柳下毅一郎: 『世界殺人ツアー 殺人現場の伝説』,原書房,1998.02.07., ISBN4-562-03060-7
特殊翻訳家柳下毅一郎氏による,著名な殺人者の話を中心としたエッセイ集.柳下氏独特のしゃれた文章がたっぷり楽しめる.ただ,ペーター・キュルテンの項は別冊宝島368『身の毛もよだつ殺人読本』の真木貞夫氏の記事とかなり異なるのが気になる.
(1999.02.11.記)
山崎幹夫:『缶コーヒー風景論』, 洋泉社,1993.12.01., ISBN4-89691-133-4, \1500+税.
日本独特の飲み物である缶コーヒー.約900本を誇るという著者のコーヒー缶のコレクションから,そのフィールドワークの成果と考察を披露.私も缶コーヒーは好きなので,興味をもって読んでみた.著者は路上観察がもともと好きで,その傍らで缶コーヒーを集め始めたという.この本の洒脱な視線も,いわば缶コーヒーの世界の仮想路上観察である.よきオタクの世界を覗いた感じがした.
以下は山崎幹夫氏のサイト.
(2000.10.15.記)(2000.11.23.更新)
山本弘: 『時の果てのフェブラリー−赤方偏移世界−』,徳間デュアル文庫,2001.01.31., ISBN4-19-905035-3, \648+税.
1990年1月に角川書店から出されたSF小説.本書はこれに大幅加筆して再版されたもの.SFファンに山本弘氏の話をするとすぐに本書の名前が挙がる.非常に評価が高い.それで長く読みたかったのだが,今回の再版でついに読むことができた.
内容は,地球の6箇所に突然できた<スポット>という異常地帯の謎を解くため,「オムニパシー」という特殊な能力の女の子フェブラリーが<スポット>に潜入.そこにあったものは!,という話.突如地球に現れる<スポット>は『ストーカー』の<ゾーン>(だっけ?)や『魔法使いTai!』のツリ鐘を思い出させる.『首都喪失』もか(あれの映画よりはよほどこちらの方が出来がよい).ストーリーは『2001年』や『コンタクト』を思い出した.「オムニパシー」は『ガンダム』の「ニュータイプ」を連想した.『妖星ゴラス』も思い出した,って書いちゃうとネタバレか?
山本氏自らSFマニアを自負するだけあって,SFとして読んでかなり面白い.上記のように色々な作品を思い出したが,実際にはこの<スポット>の設定はそのどれよりもはるかに意味深なものだった.
他にこれは山本弘氏らしいな,と思うネタはあと2点ほどあった.1つは,宗教カルトを批判的に出してきて,「考えることを放棄しちゃいかん,自分の頭で考えるんだ」という主張をしているところ.と学会の活動を通して,山本会長が常に主張していることに通じる.2つ目は,主人公の女の子がいつのまにか全裸になってるところ(笑).後の『ギャラクシートリッパー美葉』でどちらも受け継がれている.
白状すると私自身はあまりSFを読んだ経験は多くない.なので,山本氏の書くSFのレベルが本当に高いのかどうかは断言できない.しかし,自分が読んだ中では相当よく出来ている方だと思う.続編が動き出したとのことなので期待したい.
山本弘: 『トンデモノストラダムス本の世界』, 洋泉社,1998.07.14., ISBN4-89691-326-4, \1400+税.
1999年を目前に,と学会会長山本弘氏が著したノストラダムス現象研究本.ノストラダムスの世界でなくノストラダムス本の世界というのがいかにもと学会的スタンスでよい.
なお,山本氏は五島勉氏について,作家としての筆力を実は大いに評価している.例えばP.53.
そう、『ノストラダムスの大予言』が日本で大ヒットしたのは,ノストラダムスが偉大だったのではない。それを「小説」として脚色した五島氏が偉大だったのだ!
なので,オウム真理教のように五島勉氏の著作を真に受けてバカなことをしでかす連中にはこう言い放つ(P.75).
だが,僕としては五島氏を非難するつもりは毛頭ない。「サリン事件の責任を取れ」とも言わない。何度も言うが、「小説」の内容を本気にする奴のほうがバカなのだ。バカがどんな事件を起こそうが、五島氏の責任ではない。
実は私は五島勉氏のノストラダムス本を一冊も読んだことがない.にしてもこの本は相当に楽しめた.あくまでそれらを「小説」として,作家の力量として評しようという視点が優れているからだろう.逆に,この本より前に一連のノストラダムス本を読んでいたら,自分がどれだけハマっていたかと思うと,空恐ろしくも思う.
山本弘: 『トンデモ大予言の後始末』,洋泉社, 2000.07.13., ISBN4-89691-459-4, \1500+税.
と学会会長山本弘氏による,ノストラダムス現象研究本の続編.脅迫状のくだりは私も大笑いした.あと笑ったのは,MMRに関する項.金田一VS MMRで少年マガジン対決というアイデアもさることながら,キバヤシの口上がまたすごい(P.217).
キバヤシ「みんな世間が悪い! ロリコン弾圧法なんか施行しやがって! ロリコンだからって少女をレイプしようと思っているわけじゃないんだ! ただ、天使のように清らかな少女を遠くから眺めていたい。美しい少女の裸を観賞したい……ただ、それだけなのに……そんなささやかな欲望ですら法律で許されないなんて! なぜ……なぜ、世間はロリコンの人権を……ううっ!(泣き出す)」
なるほど,こういう類の主張は,悪役に叫ばせるにかぎると(笑).
(2000.10.11.記)(2002.02.16.更新)
遊佐昭子:『ガン、糖尿病に活つ超革命の「水」』,現代書林, 1997.03.08., ISBN4-87620-951-0
著者の名前につられて買ってしまった.それだけ.まだちゃんと読んでいない.よくある,地下水などを健康にいいというイメージで売る商売である.
少し中身を見ると,この水を飲んでこんなに健康になりました,こんな病気が治りました,というユーザーからの喜びの声が満載である.
しかし,菊地聡先生の本などを読んでいただけると分かるように,<水を飲んでいいことがありました>,という事実をいくら積み重ねても,それだけでその水に何らかの効能があることを証明することはできない.
人間には自然治癒能力があるので,病気が治っても,それだけでは水の効果なのか,もともとのその人の力なのか,区別がつかないのだ.従って,以下の4分割表の各マスをきちんと埋めた上でなければ,水の効能について適切に判断を下すことはできない.
| 超革命の「水」を | |||
| 飲む | 飲まない | ||
| 病気が | 治る | ※本ではここしか 紹介してない |
|
| 治らない | |||
とはいえ,この水に別段体に悪いものは入ってなさそうだから,無視しておいてもよさそうではある.詳しくはhttp://shinshu.online.co.jp/tokusan/katsu/を参照されたい.著作物の紹介でこの本も出ている.ただ,表紙の「ガン、糖尿病」の部分にボカシが入っているのは何で?
(1998.02.22.記)(1999.10.03.更新)
遊佐未森: 『ひなたVOX』,音楽之友社,1991.09.30., ISBN4-276-23712-2
遊佐未森がデビュー直後から『週刊FM』誌に連載していたエッセイを単行本化したもの.新書サイズのハードカバー.確かCDジャーナルで広告を見つけて探しまわって買ったはず.
作家でない人で気になる人で,その人の文章を読むのは実は冒険である.文章はやはりその人の個性を強調してしまう.これがために誰かを嫌いになることもあった.しかし遊佐未森についてはまったく杞憂に終わった.恥ずかしながら,この本を読んでますますのめりこむこととなってしまった.当時遊佐未森について情報飢餓状態であったとはいえ,やはり世の中にはこんな人もいるんだというのは,色々な意味で自分にとって福音になった.
それにしても色々驚かされた.P.28ではCocteau Twinsが話題に.私は89年から愛聴していたのだけど,ここではじめて自分以外のファンを発見した(最近やっと,原田知世もファンだと知る).それどころか,遊佐未森は相当の洋楽マニアであることもだんだん分かってきた.あと,この本で初めて遊佐未森が自分より年上だということも発見した(汗).
その後時々人にこの本を貸しているのだけど,なぜかあまりいい感想を聞かない.やはり世の中色々な人がいるものである.それでも,遊佐未森に興味のある人にはぜひ読んで欲しい一冊.
遊佐未森 (岩本晃市郎編):『空耳見聞録』,河出書房新社,1991.11.30., ISBN4-309-00733-3
1991年の秋はアルバム『MOSAIC』が発売になったのだが,一方では先の『ひなたVOX』などとともに,空前絶後の遊佐未森出版ブームが到来していた.しかも,そのどれもが質的に充実したものであった.
その遊佐未森関係の出版物であるが,この『空耳見聞録』が最も濃密である.布貼り箔押しの豪華なハードカバーで,段ボールのこれまたリッパなケースに入っている.デザインはどっぷり石川絢士.行く書店行く書店でこれが平積みになっている光景は圧巻であった.
内容は基本的に書き下ろしであるが,『空耳の丘』から『HOPE』までのアルバムについていた外間隆史の(小さな声で)恥ずかしい小説が,書き足しつきで掲載されている.『ひなたVOX』でも解けなかった様々な謎がここで氷解した.コンサートの演奏曲目も分かるし衣装デザインや日の目をみなかったキャラクターグッズのデッサン画もある.「遊佐未森のいる風景」ではなんとセーラー服姿も見られるしお母様のお顔も見ることができる.
圧巻はハルモニア語辞典.詳しくは空耳音楽博物館の館長の解説に譲るとして,ほとんどのファンを置き去りにしてしまうネタの数々は,遊佐未森とそれを取り巻く人々の濃さをよく表している.くれぐれも,心して読んでほしい.
『遊佐未森 モザイクな日々』,ソニー・マガジンズ, 1992.04.08., ISBN4-7897-0756-3
ソニー・マガジンズの雑誌,『GB』誌の遊佐未森関係の記事を綴ったもの.何の前触れもなく(いや,GB誌あたり読んでれば予兆はあったろうけれど,私はあの手の雑誌が特に苦手である)書店に並んでいて,すかさずゲットした本.表紙でもしや遊佐未森か,と思って,文字を読んで本当にそうだと知った時の気持ちは,なかなか忘れられない.なお,中身の文章は主に浜田二郎氏が執筆.
これで感心したのは,書き下ろしの道後温泉の旅行記,<幻のシュークリームを探して>.「湯上がりはこれ、アイグルト」「渦巻きタルトはしあわせタルト」「シュークリームは密かな勇気」などなどの言葉の感覚に,彼女の芸術家らしい鋭い感性を感じる.
遊佐未森: 『ひなたVOX』,角川文庫,1993.04.10., ISBN4-04-187501-3
前述,音楽之友社の『ひなたVOX』を文庫化したもの.外間隆史氏による「遊佐未森縁側論」なるいい得て妙な後書きがついている.ちなみに表紙はネコザメ.なぜネコザメに手足があって花に水をやっているのかは謎だが,とにかくカエルではない(ケロケロ).
(1999.10.03.更新)