さて、そのような調子でさらに2件の銀行に当たって砕けたMethaは、ついに4件目の銀行L銀行に辿りつきました。

L銀行の受け付けレディーは他の銀行のギャルよりも若干年齢が上で、応対もソフト、Methaの切々とした訴え(?)に同情を持って耳を傾けてくれました。

「住所を証明する書類は、賃貸契約書で結構ですよ。日本の銀行からの紹介状も特には必要ありません」

それを聞いたMethaは涙を流さんばかりに喜びました。これでやっとゲンナマを腰に巻きつけながら歩く生活とおさらばできるのです。Methaは早速、「面接の予約」を入れました。それでも予約は1週間後しか入りませんでした。しかし・・・ガマンガマン。Methaはにっこり笑って1週間後に予約を入れました。

 

そして当日、Methaは所持しているゲンナマ全てを持ってL銀行P支店に出かけました。その日の受付はかったるそうに仕事をする若い女の子でした。彼女に用件を告げると、「そこで座ってお待ちください」とのこと。

しっかり鞄を胸に抱き、椅子に座って待つこと5分。わざわざ1週間前から面接の予約を入れなければならないぐらいなんだから、どんなスゴイ銀行マンが来るのかとどきどきしていたら、何と、現われたのはさっき受付で用件を告げたばっかりの、かったるそうな女の子でした。

え???受付の子が口座開設手続きをしてくれるんだったら、何のために1週間前から予約をいれてたんじゃ?それとも彼女はそんなに予約一杯の売れっ子なのかい???

 

気を取り直し、彼女の後について個室に入ります。女の子はかったるそうに机の上のコンピューターのスイッチを入れました。

「名前は〜?」「住所〜」「年齢はぁ〜?」「職種〜?」

そのような基本的な質問は、前もって書類か申し込み用紙に書かせて提出させればいいのに、いちいち口頭で質問するのです。Methaはそのあまりの非効率さにうちふるえました。しかも彼女はあまりにもキーボード操作が下手くそで、打ち間違えては訂正し、訂正しては打ち間違えるのです・・・しかもなが〜いツメなので、とても打ちにくそう。何度も「わたしが自分でやりましょうか・・・」と言いそうになりました。

 

「年収はいくらぐらいですかぁ〜?」

恐ろしく時間が経過し、やっと質問は核心に入り始めました。面接が開始されてからかれこれ30分は経っています。ところがMethaが年収を答えると、彼女の指はピタリ、と止まりました。

「すみません。年収をお聞きしてるんですけど」

と、彼女はもう一度尋ねました。そしてMethaはもう一度答えました。すると彼女は疑いの目をMethaに向けて言ったのです。

 

「すみません・・・。それ、通貨は何でしょうか?」

 

「スターリング、イギリス・ポンドじゃあ!!!!」

Methaはもうほとんど気が狂いかけていました。どうやらMethaのルックスと年収が彼女の常識では整合性がとれなかったらしいのです。そりゃあ、Methaは背も高くないし子供みたいな顔してるでしょうよ。そりゃあ、あんたたちから見たらMethaは胡散臭いチンケなアジア人でしょうよ。それだけの金を稼いでるようにはとても見えないでしょうよ。

 

でもだからと言って客に向かって「通貨は何でしょうか?」はねーだろー!

 

そしてその後、彼女の態度は一変しました。明らかに仕事のスピードが上がってきたのです。更に、コンピューターが処理を始めて時間が空いたりすると雑談なんかをはじめたりして、急に愛想が良くなりました。「ロンドンの印象はどうです?」「こちらには何年滞在のご予定なんですか?」「あらお仕事の場所はこの近くなんですね。この辺は高級ブティックなんかがそろっていて、とてもおしゃれなんですよ〜」等々。Methaはもうげんなりしてしまい、答える気力もありませんでした。

 

(つづく)

 

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