【か】


春日武彦

『ロマンティックな狂気は存在するか』

春日武彦:『ロマンティックな狂気は存在するか』,大和書房, 1993.07.25., ISBN4-479-39026-X

書評

精神科医の書いた精神医学の啓蒙書.けっこうスカした文章で私はこの先生が好きだ.

この本の序文には以下のようにある.

 もしも好奇心と誤った先入観、その双方によって我々が狂気に対して冷静な態度をとれなくなる可能性があるならば、とにもかくにも好奇心を一通り満足させ、さらに知的好奇心をも満たしておくことが先決であろう。

 素朴な疑問も解決しておくに限る。

 そこでこの本を書いたのである。ぜひとも読んでもらいたくて書いたのである。

これがこの本の書かれた意図であり,これはかなり成功していると思う.「まず好奇心を一通り満足させ」というのがイイではないか.じっさい,コワイモノ見たさで読んで損はない.しかも「知的好奇心」も満たせてくれるので,単に好奇心だけで電波系を扱ったものより後味も格段によろしくなっている.

(1999.10.05.修正)

『私はなぜ狂わずにいるのか』

春日武彦:『私はなぜ狂わずにいるのか』,大和書房, 1994.11.30., ISBN4-479-39031-6

書評

郵政省の違法無線局取り締まりのイメージキャラクターに「デンパ君」というのがいる.突然TVCFに出てきてびっくりした.

というわけで(どういうわけだ),この本では精神分裂病の主要な症状である妄想,なかでも電波がどーしたという妄想に関してけっこうなページを割いている.もちろん,この本も医学の啓蒙書としてのツボは押さえてあるので,楽しみながらもためになる作りである.

(1999.10.05.修正)

『心の闇に悪魔は棲むか』

春日武彦:『心の闇に悪魔は棲むか』,大和書房,1996.03.25., ISBN4-479-39046-4

書評

副題が「異常犯罪の解剖学」となっており,最近流行のサイコホラー路線にちょっと乗っかっている.他の本を読んでないので断言できないが,猟奇的な場面は少な目.しかしサイコ方面の考察ではかなり濃い方に分類されるのだと思う.

中では連続幼女殺害事件のM被告の精神鑑定にも触れているし,ストーカーもあれば(リンデン・グロス:『ストーカー』のスカした解説もこの先生だ),青物市場医師射殺事件ももちろん,元産婦人科だということで,現在未解決の名古屋の妊婦殺害事件についてまでも含蓄のある考察が書いてあったりする.

いずれにしても,あまりワイドショーなどマスメディアでは触れたがらない方面から色々掘り下げてあって,読み応えがある.

(1999.10.05.修正)

『ザ・ストーカー』

春日武彦:『ザ・ストーカー』,祥伝社,1997.03.01., ISBN4-396-61063-7

書評

リンデン・グロス著のベストセラー,『ストーカー』に解説を寄せたのが縁か,春日先生の97年の新刊のテーマは,タイトルずばりのストーカー.個人的には精神分裂病についてもっと書いて欲しいと思うけれど,本書も精神科医の専門知識が発揮されて,悪い本ではない.

春日先生らしい考察だなと思うのは,P.162からP.163にかけてのこの文.

 男性のストーカーにつきまとわれやすい女性を考えてみた場合、常識的には、おそらく親切で優しく他人の気持ちを傷つけないよう配慮をする人物……いわゆる「お嫁さんにしたくなる」タイプの女性の可能性が高そうに思えてくる。

 あからさまな拒絶をせず、誤った気配りゆえについ曖昧な態度を取りがちな女性こそが「すがりつかれ」そうである。

 しかし実際は、そうした人ばかりがストーキングの対象となっているわけではなさそうなのである。わたしが会った範囲での被害者たちには、お嫁さん候補ナンバーワンといった趣とは異なった女性の方が目についたのである。

 むしろストーカーにとって、「なかなかやるじゃないか」「けっこう見どころがあるな」と一目置きたくなる相手、個性とか才能とかいった部分で勝手に自分との共通点を見出し同族意識を抱いてしまいたくなるような人物、換言すれば、ストーカーたちのナルシスティックな部分に共鳴してくるような資質を持つ人物が票的とされやすいような気がする。

 つまりストーカーたちは、自己の影を勝手に異性の中へ見つけ出して偶像化したがる。それゆえ、見捨てられたと感じたときの怒りは、自身を引き裂かれたような理不尽な気分が加わり、なおさら怒りを募らせるのであろう。

「一目置きたくなる相手」,「勝手に自分との共通点を見出し同族意識を抱いてしまいたくなるような人物」というのは,ストーカーと,ことさらストーカーでない者の間が,距離は遠くとも連続していることを示すキーワードだと思う.例えばとある芸能人のファンになる場合,単に可愛いらしいとか歌がうまいとか,そういうことだけでは熱烈なファンにはならないだろう.少なくとも自分はそうだ.

もちろん,ストーキングについて責任は100%加害者の側にある.それでも,被害者についてもある傾向があることは否定できない.被害を避ける上でこのような情報は役に立つ.逆に,これをもって被害者を責めるようなことはしてはならない.

『屋根裏に誰かいるんですよ。』

春日武彦:『屋根裏に誰かいるんですよ。』,河出書房新社, 1999.06.25., ISBN4-309-24220-0

書評

とりあえず一言で.屋根裏の意味を精神医学的に問うた本.または,精神科医による屋根裏を題材としたエッセイと言った方がよいか.

P.72からの「屋根裏の間男(1)」は,覚えがあると思ったら,以前,北野たけしのTV番組で実話として放送されていた話だった.

(1998.09.23.記)(1999.12.28.修正)



Written by Spangle Maker.