ふとしたきっかけで今日のNHK特集のことを知る.で見た.日木流奈君の特集.動画メディアの残酷さがものすごくよく分かった.トンデモ本が作られる現場がこれでもかと描かれている.
トンデモを笑うということの厳しさに思い至る.自分の子供が流奈君のような重い障害をもっていたら,それでもなおこうも無神経に笑っていられるだろうか? それでも,「文字盤は見なくても指せる」といっても,文字盤の方があんなに動いていたら思い通りの文字は指せるわけがなかろう,と笑わないでいられない.いい歳してこの親たちはアバウトの意味も知らないのか? と笑わないでいられない.泣きながら笑うのだ.まだ明るい空から雨が降るみたいに.
一方で,できるだけ冷静にことの詳細を探ろうという目も番組を見ている.押し入れから出てきたドッツカードの類の教材を見逃さない.赤ん坊を叱って廊下に締め出す(!)のがかっきり90秒というのも見逃さない.90秒叱るというのは書いてある本を知らないが,「八秒間、子供を抱きしめよう」なら七田眞氏の『赤ちゃんはみんな天才』という本のP.66以降に書いてある.状況によらず時間が必ず一定というのは違和感がある.
番組を見た時は日木家は七田式を行っているのかとここで思った.が,後日調べたらドッツカードという教材はリハビリと同じくドーマン法だと分かった.七田式自体がドーマン法から派生したものらしい.なので,日木家と七田式はひとまず関係ない.七田式の方も今はドッツカードは使えないという話を聞いた.
流奈君には,ぜひいつかリハビリで普通の人と同じ生活ができる日が来るよう願いたい.裏側を暴露した本を著してくれとまでは言わないので.
葉月っちラブというのは心の中にしまっておこう.
28日の記事について補足.
番組に出ていたドーマン法のリハビリは何かと問題が指摘されている療法であるという情報を得た.例えばhttp://www.aiiku.or.jp/rpi/nakamura/koso/case2.htm.では痛がってる流奈君の苦労が報われる見込みはどうなんだろう.
私の母親も「NHKがやっているんだから本当じゃないのか?」と思ったそうで,父親と私で,色々喋ってNHKだからといって信用できるとは限らないと説得した.
例えば,あれは母親が自分で考えて喋ってる可能性が高い,指より早く言葉が出てるし.でも,母親自身,それが自分の言葉ではなく流奈君の言葉だと信じているのではないか.NHKだって時々変な番組をやってる.例えば「花に追われた恐竜」とか.重い障害を持った子供の家族が冷静でいられないのは仕方ないかもしれない.だけどそのまわりの者が冷静さを失ってはいけないし,日木家の言う事を真に受けて番組を放送してるNHKはもっとひどい.といった話しをして.納得してもらったのでほっとした.
要するにNHK逝ってよし.これが第一の結論.日木家の言う事を真に受けてそのまま流していて客観性に欠け,報道として失格.それに,ドーマン法で痛がる流奈君,文字盤を指す時の辛そうな流奈君,廊下に締め出して泣きわめくソマちゃんを撮っていて何か思う事はなかったのだろうか? 番組制作者の人間性にも疑問を持った.温泉に入って気持ちよさそうな流奈君や,葉月っちが遊びにきてパッと表情が明るんなるソマちゃんを見て,本当にやり切れない気持ちになった(このソマちゃんの表情と,時々見せる不信感持ってそうな表情で葉月っちが一番の常識人じゃないかという所見を持った).
日木家をダシにして一儲け企む連中も逝ってよしと思う.ただ,そうして得られたお金で日木家が安泰に暮らしてゆけるなら,一概に糾弾できないかもしれない.少なくとも著者としての日木家は,冷静になった方がいいとか,子供の表情をもっと素直に見た方がいいとか,もっとトンデモについて色々知った方がいいとは言いたいが,悪い人だとは思えない.むしろ読者に「あまり本気にするなよ」と言いたい.出版社に対して良識を問いたいと思っているが,読者が支持するから儲かっているというのもあるわけで.NHKの放送がその家庭にかなりの混乱をもたらすのではという恐れもある.2ch流に言えば,NHKは意図せずに日木家をさらし上げたことになる.無理して本を出したり,TVで取り上げられたりしなくても,障害を持ったお子さんのいる家庭が安泰に暮らしてゆける世の中なら,なによりなのにと思う.そうはなっていないこともやるせない.
2chの育児板でもこんなスレッドが立っている.2chの他の板も,スレッドが乱立して祭り状態らしい.
http://life.2ch.net/test/read.cgi/baby/1019992951/l50
全体として,流奈君の言葉は母親が代わりに考えているのではないか,という疑惑の声が大きい.そして,簡単な方法でそれは検証できる(例えば母親に分からないように流奈君に何かを見せて,それを文字盤で答えさせる)のだから,検証せよ,と何度も書かれている.もちろんそれははっきりさせるに越したことはないが,私としては,日木家はそっとしておいてやってもいいのでは,とも思う.
正直,流奈君の著作を本当に流奈君が書いているのかどうかは私はどうでもいい.東スポの記事が本当かどうかで誰も騒いだりしないでしょ? 彼の著作で私に興味を持てそうなことが書いてあるなら別だけど.この一件自体,「サヴァン症候群信仰」とでもいうべきありがちなトンデモの一形態に過ぎないとも思う.
むしろ日木家に群がるカルト集団の行状が気になる.ドーマン法は医療カルトである疑いが濃厚で,それによるリハビリは虐待ではないかと私はいぶかっている.早期教育としてのドーマン法も私は効果をまったく信じていない.これも教育カルトではないかと思い情報を探している.また,日木家の両親がニューエイジに深入りしていること,何かの宗教カルトと関係ありそうなことも気になる.「サヴァン症候群信仰」を持ち上げているもろもろの周辺の人々こそ,私は今気になっている.
とある掲示板への書き込みを以下に再掲.
立証責任 投稿者:Spangle Maker 投稿日: 6月29日(土)18時27分47秒
編集機能を使って未来にレスするばかりではいけませんので,
『奇跡の〜』について補足です.
「立証責任」で考えると一つすっきりするのではないかと思います.
流奈君の能力が本当かどうか,科学的に立証する責任は流奈君本人や
流奈家やNACDやNHKにあります.
こちらが,見るからに信じられないことを信じるために,検証する必要は
ありません.信じられないことは信じなければいいんです.もちろんこちらが,
「インチキだ」と主張する場合は,こちらで証拠を示す必要がありますが.
で,私は番組の主張を全く信じていないし,初見で疑いを持った人はそのまま
信じていないでいつづけると思うので,声高に科学的に検証せよ,と言うのは
控えています.ただ,モラルの問題としてNHK逝ってよしとは言いますが.
なので,番組を見た数日後から,ターゲットをドーマン法に切り替えました.
「理論的に破綻していて,臨床的な効果も立証されていない方法」が
堂々と現存していることに驚きました.トンデモを批判するのは私のページの
テーマの一つなので,できる限りの反論をしている次第です.
(まだ稚拙な反論で,早期教育の方など手もつけられない状態ですが)
あの番組の関係では他にもアヤシゲな団体がいくつかかかわっている様子
なので,そういった周辺の怪しいものを明らかにしてゆくのが,
あの番組に対するリアクションとしていいのかなと私は思います.
これなら障害者どうこうということも関係なくできることです.
とりあえず今はこう思っています.
滝本弁護士と有田氏の批判本が出ていますね.未読なんですが,
読んでみるとまた考えが変わるかもしれません.何か思いついたら
またどこかに書いてみます.
補足すると,流奈パパのコメントで既に日木家は立証責任を放棄しているのが分かる.ので,この件,「勝負あった」と私は思っている.もはやあの番組を科学的に肯定する要素は番組の側からは出てこないだろう.
NHKも立場上「嘘を放送しました」とは言えないからナマクラな意見を述べてはいるが,反論に再反論する気はないのではないか.このまま嵐の過ぎるのを待っていると見た.担当者レベルではあるいは本気なんだろうけど,NHKはこれ以上発言の機会を与えないと思う.
日垣隆氏の『エースを出せ!』(文藝春秋)に,当番組に対するコメントがあった(P.142).
「奇跡の詩人」は、重度障害児の流奈君が母親のおもちゃにされているかなしい番組である。母よ、脳障害児の右手はマウスではない。勝手にクリックするな。
たった2行にしてこの鋭いツッコミ.さすがである.
(2002.04.28.記)(2003.01.07.更新)