地下鉄に思ふ
ロンドン、そしてイギリスの公共交通機関の評判は、一般にサイアクです。特にMethaは地下鉄が大嫌いです。
待てど暮らせど全然来ない、やっと来たと思ったら3台も連なってくる、という路線バスも相当あきれかえりますが、それでもMethaは地下鉄を避けてバスを選んでしまいます。
何がMethaをしてそれほどまでに地下鉄を避けさせるのでしょうか。
朝や通勤時のラッシュアワーの時など、ホームの幅が狭いので、人が文字通り溢れかえって今にも線路に落ちてしまいそうなほどです。電車が途中で止まってしまったりすることなどザラです。駅が何故だか突然「閉鎖」されており目的の駅をすっとばしてしまうことだってしょっちゅうあります。更に、換気があまりよろしくないせいでしょうか、特に夏の地下鉄はクサイのです。また目を凝らすと線路を縦横無尽に駆け回る全長25センチのドブネズミたちが見えます。なんて素晴らしい世界なのでしょう!
しかし世界中の色んな国を切りぬけてきたMetha様たるもの、ドブネズミやクサイ匂いぐらいでたじろいだりするわけがありません。では、何故Methaは地下鉄が嫌いなのか…。
それはイギリス人の「地下鉄の乗り方」がムカツクからなのです!
イギリス人ははっきり言って、地下鉄の乗り方がめちゃくちゃヘタクソです。地下鉄が必要以上に混雑している感じがするのも、ひとえにヤツらの乗り方がヘタクソだからです。
実際はそんなに人は乗っていないのに車内にとても「混雑感」があるのは何故なのだろう…フシギに思ったMethaは、観察をはじめました。
まず目に付くのは、デッカイ荷物を堂々と肩に下げて、回りの人達にばしばしとぶつけるたびに「エクスキュ〜ズ・ミィ〜」と言いながらそれでもガンとして場所をゆずらないヤツです。Methaはそういう輩を見るにつけヒトコト言ってやりたくてうずうずするのです。「あのね、あなた、その荷物をちょっと床におろして足の間に挟むとか、ドアのそばの角っこに置くとか、そうすれば周りの人にぶつけて迷惑かけることはないのヨ。そうすればおまけにもう一人余分に乗れたりするじゃないの」と。しかしそいつは全くそのような気遣いを見せることなく、それどころか、大きい荷物を抱えて大変な思いをしているのは俺なんだぞ!っと言わんばかりにつんつんしながら「エクスキューズ…」を繰り返すのであります。
ええかぁ〜、ゴメンですんだらケーサツいらんのじゃぁ〜…。
Methaはこれまでに何度、喉まで出かかったこの言葉を飲みこんだことでしょう。
次に目に入るのは、車内がどんなに混んでいても自分の隣の席に荷物を置いたまま平気な顔をしているヤツです。本当に平気な顔をしています!!「これは確信犯ではない」。そいつのあまりにも脳天気な顔を見てMethaは思いました。
「そうさ、俺は荷物を置いて席を占領してるさ。文句あっか!!!」という顔をしているのが「確信犯」ですが、そいつはそうではありません。自分の荷物が、誰かがこの席に座ることができるかもしれないという可能性をまさに阻んでいることを全然理解していない、どうしようもない鈍感なヤツなのです。ですから彼自身は「皆に迷惑をかけている」ということが全く分かっていないのです!その証拠に、Methaが「ここ、座りたいんですけど」と言うと、はっとしたようにいそいそと荷物をどけるのです。しかしそんなもの、言われる前に気づけよ!とMethaは思うのです。
これは一体、誰が悪いのでしょうかっ???
イギリスの道徳教育ではないのでしょうかっ!!!
そして最も不可解なのは、大混雑し熱気でムンムンする地下鉄の中でモノを食うヤツです。ぴったりと隣り合った人が堂々とチョコレートバーをほおばっていたら、どんな気がするでしょうか?「やめてくれっ!こっちの服につけないでくれ!」と思うのが普通でしょう。
さらにスゴイことに、一度通勤ラッシュのビクトリア線で、あのイギリス名物フィッシュ&チップスを食べているバカモノに出会いました。その匂いのすごいことと言ったら。鮮度の悪い油とビネガーの刺すような臭気が車内に充満し、さすがに他の乗客も白い目を向けていました。しかしソイツは一向にお構い無しです。野獣のようにわら半紙の中のサカナとジャガイモを頬張ると、油でてかてか光った指を座っていた椅子にごしごしと擦り付け、食べ残しが入ったままのわら半紙を丸めて足元に投げ捨て、降りていきました。Methaは真剣に、そいつを追いかけて後ろから刺してやろうかと思いました…。
「イギリスは個性を大切にする」「個人を尊重しあう大人の国」などとよく言われるらしいですが、Methaはこの国では「個人主義」と「私的主義(ミーイズム)」が限りなく混同されているような気がします。彼らは、個人としての自分を確立するということは相手の「個人」も尊重しなければならないということを、理解しているのでしょうか。自分さえ良ければ相手に何を思われようと構わないというのは、一見強いように見えますが、実は単純な思考回路に基づくワガママ、あるいは単なるニブイやつでしかありませんっ!!
この国に住む日本人からよく「日本にいた時はすごく人目を気にしていたけれど、イギリスでは誰も私に干渉しないから楽でいい」という話を聞きます。それは確かにそうでしょう。イギリス人は他人のことなど構っちゃいません。しかしそれは、「公」の概念の勘違い、あるいは「公」に対する恐るべき鈍感さという事実と表裏一体なのではないかとMethaはしみじみ思うのでした。
そしてそれは、普段は「他人に干渉しない」フリをしているくせに王室や芸能界に対しては異常とも言えるヤジウマ根性を見せる、あの屈折した風潮とも関連があるのではないかとMethaは最近睨んでいます!
イギリス人よ、個人の幸せもいいけど、もう少し繊細になってせめて公衆の場で皆が気持ち良く過ごせるように気をつかわんかい!