ブチ切れながらも無事に口座を開くことができました。しかし問題はまだ全て解決したわけではありません。Methaが開いた口座というのは、まだ限定付きの最低限の口座でしかないのです。すなわち、

 

1.1回200ポンドまでしか落とせないキャッシュカードのみ

2.店頭で小切手が切れない(小切手の保証をするギャランティーカードがない)

3.スーパーとかで使えるデビッド・カードがない

4.クレジットカードが作れない

・・・・・

 

等々、他にも制約だらけの口座なのです。要するにMethaにはまだ「信用」がないわけです。借越しができないとか、手形が切れないとか、そういうのはどうでもいいのですが、とにかく小切手を切れるようにして欲しいのと、クレジットカード、デビッド・カードをつくって欲しいというのはMethaの切なる願いでした。デビッド・カードや小切手がなければ、結局現金を持ち歩かなければいけなくなるのですもの。

でも口座を開くときにMethaが受けた説明では、「通常デビッド・カード等は口座開設後4ヶ月経たないと手続きがはじめられません」とのことでした。4ヶ月経つと、ちゃんと定期的に給料が振り込まれるかとか月々の出費は適当かとか、そういうデータが集まるからでしょう。Methaはじっと我慢することにしました。「信用」を築くには時間がかかることを知っているからです。

 

そして口座開設から1ヶ月が経ちました。Methaに「L銀行P支店G氏の秘書」と名乗る人から電話がありました。

 

「口座開設から1ヶ月経ちましたね。あなたの口座マネジャーG氏が、あなたにお会いしたいと言ってます。つきましては面談の予約を入れたいのですが、いつがよろしいでしょうか?」

 

あ???誰だ、「あなたの口座マネジャー」って???

Methaの口座はMethaが管理してるんだ、そんなマネジャー頼んだ覚えはねえぞ!・・・と思いながらも、もしかしたら早めにカードを作ってくれって頼めるかもしれないと思ってMethaはおとなしく答えました。「できるだけ早い方がいいです。明日がいい。」

「あら、予約は来週以降でないと入らないんですよ。来週の火曜日はいかがです?」 

都合があるなら先に言え!!「火曜日では遅すぎます。月曜日ではどうでしょう?」

「月曜日はすでに別の予約があるんですよ。あ、それからG氏は木曜日から出張なので、火曜日か水曜日でいかがでしょう?」

き〜!!それを先に言えっちゅうの!!!

「・・・・・わかりました。じゃあ火曜日の10時」

 

そして当日。でっぷり太ったインド系のG氏は若いアシスタントらしき女性を伴って現われました。

「いやぁ、Metha様、こんにちは。ごきげんいかがです?我がL銀行にはご満足いただけてますか?」

Methaは愛想良く差し出された手を握り返しながら、心の中でつぶやきました。満足するもしないも、最低限のサービスしかないのに判断できるわけねーだろー・・・・はやくカードを作ってくれ〜〜・・・と。

「前に入れたデータを確かめさせていただきますね、Metha様」

G氏はそう言うと、「住所は〜」「職種は〜」「年齢はぁ〜」・・・という、1ヶ月前にやった質問をコンピューターのデータを見ながらまた最初から繰り返しはじめたのです。一体何のために????Methaはもうワンダーランドな気持ちでした。

1ヶ月で住所や職業は変わらんぞ、コノヤロー!!!

 

「年収・・・・おお、Metha様、すばらしいご職業のようですね」

この項目に来るのを待っていたMethaは、G氏の相好が崩れるのを見計らって間髪入れずにお願い攻撃に出たのでした。

「わたくし、今のキャッシュカードだけじゃ、大変不便な思いをしておりますのよ。どうにかして、デビッド・カードとクレジット・カードを早急に作っていただけないかしら。仕事で旅行することも多いものですから、是非とも必要なんですの」

「Metha様、わかります、わかります。通常これらのカードをつくるのには4ヶ月ぐらい経たないといけないんですが・・・・この年収でしたら大丈夫かもしれません。少々お待ちください、試してみましょう」

G氏はむちむちした丸い指で不器用にキーボードをたたき始めました(この間の担当の女の子よりスジが悪いぞ・・・)。コンピューターが処理している最中、少しの沈黙が流れました。G氏は愛想良くおしゃべりを始めました。

「Metha様、お仕事場所はこの近くなんですね。この辺は高級ブティックなどが多くて、とてもおしゃれな界隈ですよね」

・・・ん?どこかで聞いたような雑談です。1ヶ月前口座開設の時の担当だった女性も、全く同じことを言ってたな・・・このマニュアル君め・・・。

 

「う〜ん、申し訳ありません、Metha様、コンピューター上からはどうも無理みたいですね。しかしご安心ください。この書類にご記入いただければ、別途お申し込みできますよ」

G氏は、どこからかクレジットカードの申し込み用紙を持ってきました。

最初からこれに書きこめば良かったのだ・・・。コンピュータに入力したり処理したりした20分がこれで無駄になった・・・。しかしMethaはめげずに書きこみました。クレジットカードが欲しいからです。

「ではこれは、わたくしの方から出しておきます。では今日はどうもありがとうございました」

 

へ??これでおしまい?結局、1ヶ月前に入れたデータを確かめただけ??Methaがクレジットカードの件を持ち出さなかったら、ほんとうにデータの確認と雑談だけで終わっていたのか??この「あなたの口座マネジャー」との面談って、一体何なんだろう??

 

・・・しかも、しかも、結局、クレジットカードは作れなかったのです。その後うんともすんとも連絡がなかったもの。G氏があの申し込み用紙をきちんと処理したかどうかも疑わしいです。いや、していないに違いない。おそるべし、イギリスの銀行。客の依頼を何の断りもなく握りつぶすとは・・・。

 

(つづく)

 

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