柴田純 迷場面集


第8話 さらば!愛しき殺人鬼


資料

新宿,都庁付近


名(迷)場面

オフ会で浮きまくる柴田

朝倉のパソコンに楽々侵入できるハッカー柴田だが,なぜかWebの掲示板やオフ会には馴染みがなかった.これはどうも違和感があった.柴田が馴染みがないというより,スタッフが馴染みがなかったのが問題のようだ.エレベーター脇でいきなり2組もカップルが抱き合ってるオフ会というのも,不自然な気がする(「悩み相談フォーラム」ってのもヌルすぎ.って,あまりマニアックな掲示板じゃ視聴者がついてこないか).

それはそうと,オフ会で浮きまくる柴田は強烈だった.

まずは,「放火の既遂と未遂は,独立燃焼説と効用喪失説というのがありまして」と大声で話して相手に飽きられる.いくら刑事の卵たって,いきなりそんな込み入った刑法の話題はなかろう(笑).歴史上の快楽殺人者の話題とか出せば少しは盛り上がるはずなんだけど.

その後,しばらくして,麻衣子とトカゲ男氏と原氏がやってきてしばし会話.麻衣子とトカゲ男氏が席をたつと,柴田,何を思ったかおもむろに写るんですを出して自分の顔を念写はじめる.原氏はそれに特に動じることなく柴田に話し掛けるが,観てる私はすっかり凍りついてしまった(笑).そのタイミングでなぜカメラ? なぜ念写?!(念写といっても,柴田が超能力者というわけではなく,カメラを自分に向ける格好が似てるので,念写と呼んでます.通じなかったらすみません)

続いて,初めて飲んだ酒で妙に笑いだす柴田.これがまたブキミだったが,これは,酒に何か薬が入っていたということらしい(花村紅緒の線で酒乱でもよいのだが).それはそうと,前後不覚になった柴田のセリフがまた強烈(これは回想シーンで出てくる).

「ボーヴォワールとボードレールの違いは何だか知ってますか〜?」

顔はあさっての方向いてるし声も一段低いトーンだし,これは本気でやばい(笑).

ちなみに,広辞苑によると,

ボーヴォワール【Simone de Beauvoir】
フランスの女流作家。サルトルの伴侶で実存主義者。小説「招かれた女」 「他人の血」、評論「第二の性」など。(1908〜1986)
ボードレール【Charles Baudelaire】
フランスの詩人。象徴派の先駆、芸術至上主義・頽廃主義の代表者。 詩集「悪の華」は近代詩の聖典。ほかに散文詩「パリの憂鬱」、 評論「ロマン派芸術論」など。(1821〜1867)

そりゃ確かに別人なんだけど,それで違いというのは何をどう答えればいいんだろう(汗).柴田と話を合わせるのは,すごく大変(笑).

話題の外しぶり,とっぴなしぐさ,緊張しきった表情,どれも妙にリアリティがあって,目が離せなかった.要するにャレになってない.

麻衣子が言うように,「よく見れば可愛い」というのが,劇中では単なるお世辞だったのだけど,視聴者から観るとその通り(中身が中谷なので当然!)なのが,救いではあった(そこが演劇のマジックなんだけど).

余談だが,公式サイトにあるストーリーは本編とだいぶ違っている.脚本は二転三転したらしい.

少し深読み

「ボーヴォワールと〜」のセリフは中谷のアドリブではないかと思う.要するに名前の似ている二人のフランス人作家なわけだけれど,ボーヴォワールといえば「第二の性」,「人は女に生まれない.女になるのだ」.で,女になり切ってるのかはたはた疑問の柴田が,なぜか,ここでこの名前を持ち出している.一方で中谷美紀.『リング』,『らせん』,『リング2』と立て続けにホラーに出て日本のスクリームクィーンを目指す(牽強付会)かと思えば『ハルモニア』,そして今度の柴田純でまた女優としてというか人間としての限界の役柄に挑戦している.その彼女が,「女とは」の問題を真剣に考えていないとは考えられない.その一つの結論に柴田純があるとしたら,すごく興味深い.彼女なりにものすごく(多分両性に対して)皮肉の効いた答えを提示しているのではないかと,フと思う.

と書いてから,週刊文春1999年4月15日号の小林信彦氏の記事で改めて脚本家が西荻弓絵という女性だと思い出した.だから,あのセリフはアドリブでないかもしれない.そして,柴田純という主人公を徹底的に奇怪な人物に描くことで何事か企んでいるのは,主犯格がこの脚本家だと見て間違いないだろう.もちろん,中谷美紀が重要な共犯者であるのも事実だが.さらに,「それがこの事件(いやドラマだ)の面白いところなんです」と思うのが,あのヘンな主人公がなぜか視聴者の親しみを呼んでいるところ.中谷美紀も,最初はどうだったか知らないけれど,後のインタビューを見るとかなり嬉々として演じていたことが分かる.要するに外見や性格をいかにも人気を呼びそうなキャラにしないで,いや,汚い身なりや頭がよすぎるところなど,むしろ嫌われる要素を盛り込みつつ,愛される主人公を創造した.テレビドラマの世界が持つ強固な枠組みを一つぶち壊したと言えるかもしれない.

親しみを呼ぶなんて他人事みたいな言い方をしている場合ではない.自分自身ここまでキャラに思い入れしたのは実に久しぶりのことだ.距離感をつかむのにひどく苦労している.いちおう毎日(赤ん坊と)風呂に入っている自分だが,服装や整髪にはてんで興味が湧かないとかカバンに色々詰め込んでしまうとか手ぶらじゃ出かけられないとかいったところとか妙な共通点があって困る.

なお,参考になるWebサイトをいくつか探したので,ご興味のある方は当たられたし.

ボーヴォワール
SIMONE DE BEAUVOIR
慶應義塾大学大学院生,明治学院大学 国際学部 非常勤講師の佐藤文香氏のサイトにある解説.
ボードレール
助教授-森宗崇
東亜大学のサイトにある,同大学助教授,森宗崇氏を紹介するページ.氏は専門分野が「十九世紀フランス文学;フランス語」で,ボードレールも研究している.ただし,研究成果はまだWebで公開されていない模様.
Charles Baudelaire
Altavistaの検索でヒットしたボードレールの解説ページ.

ところで,麻衣子の「よく見れば可愛いんだから」って,さりげなくキツい台詞.朝食の無茶なメニューといい,さりげなく柴田への憎しみが感じられる.もちろん朝倉の策略の断片だと後で分かる.

謝辞

最初,「『ボードワール』が分からない,『人間について』という本を出しているらしい.それ以上のことはネットを探しても分からない.どなたかお教え願いたい」と書いた所,3/31にさっそく,正しくは「ボーヴォワール」とのご指摘をいただきました.また,4/2にも同様のご指摘を受けました.どうもありがとうございます.4/2にメールして頂いた方は,「ホウカの〜」の会話についても情報をいただきました.重ねまして,どうもありがとうございます.

以前「二人のフランス人女流作家」と書いていたところ,ボードレールは男性ではとのご指摘を受けました.確かに「シャルル」は男の名前ですね.どうもありがとうございます.柴田の質問の答えは,「ボーヴォワールは女でボードレールは男」というのがまずあるわけですね.いつか原典あたってみますm(..)m.

(1999.03.28.記)(2002.09.27.更新)

耐熱仕様

オフ会で意識を失った柴田,目醒めるとそこは,ラブホテルの一室だった.蛍光灯の下,例によってホワイトバランスをとっていないので緑色の顔をしながら(緑のライトもあるようだ),

柴田「ラブホテル?」
布団の中をさぐる柴田,手を出してみると血がついている.血….
柴田「もうお嫁に行けない.サヨナラ,私の,ダンナ様…」
と嘆く.が,すぐに.
柴田「アレ? 服着てる」
思い切って布団をはぐと,そこには原の死体があった.

歌舞伎町の某ホテル

よく分からないけど)ラブホテルでだ,あれだけ厚着して,しかも布団かぶって寝てて,汗ひとつかかない.柴田,寒さに強いだけでなく,暑さにも恐ろしく強い.柴田スペシャルの効能か(もういいって).

(1999.05.20.記)

柴田の辞表

唐突に,二係の柴田の机の上に置かれていた辞表.文面は以下の通り.それにしても,東京大学の封筒に東京大学の便せん.必ず何かが狂ってる(笑).

辞 表

 刑事を女一生の仕事として
続けていく自信が無くなりました。
 皆さんと過したこの二ヶ月間は、
私の二十四年間の人生の中で最も
幸福でスリリングな時間でした。
 草葉の陰からみなさまのご活躍を
お祈りしています。
 さようなら。お元気で。

柴田 純

署名には三文判が押してある.名前の右に東大のマーク.

柴田の字は意外に上手.角張っていて力強い.さすがCM撮影に万年筆を持参するだけのことはある(伊藤園98年冬,手紙編,モンブラン2本とインク持参).槙田仁:『筆跡から性格がわかる』(ブルーバックスB1190,1997年)に照らすと,E型のパーソナリティが現れているように思う.クレッチマーの体系分類で言うと粘着気質.中谷美紀の,意外にグラマーな体形と矛盾していない.E型の特徴の一つとしてこの本では以下のように書かれている(P.72).

 「粘り強い」ことが主な特徴。エンジンのかかりは遅いが徐々に調子を出す、いわゆるスロースターターだが、一つのことに熱中すると、やりとげるまでは他のことには心を奪われない。しかし、まじめすぎるきらいがあり、視野が狭くなることもある。

この本では,E型と考えられる芸能人の例として美空ひばりや松阪慶子,和田アキ子などが挙げられている.和田アキ子と中谷じゃかなり違う気がするが,上記の文にはちょっと納得することがある.気質の分類は別にその人のすべてを規定するわけではなく,ましてその人を値踏みする材料ではない.これぐらいの幅は含まれてしまう広い分類なのだろう.もちろん,「この人はE型だからS型との相性は」とか,「山羊座でE型の人の今月の運勢は」,とかいったことを断言するのはナンセンスだ.

(1999.06.27.記)(1999.06.28.更新)

ババシャツ

オフ会の話を聞いて態度が豹変する彩.うかれながら柴田に,

彩「<略>柴田あんたそんな汚い格好で行くつもり?」
柴田「いけませんか?」
彩「あたりまえやろ合コンやで.イケイケの特攻服着ていかなどないすんのよ? もっとここの胸がこ〜うなってここがキューっとなった…」

PINK HOUSE(らしい)の試着室にて

柴田「キューですか?」
彩「ん〜」
柴田「キューですか?」
彩「ピンサロかちゅうねん」
柴田「キューですか?」
彩「今日はこの辺にしたるわ」
麻衣子「うん」

彩の「ここがキューっとなった」に合わせて,試着室の柴田が「キューですか?」しか言わないのが上手い.

つい最近気付いたのだが,「ピンサロ」のスパンコール服のとき,あのフィギュアスケート選手みたいなスケート肌色のシャツがみょ〜に不自然だと思っていたのが,ようやく分かった.柴田の下着だ! 本編から既にババシャツ愛用だったとは(笑).しかもスカートの下は黒タイツに白靴下.時間差をもって炸裂する破壊力のあるボケぶり(今頃気付いてるのは私だけか).最初のドレスも胸元に思いっきりババシャツが見えてるし.

してみると,8話のこんなに下着が見えるあたりは,5話のコケるシーンと並んで最高のお色気シーンか.女どうしとはいえ,下着丸出しで試着室から出てくるのもすごいな.

下着といえば8話は真山も.斑目にプラ弾で撃たれた膝.ズボンの穴から見える白っぽい布地は,もしかしてモモヒキでは? 確証はないけど.

(2000.02.23.記)


余談

時系列

最初に殺されたのは嶋村じゃなく原でないと順番がおかしいはずだが.

ホテル→嶋村の家→柴田の電話→ホテル

それとも原君は朝なぐり殺されるまで柴田と二人っきりで本当によろしくやっていたのか? それともホテルに着くなり原も寝てたのか? 手も出さんと(笑).ひと眠りして朝シャンの後殴り殺されたと.どうも原殺害までの状況は謎だ.

(2000.02.21.記)



Written by Spangle Maker.