英国的冗談生活 ― 「独立撤回宣言」

 

ところでMethaにはもう一人、数少ない貴重なイギリス人の友達がいます。その名はベンジャミン。

名前は可愛らしい(?)ですが、Methaにとってこのおっさん程話していて疲れる人はいません。会話の99.5%が英国的ジョークで占められています。Methaはこのおっさんと喋るときは本当に脳味噌をフル回転させなければなりません。本当に疲労します。Methaは普通の人間としての会話がしたいだけなのに・・・。

話していてどっと疲れる。こんなの「友達」と呼べるんだろうか?Methaは時々ふと考えたりします。しかしベンジャミンの「ジョーク・リスト」にMethaが加えられているところを見ると、やはり彼とMethaは友達なのでしょう・・・(ネットの世界にはびこっている、欧米人が大好きな恐るべしジョーク・リストについては、「サイード」のエピソードもご覧下さいね)。

 

さて突然ですが、2000年11月のアメリカ合衆国大統領選挙は空前の大混乱に陥ってしまいました。よもやアメリカであんな騒ぎが起ころうとは!!しかも事態は収拾するどころかどんどん拡大し、連邦裁判所まで登場する騒ぎになってしまいました(この辺がいかにもアメリカっぽいと言えばそうなのですが)。

ところがこの一連の騒ぎは、英国人ベンジャミンの創作意欲(あるいは大英帝国魂)を大いに刺激したようなのです。

以下、2000年の11月半ば頃にMethaを含む複数の人々に送りつけられたベンジャミン会心の作です。問答無用。そのまま翻訳してみました。

 

 

独立撤回の宣言および告知

 

アメリカ合衆国国民諸君!
今般、アメリカ合衆国大統領選挙の失敗、つまりは貴国統治が失敗したことを受け、我々グレート・ブリテン連合王国はここにアメリカ独立承認の撤回を宣言し、本日をもって発効とする。

同宣言に基づき偉大なるエリザベス女王陛下は、旧アメリカ合衆国全ての領土において、王制を復活される…ただしユタ州については、陛下のご興味が無いので対象外。

 

諸君の新しい首相(今まで世界にアメリカ以外に国があると気づいていなかった97.85%のアメリカ市民諸君のために注釈すると、トニー・ブレア議員のことである)がアメリカの首相を任命する。従ってこれ以上の選挙は必要ない。合衆国議会は下院、上院ともに即刻解散せよ。

 

諸君の速やかなる「英国王室への忠誠」への移行を実施するため、早急に以下のようなタスクを導入することとする。

1.まず「撤回」という単語をオックスフォード英語辞典で調べよ。

次に「aluminium(アルミニウム)」を調べよ。発音記号をチェックせよ。(訳注:イギリス人は「ありゅまにぅむ」、アメリカ人は「ありゅーみなむ」と発音し「aluminum」とつづります)どれほど誤った発音をしていたか反省せよ。

更に、語彙の構築に努力せよ ― あ、「語彙」を辞書で調べよ。「・・・とかぁ(like)」や「だからぁ(y’know)」などという無意味な言葉を散在させながら同じ単語を27回も繰り返し使用することは、許されがたくかつ非効率的な会話方法である ― あ、「散在」を調べよ。

2. 「アメリカ英語」などというものは存在しない。本件については諸君に代わって我々がマイクロソフト社に通報する。

3. 「英語」とオーストラリア訛りを区別せよ。・・・実はそんなに難しいことではない。


4. ハリウッドは定期的にイギリス人俳優を正義の味方として起用せよ。


5. 本来の国歌である「God Save the Queen(訳注:「神は女王と共に」…という感じ?イギリスの国歌)」を再度学習せよ。ただし上記タスク1の完遂後のみとする。諸君が混乱して途中で挫折してしまうことを懸念するからである。


6.「アメリカン・フットボール」を即時廃止せよ。「フットボール」は一種類しかないのである。諸君が「アメリカン・フットボール」と称するものはよろしくないスポーツである。アメリカ以外にも国があると知っている諸君のうちの2.15%は、諸君以外の誰も「アメリカン・フットボール」などやっていないことを理解しているであろう。即刻それを廃止し、正しい「フットボール」を導入せよ。手始めに女の子チームと対戦するのが適切であろう。難しいスポーツなのである。

見込みある者はそのうちラグビーをすることが許可される(「アメリカン・フットボール」と類似しているが、20秒ごとに休憩したりステゴザウルスのような鎧冑は装着しない)。


7. ケベック州およびフランスがごちゃごちゃ言ったら、核戦争を宣言せよ。アメリカ以外に国があることに気づいていなかった97.85%の諸君は自らの無知を幸運と思うべし ― 念のため言っておくが、ロシアはずっと昔から諸君と非常に友好的な関係にあった。

8. 7月4日(訳注:アメリカ合衆国独立記念日)はもはや国民の休日ではない。11月8日(訳注:今回の米国大統領選挙の日)が新しく休日となる ― ただしイギリスにおいてのみ祝われる。休日は「優柔不断の日」と名づける。

9. 全てのアメリカ車は禁止となる。アメ車はゴミでありこの措置は諸君のためである。・・・ドイツ車を見ればそれが理解できるであろう。


10. 頼むからJ.F.ケネディを誰が暗殺したのか教えよ。我々はもう40年も悩んでいるのである。

 

以上、ご協力に感謝する。
ベンジャミン・×××(バッキンガム宮殿スポークスマン)

 

 

…うう〜む。

これを面白いと思った方(あるいは面白いとまではいかなくても、理解できた方)は一体どれほどいらっしゃるでしょうか?

Methaはこれを典型的な英国ジョークだと思いました。王制を持ち出してみる。英語と米語の違いを指摘してみる。アメフトをこきおろしてみる。ケネディ暗殺事件をちゃかしてみる…。何やら小難しそうな単語を使って書いてありますが、結局どれもこれも、使い古されたネタではありませんか!想像力がなさすぎるぞ、ベンジャミン!

だいたい、これを書くのにどれぐらいの時間を費やしたんだ。

ベンジャミン、きみ、仕事してんのかい。

Methaは思わずまた関西弁でツッコミを入れたくなりました(これをわざわざ翻訳したMethaも人のこと言えないぐらいひまじんですが)。

 

しかし同時に、Methaはこれを読んでいてなんとなく悲しくなりました。このジョークのウラに隠されたもの。それはやはり「でもやっぱり俺達、過去にしがみついてるだけだよな。現実にはアメリカに負けてるよな」というのを認めちゃっているイギリス人の姿ではないでしょうか。そしてそれをジョークにしてさも開き直っているように演出するところが、余計に痛々しく、「ねじまがった負け犬根性」を際立たせているような気がするのです。これぞ、自虐ネタです。本当に痛々しくて、見ていられません。

 

ああ、英国的冗談。悲しすぎるぞ。Methaは少しだけイギリス人に同情しました。

今度からクライ冗談や皮肉を言われても、一生懸命笑ってあげよう。だって彼らは悲しい人たちなのだから・・・。

 

…と、少しはイギリス人に優しくなってみようと心に誓ったMethaを残し、ここでこのエピソードは終わるはずでした。

しかし数日後、このお話しは新たな展開を見せるのですっ!!!

 

(つづく)

 

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