柴田純 迷場面集


第9話 過去は未来に復讐する


資料

むぁいこを返せ〜階段


名(迷)場面

でもご飯だけです

区役所のテニスコートでの聞き込みの後.麻衣子が柴田と朝倉の関係を疑って悩んでいたという意外な事実を知る二人.もちろん彩は柴田を責める.

彩「あんたあかんでぇ,そらあかんわ.親友の彼氏とご飯食べたら,そらあんたむかつかれるで」
柴田「でも本当にご飯だけです.おかず食べてませんし

もちろん,普通「でも本当にご飯だけです」というのは,「それ以上深い関係はありません」といった意味のはずだが,深い関係という概念をいまいち把握していない柴田なので,文字どおりの意味で使っている.しかし,それじゃ本当にR田中一郎だよ(笑).

(1999.03.25.記)(1999.05.04.修正)

コンニャク女

彩「でも端から見たら立派なデートやろ?」
柴田「でも,街でたまたまばったり会って」
彩「なーんでこんな女誘ったんかな,下心,まさかな,いやでも,男はムラムラしたらコンニャクでも使うっちゅうからな」
柴田「コンニャクを何につかうんですか?」

何に使うんでしょうか.ぶははははははと早乙女管理官の真似をしている場合ではなく,柴田,コンニャク並でいいのか?

続いて.

彩「それともあれか」
柴田「あれ?」
彩「朝倉さんはボチボチ別れたかった.だから,麻衣子に,柴田に気があるうふに見せたかったっちゅう線も,まぁ,考えられなくもないな」
柴田「そんな」
彩「あ」柴田の髪についたゴミをとる「でもこんな女に負けたら,そら自殺もするわな」
柴田「はぁ?」髪の毛のゴミもイヤミも全然気付いていない.

しかし柴田の髪の毛のゴミはワザとらしすぎ.この辺の分かり易い誇張は『ケイゾク』の見所の一つだと思う.とあるBBSではクモの巣じゃないかという声も出た.あながち考えられなくもない.

ところで,頭にクモの巣といえば実は「髪の毛の中のクモ」という都市伝説がある.以下はJ.H.ブルンヴァン先生の『消えるヒッチハイカー』(新宿書房)P.120から.

「ビーハイブヘアーの女の子」の話(出典不明)
 ある少女が髪の毛を完璧なビーハイブヘアーにしようとした。その仕上がりに満足した彼女は、それを崩さないようにしようとヘアスプレーで固め、決して髪の毛を洗おうとしなかった。すると、虫(バグ)が彼女の髪の毛の中に入り込み、半年後に脳を食いやぶり,彼女は死んだ。
教訓−−髪の毛はちゃんと洗いなさい。もしも、あなたが死にたくないならば。

ビーハイブヘアーはともかく,柴田の頭だとちょっとありそうで恐い.風呂入れよな.

(1999.05.04.記)

真山の真似

真山が目黒を殺害したとの報を受ける二係.柴田はなぜか,真山の席で,机に足を載せている.珍しく行儀が悪いと思ったら,どうも真山の真似をしているようだ.真山になりきって彼の行動を推測しようとしているのか,単に真似したかっただけか? 番組中には一切説明はない.ところで,この場面で真山のタバコの銘柄が分かる.

駒形橋,柴田の現場検証

(1999.05.04.記)(2003.03.22.更新)

余談

名脇役・木戸彩

テニスボール

区役所のテニスコートに聞き込みに来た柴田と彩.柴田がテニスコートを斜めに突っ切ってずかずか歩いて行き,彩がそれに続く.柴田の無神経さもさることながら,なぜかボールは彩にばかり当たる.

彩「ああ危ね,つー,おおイテテテテ,危ねー,ちょっと柴田待ってよ,ちょっと,柴田! ちょっと待って,イテテテテ,イテッ,ちょっと,柴田! イテテテテ,何で私ばっかり当たんのよ? イテッ,イテッ,」

ズッカー兄弟に通じるドライなギャグで好き.『ケイゾク』はコメディとして見ても,ツボをなかなか押さえている.そりゃそうと,テニスしてる人達を見たら,露骨に彩狙ってる(笑).その辺まで計算したギャグか?

携帯も書いときました

朝倉のマンションの屋上.

柴田「あのう,先程,区役所の南さんから伺って来たんですけれど,麻衣子,私とあなたのこと疑って悩んでいたらんしいんです.どうしてそういうことになってしまったんでしょう」
朝倉「僕にも,何がなんだかさっぱり」
柴田「あなたと麻衣子は愛しあっていたんですよね」
彩「アホ,そういうときは,うまくいってたんですたかとか,そういうふうにきくもんや」
柴田「どうなんですか?」
朝倉「愛してました,心から」
彩「じゃああの,事件の夜に,麻衣子さんが柴田と一緒に合コンに行くっていうことも,もちろん,知ってましたよね」
朝倉「オフ会ですよね」
柴田「オフ会って,何の会か知ってたんですか?」
朝倉「ええ」
柴田「あれは確か,悩み相談フォーラムでした.つまり,あなたは麻衣子が悩んでいたことを知っていたと」
朝倉「ええ,僕が言うのもなんなんですけど,彼女,ノイローゼっぽいところがあって」
彩「ノイローゼ?」
柴田「麻衣子がですか?」
朝倉「最初,時々誰かに見張られている気がするって言うようんなって,そのうち,僕を守るために,自分が見張りをするんだって,でも,本人,言ったことも覚えてなかったりして,それで,カウンセラーに通っていたんです」
沈黙.
朝倉「彼女,本当に人を殺したんですか?」
柴田「それは,確かだと,思います.でも麻衣子,誰かにそうさせられたんだと思います」
朝倉「誰かに?」
柴田「はい」
朝倉少しつらそう(そりゃ,柴田の謀殺に失敗し,事件の背後関係もけっこう感づかれてるんだから,つらいよな).
彩「あの,大丈夫ですか?」
朝倉「すいません,今夜のところは,一人にしていただけませんか」
彩「分かります.あの,柴田,帰ろ.私でよければ力になれると思うんで,あの,携帯も書いときました.じゃぁ」
柴田「あの,最後に一つだけきいていいですか」
朝倉「はい」
柴田「オフ会って合コンみたいなものですよね?」
朝倉「ええ」
柴田「愛する彼女が,合コンに行くのって,ふつう止めたりしないものなんですか?」
朝倉「普通だったら,やめろっていいますよ.でも,たまには気晴らしさせるのもいいかと思ったんですよ」
柴田「行くなって言ってほしかったんじゃないんですか!」
気まずい雰囲気.泣く柴田.
彩「そりゃま,色々やからね.行こう」

一見真面目なシーンなんだけど,前のシーンで朝倉が麻衣子と別れたかった説を思いついた彩,朝倉に携帯の番号教えて,さりげなく自分をアピールしている.さすがSWEEPの女.抜け目ないね.

(1999.05.04.記)

マインドコントロール

麻衣子の通っていたカウンセラー(森口瑶子)に聞き込みに来た柴田.こんな話を聞かされる.

森口「大沢麻衣子さんね,彼女少し被害妄想的な傾向があって」
柴田「被害妄想」
森口「時々誰かに脅迫的に操られてるような気がするって」
柴田「やっぱり.で,その,誰かって誰なんですか?」
森口「そこまでは」
柴田「しかし先生,暗示や催眠術で人を殺すことができるんですか?」
森口「もちろん,催眠術で人なんて殺せないと思います」
柴田「そうですか」
森口「でも,意識や記憶の刷り込みによって,憎悪をふくらませたりさせれば,あるいは可能かも」
柴田「と言いますと」
森口「本当に憎いと思わせることがもし可能だったら,その結果殺人に至ることは考えられるでしょう.人の感情や記憶なんて本当に脆いものなの.宗教や,恋愛感情,親子の愛情とか,その人の価値観の座標軸を揺るがすような暗示をかければ,確信犯的な殺人者を作り出せるかもしれない.実際にそういった実験をしている研究者のグループもあるらしいの.まぁ,よほどの専門的な知識と技術が必要でしょうけど」

以前ならそんなバカな,と思ったところだけど,何しろ松本サリン事件と地下鉄サリン事件の後だからなぁ.シャレになってない.最近また何か怪しい動きがあるようだが.お前らもたまには風呂入れよな.

ただ,巧みに嘘が盛り込まれている.人を操って殺人者にするというのだから,一番有名なオウム事件に触れないのは,まぁフィクションだから仕方ないにしろ,マインドコントロールなり洗脳なりに言及しないのは不自然だ.一方,「実際にそういった実験をしている研究者のグループもあるらしい」というのは,別のドラマの『沙粧妙子』の内容を指しているのか.最終回で「梶浦だわ」というのもあったし.

なぜここでマインドコントロールや洗脳を出さなかったかといえば,多分,これらが集団で行う人格改造だからだろう.ドラマではあくまで,快楽殺人者である朝倉個人が,人を操っている(偽朝倉を使って間接的に麻衣子を操るシーンもあったが).また,マインドコントロールや洗脳は組織的な活動ではあるが,何も特殊な能力は必要とされない.各人がする作業は,組織の本性を隠して被害者に接近したり,人を寝かせなかったり食事を制限したり軟禁状態にしたり情報を遮断したり個人情報を握って脅迫したり脱会すると地獄に落ちるぞと脅したりといったことだ.しかし,たった一人の人間がこれをすべて実行することは,ほとんど不可能だ.というか,マインドコントロールは,人が,組織に属したいという本能的な欲求を巧みに悪用することで,効果を発揮する.

恐らく脚本家西荻弓絵以下スタッフは,マインドコントロールなどについては,ひととおり調べているはずだ.それでなお,嘘をついて物語を面白く仕立てている.でなければ,「マインドコントロール」という拡大解釈しやすい単語は,便利だからきっと使うはずだ(実際,「マインドコントロール」を勝手な解釈で使っている人のなんと多いことか).そして,実在のマインドコントロールにはあえて触れず,むしろ,思い切ってオカルトを取込んでいる.朝倉に,人を自在に操る超能力を持たせたのだ.一歩間違えれば今度は「超能力」が何でもありワイルドカードとなってしまうところだが,このドラマはギリギリのところで,そうなるのをこらえているように思う.

現実には,マインドコントロールや洗脳で殺人者を仕立てあげるのは,何もオウム事件が最初ではなく,また,珍しいことでもない.マンソン・ファミリーによるシャロン・テート事件や人民寺院事件,ブランチ・ダビディアン事件など,海外にはいくつも有名な事件がある.日本でも,ミニ宗教がらみの殺人事件は別冊宝島410『殺人百貨店』によると他に2件ほど起きている.確かに,化学兵器で無差別テロを実行したオウムの凶悪さは際立っているのだが.

マインドコントロールおよび破壊的カルトについては,別のディレクトリにあるリンク集を参照されたい.

日本でのミニ宗教がらみの殺人事件のうち1件は,1995年に起きた福島県須賀川市の「女祈祷師”悪魔祓い”殺人」.例えば『週刊実話』誌1999年10月14日号に朝倉喬司氏がこの事件について書いている.もう一件は1987年に,神奈川県藤沢市で起きている.

まるっきり余談だが,ここはカメラが二人の間をぐるぐる回る,長回しの大変なシーン.『うる星やつら ビューティフル・ドリーマー』のさくらと温泉マークの会話を思い出した.「この汗は,冷や汗なんですかねぇ.さっきから聞こえるこの音は,幻聴なんですかねぇ」.

(1999.05.04.記)(1999.10.03.修正)



Written by Spangle Maker.