメリカのあまりに単純で強引でねじが一本取れたようなおバカな思考回路や主張に日々怒っているMethaですが(…すみません)、この場合だけは「ああ〜、この人たちって何てシンプルで前向きないい人達なんだろう〜。世の中こうでなくっちゃねぇ〜」などと好き勝手なことを思うわけです。

 

…と、とにもかくにも、イギリス人と会話した後、すっきり爽快、「ああ、心の底から笑ったなあ」という気持ちになること殆どありません(言い過ぎか?)。

 

さて、自慢ではありませんが、イギリス嫌いのMethaは当然のことながら(?)余りイギリス人の友達がいません。

キースはそんなMethaにとっては貴重なイギリス人の知り合いの一人です。知り合ったきっかけは仕事だったのですが、何の拍子にか色々と話しをし結構仲良くなってしまったのです。

 

キースは「ビッグ・ベンの鐘が聞こえる場所で生まれ育った正真正銘のロンドン子」らしいです。初対面でMethaの住んでいる場所をいきなり質問しMethaが答えると「ああ、そこは20年も前じゃとっても治安が悪かったんだよね。まともな教養のある人間の住むところじゃなかったね」と勝ち誇ったように言うようなオッサンです。

「どこがどう治安が悪かったの?」

「ううん、そうさな。Methaは今一人暮らしだろう?20年前、あのエリアで女性が一人暮らしで働いているって言うと、きっと皆は君のことを『時給で働く女』だと思っただろうね」

キースはそこまで言うと、ぐっと背筋と首を伸ばしてMethaを見下ろしました・・・Methaの反応を待っているようです。ということは、ここは笑うべきところなのだなっ!?Methaは脳味噌をフル回転させて一生懸命考えました。

…しばらく考え、やっとわかりました。娼婦のことです。ようするにMethaが住んでいるところは昔は赤線地区だったわけです。その事実は他のところでも聞いたことがあったので別に驚きではありませんでした。それに今はとってもおしゃれなところ(?)なんですもの!

だけど普通、初対面の人(しかも女性)が住んでる場所についてそんなこと言うかぁ?

 

こんなこともありました。皆で一緒にレストランで食事をしていた時、Methaがナフキンか何かを膝から落としてしまいました。Methaは「ちょっと失礼ね」と言って屈みそれを拾おうとしました。すると隣に座っていたキースはぴくりとも表情を変えずに(しかもMethaの方は見ずに)言ったのです。

All right, never do it again. (いいか、二度とやるなよ)」

 

これまた幸いなことにMethaはこのジョークは知っていました。これはイギリスの典型的なジョークの一つらしく、全然見知らぬ人に対してでも、例えば自分の前を「失礼…」と言いながら横切る人に対して「二度とやるなよ」と真顔で言うのです。Methaは学生の頃キャンパスで学部生のガキんちょによくこれをやられて鍛えられて(?)いたのです。

しかしそういうことが分かっていても、このジョークは全然良い気持ちがしないではないですか。一瞬Methaがむっとしていると、キースはちらっと横目でMethaを眺め、「あのね、ジョークなんだよ」と解説しました。

 

きぃぃ!解説せなあかんジョークやったら外国人に言うな!!!!

もっとグローバルに通用するジョークを考えぇ!

 

何故か大阪弁になるMethaなのでした。

 

(つづく)

 

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