植木不等式:『悲しきネクタイ』,他人書館,1996.10.01., ISBN4-8052-0518-0
『科学朝日』誌での連載をまとめた本.会社員生態学の権威によるエッセイ. あるいは,「シンドラーのリストラ」「太平洋ひとり勃起」とかのサブタイトルが 全てを語っているかもしれない.
江本勝:『波動時代への序幕』,サンロード出版, 1992.11.20., ISBN4-914986-33-7
出版が1992年だから,確かにその後の<波動>ブームの序幕になっている 気はする.
内容はMRAという万能波動分析器の紹介.既存の科学をばっさり無視して, 何でも波動で説明してしまうところが特徴.たとえば,カミソリがよく切れるのは, 刃先が細胞の波動に働きかけるからだとか.別に細胞でなくても,柔らかければ モノは切れるのだけど.
MRAが何で,榎本氏が本書およびその後の本で何を書いているかについては, 私が駄文を連ねるよりも,と学会会長山本弘氏の以下の記事を参照していただいた 方がいいと思う.
山本弘:「波動分析器」MRAの正体を明かそう!, 『洗脳されたい!』,別冊宝島304,宝島社, P.224-232, 1997.03.21., ISBN4-7966-9300-9
(1998.11.21.記)(1999.01.25.更新)
江畑謙介:『日本の安全保障』, 講談社現代新書,1375, 1997.10.20., ISBN4-06-149375-2, \660+税.
軍隊の目的は戦争の抑止であるとし,戦争が起きた場合, 軍隊は既にその第一の目的の遂行に失敗したと考えるべきだとしている. 憲法上軍備を持たないとされ,かつ護憲を金科玉条とする人がとてつもなく多い 日本で安全保障を語るにあたり,江畑氏はこの原則論をまずかかげ,これを 念頭におきつつ,分かり易く日本の国防のあり方を説いている.ミリタリーマニア の友人に薦められて読んだが,確かに多くの人が読むべき本だと思った.
これを読むと沖縄の基地問題の根深さも分かる.ここにいる一個師団の 米海兵隊が中国を牽制することでアジアの平和に及ぼしている影響はきわめて 大きく,テレビで放映される反対住民の感情論だけでは,とても答えが 出そうにない.付け加えるなら,新ガイドラインにおける「周辺有事」に, 中国と台湾の衝突が含まれていないと考えるのはまったく非現実的であるという ことも分かる.政治家もマスコミも教育者も,いかに現実を見ていないか 考えさせられた本である.
江畑謙介:『こうも使える自衛隊の装備』,並木書房, 1999.04.10., ISBN4-89063-105-4, \1900+税.
今日の軍隊をめぐる情勢の変化を詳しく述べ,その装備の平和利用と, 効率的な装備のあり方について提案をしている.中心は自衛隊だが,他の国の 軍隊についての言及も多い.内容は相当濃く,軍事オタク的にも読み応えのある 本だった.
江畑謙介:『安全保障とは何か』,平凡社新書,004, 1999.05.20., ISBN4-582-85004-9, \660+税.
言わんとすることは『日本の安全保障』と同じで,その後の情勢の変化を 反映している.
私見を言わせていただくと,軍隊は戦争の経験を経て強くなるのは現実である. しかし,本当に戦争をしてしまってはその第一の目的に失敗していることになる. そう考えると,平和維持活動に参加することは,名誉の損失を最小にしながら, 軍隊に重要な経験を与える貴重な機会である.もちろんこれ自体がその国の 国際的な名声を高めるのに寄与することも無視できない(逆に,良好な関係を 維持したい国から非難されるようなPKOには参加すべきではないのは当然のこと). なので,私はPKOに自衛隊を派遣することに同意する.それで日本の政治に 願うことといえば,小銃を持ってゆくかどうかで侃侃諤諤の議論になったり, 危険な場所は避けるとか,戦闘が始まったら逃げ出すとか,そいういう馬鹿げた 話をもちだして,世界に恥をさらさないようにしてほしいことである. 政治がしっかりしていれば,現場の隊員たちは,きっとそれに応えてくれると 考えている.
(2000.05.07.記)(2001.04.28.更新)
遠藤浩:『ハイテク機はなぜ落ちるか』, 講談社ブルーバックス, B1214, 1998.05.20., ISBN4-06-257214-1, \900+税.
現代におけるハイテク旅客機の自動化のあり方について,専門家の立場から 批評を行っている.
コンピュータ技術者を始め,技術者が自動化できるところから 自動化していった結果,パイロットが従来習得してきた技能あるいは感性に そぐわない,あるいは,パイロットがそれを理解して自在に操るには習得に 大変な努力を強いられる,そのような自動化が進んできていると指摘している. ハイテク機の事故率がある水準より下がらない事実には,このような背景が あると言う.
パイロットが飛行に関してその能力を最大限に発揮できるよう, 自動化はそれを補佐する立場にあるべきだというのが,遠藤氏の立場. これはこれで,耳を傾けるべき価値のある意見だと思う.
しかし,一方では,飛行の自動化に取り組む技術者達の作業について, 調査の行き届いていない部分があるように感じられる.「製造メーカーの制御 プログラムの品質管理」や技術者の「役割分担」や「責任分担」について認識が 足りないといった指摘もされている.
飛行の自動化といえば,東京大学の加藤寛一郎教授が熱心に研究している ことで知られている.同教授は,未来の飛行は無人飛行が究極であると 考えている.なぜ完全自動化かというと,人間の限界を超えた飛行を実現する ためだという.それは,極超音速で日米を1時間で結ぶスペースプレーン であったり,または,事故で機体が損傷した際,損傷により変化した自機の 飛行特性を即座に判定し,それに適合した制御則を見つけて飛行を続け, 無事着陸する,そういう,きわめて高水準の安全のためである.飛行の自動化に 関する本を書くにあたり,加藤教授に言及がなかったのは,いささか残念に 思った.まぁ,私が先生のファンだからそう思うのだけど(特に前に出した 3部作の小説のぶっとび方は見事).
加藤教授は,飛行力学が専門で,ゼロ戦のひねり込みや,ブルーインパルスの 曲技や,その他,種々の極限の飛行についても熱心に調べていて,いくつか著作も 発表している.加藤教授は,自身の研究における解析作業を,コンピュータの中の 飛行だと自負しており,また,積極的にパイロットの技能の本質を知りたいと 考えている.飛行の自動化を推進する科学者や技術者が,操縦についてよく 分かっていない,知ろうとしないというのは,偏見だと,ひとまず例外を 示しておく.
さて,この本,参考文献に岩谷宏氏の著作も 挙げている.しかし,以下に示すように,遠藤氏と岩谷氏の思想は, 人間というものに関する認識という重要な事項で食い違っている.この点は ぜひ指摘させていただきたい.
最近の岩谷氏は,グラフィカル・ユーザー・インターフェス(GUI)による コンピュータの操作を,「幼児の指差し」と蔑み,コマンドラインによる 操作系こそ,高度に抽象化された,言葉というものでコンピュータを操作 できる,知的で人間的な高度な操作体系だと考えている.コンピュータを いかに操作するかに,人間の尊厳がかかっているとの認識らしい.
幼児の指差しで高機能のアプリケーションを操作できるなら,それはそれで 素晴らしいことだと思う私だが,遠藤氏の考えも実は私の認識と遠くない(p.107).
現在、飛行管理コンピュータで使われているプログラミング・ツールは、 今では古典的となったMS-DOS型の逐語文字入力方式である。キーボード入力の ような記号操作は、馴れた人でも誤りを犯しやすい。それは人間の弱点に負担を かけるからである。迅速で正確さを最大限要求される操作のツールが、せめて アイコン(絵)を使った、直感的で分かりやすいアップル・コンピュータの レベルには達して欲しいといった、マッキントッシュ愛好者パイロットからの 批判もある。
この二者の認識の違いは無視できないことだと私は思う.参考文献について もう一度検討をお願いしたいと考えている.
(1999.04.10.記)