
いよいよ大詰め.オープニングの画像もフレームを分割したり縦横にずれていったりで,物語が大きく動き出したことを暗示する.もう戻れない.逆に言うと,柴田純の奇怪な場面はほとんどなく,多少のボケシーンがあるといった感じ.まぁやむないか.
目黒殺害を目の当たりにし,ついに朝倉への復讐を決行する真山.夜,首都高新宿線南元町の高架下で朝倉と対峙する.しかし,幻覚に悩まされ,しばしひるむ.改めて銃を構える真山だが,こめかみに不審な赤い光線が当たっている.
柴田,中央線下のトンネルから走ってくる.「真山さん!」
斑目「撃て!」
数発の銃弾が真山をかすめ,一発が肩に当たる.
そこへ柴田が飛び出して,真山の前に立ちはだかる.両手を開いて大の字になってSWEEPを遮る.
斑目「柴田,どけ!」
柴田「どきませーん! どきま…」
SWEEP,威嚇射撃.一発が柴田のコートの袖をかすめてゆく.
柴田,恐る恐る左手を見る.弾丸にむしられ,穴のあいたコートの袖を見つけて,そのまま気を失い,バッタリ倒れる.倒れる柴田を尻目に真山逃走.
斑目「追え!」追うSWEEP.
暗がりに隠れていた朝倉が柴田に寄る.「柴田さん」
柴田,倒れたまま目を見開き,「どきませーん!」気を失って倒れていたことに気付いていない(笑).

「大切な先輩」とはいえ,銃を持った連中の前に大の字になって立ちはだかるなんて,そうそうできることではない.すごいね,柴田.もっとも,弾丸がかすったら泡くって気絶しちゃうところが,相変わらずだけど.しかしあれじゃ後頭部打って危険だぞ(蛇足).倒れた後も文字どおり大の字っていう漫画的なノリはいかにも『ケイゾク』らしいところ.
余談だが,あの距離で,レーザーポインターで狙って,普通外すか?>SWEEP.
(1999.05.05.記)
有給がないので二係の面々に置いてゆかれた柴田.無意味に金切り声を上げて彩にしばかれる.彩と車で出発.車はトヨタがスポンサーだからカローラ.
SWEEPの無線「真山らしき男の目撃情報,3日,03時15分,晴海橋方面から木場方面へ移動.G2ポイントに配置後,G3に移動のこと」(聞き取りに少々自信なし)
車中,彩の真似してタバコをくわえ,火をつけようとする柴田.結局つかない「熱ゃ!」.彩が自分のタバコを柴田に渡す.
柴田,一口吸って,「デカダマシイですね」そして,「ゲホ,ゲホ,ゲホ,ゲホ」お約束通りむせる.
しかし,彩から受け継いだデカダマシイって,こんな時しか出番ないのか? 実際,肝心な時には出てないよな.
(1999.05.05.記)
千代田線乃木坂駅三番出入り口で彩の車から降りる柴田.
彩「とりあえずあんたはこの地下鉄乗って警視庁へお帰り,絶対一人になったらあかんで.どっかその辺におるおばちゃんに紛れて行動し.あと,駅のプラットホームには気をつけて.押されて殺される危険性あるから」
柴田「彩さんは?」
彩「私は大丈夫.後で二係で落ち合おう」
柴田「はい」

そんな彩の忠告に従わず,インターネットカフェに立ち寄る.
柴田,入り口でいきなりけつまずいて,他の客にぶつかる.
客「あ,あ痛て!」,柴田「あ,ごめんなさい.す,すいません」
柴田「すいません,あの,30分だけお願いしたいんですけど」
店員「あ,はい,どうぞ」
柴田,真山の居場所について,デタラメな情報をいくつも朝倉にメールする.
柴田「すいません,ありがとうございました」と言って,立ち去るとき,他の客の顔をバッグではり倒してゆく「あごめん(なさい)!」
これは柴田のドジを出しすぎな気がして,痛々しくて笑えなかった.
なお,柴田が流した欺瞞情報は田端駅前の丸池に立ち寄り,ビジネスイン俵屋に偽名宿泊,上野の野間医院に来院,代々木駅前で目撃,巣鴨にも寄り,中野駅前でタクシーを拾い,どこかの駅前の薬局で薬と包帯を購入しているといったこと.ま,多分効果なかったろうけど.
それから,朝倉のメールアドレスはばっちり分かる.
(1999.05.05.記)
真山からの電話で朝倉に「7年前に撃った場所で待っている」と伝えろと頼まれる柴田.二係は地下のはずなのになぜか携帯が通じると思ったら,この伏線だったのね(読みすぎ).やむなく朝倉にメールを出す柴田.背後,資料の棚の間を何者かが動く.
受け取ったメールを見て朝倉,「死ね!」.
柴田の背後でもう一声「死ね!」.
ナイフが柴田の背中に刺さる.柴田,何かに気付いて背中を触る.左手にべっとり血.
柴田「何じゃこりゃ?」
手の匂いをかいでいるうちに意識を失って倒れる.
あんた鈍いにも程がある.というのは置くとして,ここでジーパンこと元祖柴田純の名セリフが出てくるのはほとんどお約束か.血を見て匂い嗅いじゃうのがキャラクター.子供っぽいとか幼児的とかいう以前にほとんど動物的.なお,柴田の背後で聞こえる声,MDに録ってよくよく聞いてみると渡部篤郎の声のような気がする.背後で蠢く人影も背格好は真山に近い.でも状況からも凶器所持してた人物ということでも犯人は谷口なんだよな.ちょっと残された謎.
それから,刺さったナイフを自分で抜いて,「オラ,忘れ物だ」といって犯人に放り投げる,というのは,別のキャラだね.同じ松田優作だけど.
(1999.05.05.記)(2003.03.22.更新)
瀕死の重傷を負った柴田.手術後ICUに寝かされている.そして深夜.なんと壺坂がICUに忍び込んで来た.事件の状況を詳しく説明する壺坂.広告紙の裏にメモをとっているあたりが演出が細かい.モノを大切にする世代.『惑星ソラリス』でハリーの置き手紙もそんなだったな.あれも泣けた.
壺坂「物証も勢揃いだ.オールスターズだな.まずお前を刺したナイフと谷口を刺したナイフは同じで,すでに押収済みだ.はぁあ,チェッ.目黒はよ,毒を飲まされたコップからな,真山の指紋.一ヶ月前に殺されたルポライターのKEE.凶器のボーガンの矢はな,真山が所持してたものと同じ機種だ.立て続けに,3人殺したことんなる.お前が死んでりゃ4人だ.しかもなぁ,あいつは過去に,妹をレイプした男3人を自殺に見せかけて,チェッ,殺した疑いも残ってんだよ.やったよね,あいつもねぇ.これであいつも,歴史上の人物の仲間入りだ.連続殺人鬼警察官.かっこいいねぇ」
柴田「本当にそうなんでしょうか?」
壺坂「全ての物証が,犯人は真山だと物語ってんだよ.目撃者もいる.動機もある」
柴田「でも」
壺坂「何だよ」
柴田「私真犯人は別にいると思うんです」
壺坂「物証あんのかよ」
柴田「ありません.でもそう思うんです」
壺坂「お前なぁ,そんなふざけた理屈を裁判官に向かって言う自信あんのかよ」
柴田「いいえ」
壺坂「じゃどうすんだよ」
柴田「どうしたらいいんでしょう」
壺坂「そんなことも分かんねぇのかよお前」
柴田「すいません」
壺坂「俺がなんのためにこんなところまでやって来たと思ってんだよこの野郎」
柴田「教えて下さい.私はどうすればいいんでしょうか」
壺坂「百の物証よりもな,千の証言よりも,てめぇの二つの目ん玉を信じろい.日本中の検事や裁判官をな,全部敵に回してもな,ビクともしねぇ真実を,お前のその目ん玉なら,見つけだせるかも知んねぇ.お前が今まで,その目ん玉で見て来た真山を,まっさらな気持ちでよぉく思い出すんだ.どんな男か.お前の目ん玉が一番よく知ってるはずだ」
壺坂,帰り支度をする「えぇいしょ.パイナップル食えよ」
警報のベル.振返る壺坂.柴田が立ち上がっていた.首にマフラー,手にバッグとコート.
壺坂「うぇぇ?」
柴田「私ちょっと行って来ます.私のこの目で,真実を見て来ます」
彩「ちょっと待ちいな」
壺坂「待てねぇな,こっちは急ぎなんでねぇ」
彩「冷たいんとちゃうの?」
壺坂「斑目とは分かれたと聞いてたがな.SWEEPの木戸彩さんよ」
彩「とっととくたばれ,このセクハラおやじ」
壺坂がワゴンに何か積込み,出発する.
警報に気付いて看護婦がICUに駆けつける.
看護婦「柴田さん?」無人のベッド.床の血溜りに気付く.「いやぁ!」
ドアから覗く斑目「チィッ」
いや,必死で立ち上がって「私ちょっと行って来ます」といつものセリフを言う柴田.その表情は無茶苦茶いい.美しい.さすが集中力の女優,中谷美紀というべきか.痛みのあまり恍惚とした表情.澄んだ瞳.サブタイトル「二つの眼球」に相応しい名場面.
そらそうと,立ち上がっただけであんなに血が出てたら,病院抜け出してもとてもじゃないが長く動けないと思うんだけど.ちょっとその辺,演出がやりすぎじゃないかと思う.
壺坂がICUに入っていきなり言うセリフ.「飼ってる犬がよう〜」はただのフカしだと思って聞き流しそうになったけど,よくよく考えたら元ネタはあれか? 隣のサム・カー老人の飼ってる犬の命令に従ってニューヨークのアベックを次々銃撃し,6人を殺した連続殺人鬼.「サムの息子」ことデヴィッド・バーコウィッツ.彼によると,隣の犬には6000年生きてきた悪魔がとり憑いていて,犬の吠え声を通して殺人を命令するとか.単に犬が何か言うだけでなく,「歴史上の人物の仲間入りだ.連続殺人鬼警察官.かっこいいねぇ」という壺坂のやけにマニアックなセリフがあるのも見逃せない.
(1999.05.05.記)(1999.07.15.更新)
序盤,朝倉と対峙した時と,中盤,五反田の池上線下のトイレで真山は幻覚に襲われる.また,廃屋に隠れてビデオを見ている時も,ビデオの中の沙織が「コ・ロ・セ」と笑って語りかける.
この辺,デビッド・リンチとか本気の監督だと,解釈なんて諦めた方がいいんだろうけど,堤監督ならもっと条理が通る演出をするだろうということで,何の象徴か探ってみた.
首都高の高架下,朝倉の前に立ちはだかる沙織の亡霊.これは,真山の無意識が,目の前の人物が本物の朝倉でないと気付いたことの象徴だと思う.あるいは,オカルト的に,沙織の霊が真山に,こいつは偽物だと伝えているのか.
恐らく,真山は真の朝倉に相当精神を束縛されているはずで,だからこそ,毎日監視していたにもかかわらず,追っているのが偽の朝倉だと気付かないでいたのだろう.朝倉の狙いは,真山が偽の朝倉を射殺し,SWEEPに処分されることのはずだ.しかし,その偽朝倉を追い詰めた場面で,朝倉がかけた暗示はほころびかけている.何故朝倉の暗示が完璧でなかったのかは追って考えてゆきたい.
これは,真山の良心の象徴だろう.相手が誰であれ,人を撃つことに対する良心の仮借.真山を朝倉の術中から解き放ったものは,一つは真山個人の人一倍強い良心だと思う.ちょっとカッコ良すぎだけど.
まっ赤なエフェクトをかけた画面を走ってくる羊.9話で,日比谷公園の噴水のそばに座っている柴田に語りかけた,彩のセリフを聞いて気がついた.
彩「こらこら,何湿気た顔してんのよ.春先に家出した少女と間違われて補導されんで」
家裁前交差点を行き交う人々を見ながら.
彩「羊の群れに見えるやろ.善良な白い羊の群れ.その中にな,一匹だけ赤い羊がおんねん.仲間食い殺して,返り血を浴びたまっ赤な羊が.一匹な.なぁ,その赤い羊探しに行こうか」

つまり,赤い羊とは真犯人.真の朝倉.その悪意の象徴.序盤の幻覚で走り去るのは,真の朝倉が逃げ延びてノウノウとしていることを示している.悪の象徴が「赤い羊」って,映像的にすごいカッコイイ.そらそうと,羊は1頭,2頭と数えるんじゃないの?
ところで,「朝倉」って名前はもしかして,『蘇る金狼』から?
どこかのBBSでどなたかがおっしゃっていた説.赤婆は金魚の象徴とのこと.テレビは水槽みたい.事件の経過を冷静に見てきた,長生きの金魚.真山に,落ち着いて振り返れと諭しているのか.
沙織と戯れる真山,一つは真山の沙織への愛情だと思うし,もう一つは,その愛情を利用して朝倉がかけている暗示ともとれる.ビデオの中で沙織が「コ・ロ・セ」とささやくのは,偽の朝倉を,シナリオ通り殺せという真の朝倉の司令なのではないか.そもそも,KEEを通してビデオを真山に届けたのは,真山の殺意をあおって偽の朝倉を殺させるための作戦だろう.

(1999.05.08.記)(1999.05.21.修正)
序盤の幻覚のシーン,まっ赤な取り調べ室で招き猫に覗かれながら壺坂の尋問を受ける真山.証拠の,現場に落ちていたとされる薬莢を示される.しかし待てよ,回想シーンで真山が構えているのはリボルバーだ.なぜ薬莢が残ったんだろう.弾丸込め直す程沢山撃ったわけでもあるまいし.怪しい.
(1999.05.05.記)