ジゼル 【Giselle】
音楽:アドルフ・アダン
版:ペロー版、プティパ版
ドイツの森林地帯にある農村を舞台にした悲恋もの。生きているときの愛らしく身体の弱いジゼルと、死んだあと精霊となって静かに踊るジゼルの二つを踊り分ける必要があり、バレリーナにとっては難役のひとつ。第一幕はにぎやかですが、第二幕はひたすら静かな森の中での踊りが繰り広げられるので、バレエ鑑賞の初心者は静かな音楽に誘われ第二幕で寝てしまう危険が大。
第一幕
ドイツの農村。ぶどうの収穫の時期。この村に母親と二人で住む美しいジゼルは、向かいの家に住んでいるロイスを愛している。しかしこのロイスは、実はシレジアの公爵アルブレヒトであり、戯れに村人になりすましているのである。
ある日、アルブレヒトは身分をあらわす剣やマントを従者に隠させて、ジゼルと会う準備をしている。それを森番のヒラリオンは目撃し、何事かと疑いを抱く。ヒラリオンはジゼルを愛しており、ロイス(アルブレヒト)のことが気になるのだ。
アルブレヒトの訪れに応えて家の外に出てきたジゼルは、愛をささやきあいながら楽しそうに踊る。村人たちもにぎやかに繰り出す。しかし、ジゼルの母親はジゼルを心配そうに見つめる。ジゼルは心臓が弱く、激しい動きは命に関わるからである。
そこへ、狩りの角笛が響き渡る。クールラント公と娘バチルドが、ジゼルの住む農村に休憩に立ち寄る。貴族の一行はジゼルの家の前でミルクと果物を振舞われる。ジゼルはバチルドの豪華な衣装に惹かれ、つい触ってしまう。ジゼルのつつましやかな態度を好もしく思ったバチルドは、ジゼルを招きよせる。ジゼルが婚約していることを聞いたバチルドは、自分と同じだといって、お祝いの品として首飾りを与える。大公とバチルドは休憩のため家に入り、その他の一行は狩りを続けに出かけていく。
誰もいなくなった広場にヒラリオンが現れ、ロイスの家の中から剣とマントを見つける。剣には家紋が入っており、ヒラリオンは彼の正体を見破る。ジゼルをあざむいていたことに怒る。
クールラントの一向が戻ると、村人たちも現れてぶどうの収穫を祝う祭りが開かれる。ジゼルも加わり、楽しく踊る。そこへ、ヒラリオンが飛び込んできて、ジゼルにロイスが公爵アルブレヒトであると告げる。ジゼルは信じようとしないが、アルブレヒトに気づいたバチルドが近づくと、アルブレヒトは観念して膝を折り、挨拶をする。バチルドの婚約者はアルブレヒトだったのだ。それを見たジゼルはアルブレヒトの裏切りに気づき、狂乱する。身体の弱いジゼルは、ついに失意のまま息絶える。
第二幕
薄暗い森の中の墓場。ヒラリオンがあらわれるが、周囲の妖しい気配を感じてその場を去る。すると、ウィリ(精霊)の女王ミルタが姿を現す。ローズマリーを折り取り、従える精霊たちを呼び出す。このウィリは、処女のまま男に裏切られた乙女たちの霊なのである。ウィリたちはミルタを囲んで踊る。最後に、新たにウィリとなったジゼルが墓から現れると、ミルタはローズマリーをジゼルの身体に触れさせる。ジゼルはウィリとなり、淋しげな踊りを舞う。物音がしてウィリたちは森の影に身を潜める。
やってきたのはアルブレヒトだった。ジゼルの墓に向かって近づいていく。自分の軽はずみな行動で愛するジゼルを死に追いやった責任を感じ、花を供えてうなだれている。するとウィリとなったジゼルが音もなく現れ、アルブレヒトは翻弄される。森をさまよううち、やはり夜に森に入ったヒラリオンが、ウィリたちに取り囲まれて死ぬまで踊らされ、殺される場面に行き会う。男に裏切られ死んだウィリたちは、男を見つけると必ず取り殺すのである。アルブレヒトも見つかってしまい、ウィリたちに囲まれて踊らされる。そこへ、ジゼルが現れてミルタたちにアルブレヒトの命乞いをする。ジゼルが必死にアルブレヒトを守るうち、森に夜明けが訪れる。ウィリたちは静かに森の奥深くへ帰っていく。そして、ジゼルも静かに消えていくのであった。
第一幕
にぎやかな農村の場面では、村人たちの踊りが華やかに繰り広げられます。その中で、有名なジゼルのバリエーションが踊られる。コンクールやガラ・コンサートでおなじみの踊り。また、アルブレヒトの裏切りに気づいたあと、ジゼルが息絶えるまでのシーンは「狂乱の場」と呼ばれ、バレリーナによって表現の仕方が少しずつ異なる。どのようにジゼルの心理を演じるのか、見どころのひとつ。
第二幕
ウィリたちの繰り広げられる群舞。真っ白なロマンティック・チュチュを身に着けたコール・ド・バレエの踊りは圧巻。また、女王ミルタの踊りも高難度で、威厳ある精霊の女王をどう踊るかが見どころ。
第二幕では、ガラコンサートなどでよく踊られるジゼルとアルブレヒトのパ・ド・ドゥが披露される。精霊となったジゼルの踊りを体重を感じさせずに踊り、かつ、アルブレヒトとの微妙な心のやりとりを演じる必要があり、バレリーナにとっては表現が難しい場面。それだけに、アルブレヒトとジゼル役のダンサーたちがどのような二人の世界を作り上げるのかが、観客にとっては楽しみなところ。
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