大木幸介:『脳・麻薬・文明』,光文社,1990.09.30., ISBN4-334-06053-6
大木先生(ご存じ『脳内革命』のネタ本『脳がここまで分かった』の著者)の本で最も面白かった本.こういうのを読んでるとドラッグを神聖視する人の気が知れない.
ドラッグの効き目も害毒もひとえに脳内物質の類似品であることによる.サリンなどの神経毒の毒性が激烈なのが,神経伝達物質に似ているからというのと根は同じ.ついでに言って,脳内物質もサリンに劣らず猛毒である.それでも我々は脳内麻薬様物質に依存し続けており,脳が作ったものだからこそそれでもうまく分解して生き続けてゆける.
しかし,どうして大木先生の本はブームにならないんだろう….
ところで,
さて、アルコールのもっとも基本的な性格は、有機化合物−人体もそうである−なら何でも溶かしてしまう有機溶剤だということにある。べつに酒飲みにうらみがあって脅かしているわけではない。私たちが酒を飲んで酔っ払うのは、アルコールがわずかながら脳の神経細胞を溶かし、麻酔作用を働くためなのである。夜の東京・六本木はいったいどのくらいの脳の神経が溶かされているのだろうか。
(P.142)
というのは,どうも専門家らしからぬ文だと思う.成人の脳細胞は日々それなりの数が死につつあるが,アルコールと脳細胞の死滅する数との相関はまだ分からないらしい.また,神経細胞を麻痺させるならともかく,溶かすこと自体が酔いの本質というのもここ以外で聞いたことがない.最近の研究では,酔いのもたらす多幸感は,ドーパミンやエンドルフィンなどの脳内物質の増加に関連しているらしいともいう(【す】参照).この本のアルコールのところは,気をつけて読まないといけないようだ.
(1999.04.10.更新)
大久保義信:『徹底分析戦争映画100!バトル&ウエポン』,光人社, 2003.11.07., ISBN4-7698-1156-X, \2000+税.
大久保義信氏というと,黒井文太郎氏と並んで私にとっての 若手軍事評論家のエース.二人とも文章が面白い.
この本は戦争映画のガイド本で,映画評も面白いし,軍事に関する解説もいい. 久しく戦争映画をまともに見ていないのでまた見たくなった.
しかし3点ほどおかしいところがあるので指摘してみる. 他にも,ささいな誤字や編集のミスがあるのは残念なところ.
P.177にある「役不足」は誤用.「力不足」の方が適切.
P.44の劣化ウランに関する記事については別のページにて.
続いてP-51戦闘機.
そして、P-51の高速長距離巡航を 可能にしたのが、相当に無理した大量 の機内燃料<略>と、空力的 に完璧な位置に完璧な形で装着され、 冷却後の高温空気を後方に吹き出すこ とで推力を発生させるラジエーターで ある。
さすがにこれはヨタ話.『世界の傑作機』No.102,「スピットファイア」の号で ちょうど鳥養鶴雄氏がP-51の高速性能の秘密とラジエーターの効果の 両方について解説している.その要点は以下のようなもの.
この推力が、冷却器の空気抵抗、前後の ダクトの損失、取り入れ口ダクトや出口で 発生する渦による損失を上回ることができ れば、冷却器がないとき(表面冷却器や蒸 気冷却)より、優れた性能を発揮すること になる。実際にはエチレングルコールの使 用や高温・高圧冷却器などを使用して得ら れる120℃程度の冷却水温度では、それほ ど大きな推力にはならない。
現実には、風洞実験や設計推算値で求め られた空気抵抗より、飛行試験で得られた 性能から割り出した空気抵抗が小さくなり、 その差を「推力が発生した」と表現してい ることが多い。<略>
追記すれば, 零戦に比べて巡航速度が高速なのは翼面荷重が高いことも効いている.
確かにラジエーターの位置や形状は空力的にベストなんだけど (飛燕も同様),冷却水の取り回しなどで重量がかさむのは難点とされる. 現にドイツでは,エンジンの直前に環状ラジエーターを置く方式を好んだ. これが特に悪いわけではないのはTa152などの高性能が証明している.
(2003.11.03.記)(2003.11.07.更新)
岡田斗司夫・山本弘:『空前絶後のオタク座談会1ヨイコ』, 音楽専科社,2001.05.30., ISBN4-87279-069-3, \1500+税.
初回特典があんまり面白いので紹介.二版以降直ってるといいけど,どうだろう.
P.139の脚注,『宇宙人ユニットからの手紙』は『宇宙人ユミットからの手紙』の凡ミス.
P.163の脚注が素晴らしい(強調は筆者による).
- ※ハリアー
- イギリスのホーカー・シドレー社の垂直離着陸ができ、 ホバリングができるという、ヘリコプターのような戦闘機。 飛行機初の4気筒エンジンのため、 それにつまれたペガサス・エンジンはロールスロイス社が開発した。
ハリアーって,レシプロエンジンだったのか…. それも4気筒(笑).
P.189の脚注,フェアレディZが「逆輸入」というのは間違い.まぁこれも凡ミス.
ハリアーが4気筒というのが最高.こんな面白いネタがと学会系の本で出てくるとは(笑).
それはそうと,この本自体は普通に面白い,アニメック編集長だった小牧雅伸氏の対談などは工房時代を思い出してしまって面白いどころかかなり痛かった(笑).オタク対談てネタは当分尽きそうになくてこれからも期待できる.
(2001.06.17.記)(2003.03.16.更新)
小倉敏布:『写真レンズの基礎と発展』,朝日ソノラマ, 1995.08.31.,ISBN4-257-12012-6
写真レンズに関する最良の入門書と思う.これを読んでから4本ぐらいレンズを買ってしまった.