スピルバーグ御大によるコンバット風戦争映画. 予算たっぷり&ツボを押さえた作画で,戦闘シーンはかなり見ごたえがある. 2時間半を超える上映時間も飽きない.『ジュラシックパーク』とか 『ロストワールド』とは大違い(笑).おまけに, 軍のプロパガンダのためのライアン二等兵救出作戦で, トム・ハンクス含めメインキャラの大半の兵士が命を落とすという戦争の 不条理を前面に出し,他のアメリカ兵もバタバタ死んで, 「反戦」(というか単に戦争の陰惨さか.考えてみりゃ「戦争をやめろ」って 映画じゃないな)の大義名分を前面に打出しているので, この映画を「面白い」と言っても後ろ指さされる心配がないのもよい.
というか,戦争のネガティブな部分を正面から書くか, 皮肉として「戦争賛美」を描くか,これだけの違いだよな.『スターシップトゥルーパーズ』と比べると. それで映画の評価がこんなに違うとは.朝三暮四.もっとも, 『プライベート・ライアン』は実在の兵器が活躍するので, 軍事マニアが感情移入しやすいというのもあるのだが.
戦闘シーンは,例えばロバート・キャパとか,戦時中の記録写真をだいぶ 参考にしたような気がする.上陸前の兵隊がゲロ吐いてるのも, キャパの『ちょっとピンぼけ』に出ていたし.カラーフィルムの色合いも, 当時のフィルムみたいなシブくて偏った発色にしてあって,独特の雰囲気がある. 一方,フィルムの感度は相当高感度のものを使っているらしく, 走っている人影などがブレない.そのカクカクした動きがまた, 異様な雰囲気をかもし出していた.
それにしても冒頭のノルマンディ上陸作戦の臨場感はすごい. 見ている自分も,おろおろして鉄骨の後ろに飛びこんで隠れたい気分になった.
アメリカ兵がこれだけバタバタ死ぬアメリカ製戦争映画はそうそうないと思うが, ドイツ兵も負けず劣らずバタバタ死んでいて, このドイツ兵の逃げるのがヘタなところは, 案外『コンバット』なんかから大して変っていないなと思った. 逆Uボートの逆転劇も,戦勝国のゆとりってやつだ.この辺ちょっとくやしい.
2004年5月にTV東京で2週にわたって放送してるのを見た.
以前不覚にも「反戦映画」とか思ってしまったのだが, 戦争の是非なんかこの映画は問うてはいないかも, との疑いが間違いではないのかもと再確認した.
任務が理不尽なのは多分以下の2点につながる.
この映画の位置づけとしては,やはり「スピルバーグが作った『コンバット』」. 『コンバット』と同様,これは「反戦」「戦争賛美」でくくるべき作品ではない.
日本人は,戦争映画をすぐに「反戦」か「戦争賛美」かに分けて論じてしまう 傾向があるという指摘がある.ちょっと前まで自分もモロにそれに該当していた. 今では映画を評するのに極力そういう分類はしないよう心がけているが, だからといって上記のような分類を無意識にしていないとは限らない.
何が日本人に,戦争映画をそういう政治的な見方にしてしまうのか, 少々考えている.
『フルメタルジャケット』まで「反戦映画」という批評を見て笑った.
『スターシップ・トゥルーパーズ』は評判悪かったし.
映画ではないが,自衛隊を賞賛する不肖・宮嶋の『ああ、堂々の自衛隊』がどことなく気持ちが悪いと評されてしまったりということもあった. ほんのちょっと前,1998年の記事.
スピルバーグというと『太陽の帝国』というのもあって,これは一見, 反日・反戦映画なんだが,どうもそれでくくってしまうとまずい気がする.
映画館で見た時不覚にもボロボロ泣いてしまった学生の頃. もっともそれも「反戦」に感動したのではない. 機会があればこの妙な映画も評してみたいが, 改めて見るのはどうも恥ずかしすぎる. あれでも日本人の描写はリアルにした方なんだろうなぁ(笑). 日本人による外国人の描写も色々あるようには思う.
(2000.02.05.記)(2004.10.30.更新)
オリバー・ストーン監督のベトナム戦争映画.監督の実体験にもとづくリアルな戦争の描写が話題に.確かに,アメリカ映画でありながら米軍の非道を描くあたりは大胆.ジョン・ウェインの『グリーンベレー』と比べるとこの映画がどれくらい気合入っているか分かると思う.
戦場の描写のツボを押さえたリアルさもよい.私の友人たちの間で話題になったのはM16ライフルの持ち方.実際に撃つとき以外は,みんな右手の人差し指をトリガーでなく銃の側面に当てている.銃大国アメリカでは常識だったのかもしれないが,私らはこれで初めてその常識を知ることとなった.その後,エアガンで遊ぶときは,全員人差し指を立てて銃の側面に当てるようになって,なかなか可笑しい感じがした.
(2000.02.05.記)
故スタンリー・キューブリックのベトナムもの戦争映画.
映画は大きく前半後半に分けることができ,前半は海兵隊員の新兵訓練, 後半はベトナムの戦場が描かれる.
前半が無茶苦茶よくできていて面白かった.これ以後, 研修というとこの映画を思い出すようになった.キューブリック監督は, 日本語字幕に対し,わざわざそれを英訳させ,監督自らチェックして, 字幕をまるまる作り直させるという凝り症を見せて話題になった. その甲斐あって,字幕は卑猥語のカタマリとなり, 量も多くて読んでゆくのが一苦労だった.映画史に残る下品な字幕だ.
ハートマン先任軍曹のステキなセリフは,炎のジョニー氏が軍曹語録としてまとめて下さっているので堪能されたし.
対称的に,後半はいただけない.熱帯ベトナムの戦場を, イギリスの工場跡で撮影するという信じられないことをしている. 生えているヤシの木の元気のないことといったらない. フィリピンのジャングルでレーション食わせて撮った『プラトーン』と 出来が違いすぎる.ヘリから湿地を逃げるベトナム人を撃つシーンは フロリダの湿原での撮影.これもアジアらしさが出ていなかった.
クライマックスは一人の狙撃兵のために部隊が足留めをくらい, 四苦八苦してやっとそいつを仕留めるというもの. 仕留めてみたら狙撃兵は若い女性で,銃創にもがき苦しみながら「Shoot me! Shoot me!」と叫ぶ.映画は彼女の望み通り, ピストルで留めをさすという後味の悪いもの.しかしこれ自体は選曲のよさ('Paint It Black')と相まって,特に不満はない.
ただ,狙撃兵に足留めされるというエピソード自体は, 何か原典がある気がする.小林源文氏の劇画, 『パンツァー・クリーク』にそっくりのシーンがあるため. 相手はソ連兵だが.単純にゲンブン氏がこの映画をパクっただけかもしれないが.
英語では;
You goddamned communist heathen, you had best sound off that you love the Virgin Mary, or I'm gonna stomp your guts out!
後半は「腹ワタ つかみ出すぞ!」.
ちなみに「土百姓」は誤り.そんな差別語は存在しない.
アニメの『マリア様がみてる』に濃いキリスト教ネタを期待したが, ただの女子高生仲良しクラブなので最近がっかりしている.
ということで,探してみたら\1500でDVDが売っていたので購入.
『フルメタル・ジャケット』.
反戦映画なのだそうで.
戦争をちょっとでも悲惨に描くと「反戦映画」にされてしまう.
「戦争賛美」か「反戦」かの2通りにすぐ分けたがる日本の観衆.
しかしちょっと待ってほしい.戦争を悲惨に描く映画には2通りがある.
前者を「反戦映画」と呼ぶべきだろう.いわば, 「人間の外側に戦争がある」という思想.
この映画は, 主人公ジョーカーが海兵隊の新兵訓練とベトナムの戦場を見て歩く. そして最後の最後にジョーカーが敵の狙撃兵を射殺する.
ジョーカーはマリア様を信じない. これは無神論者キューブリックの分身とも考えられる. 監督の分身が戦争を見て歩いて最後に敵を殺し,兵士の一員に加わる. ここに戦争と人間が一体化する.「人間の内側に戦争がある」.
あるいは,ジョーカーの胸にはピースマーク,ヘルメットに「生来必殺」. 「殺しを頭に乗せ 胸には平和 変態好みの冗談か?」との問いにしばらくして, 「人間の二重性に関連が...」と答える.「変態好みの冗談」こそ人間.
人間を描く方便に戦争を使っているとも言える. 『地獄の黙示録』と同様,この映画も「戦争映画」からかなり逸脱している. 「ベトナム反戦映画」という分類ははなはだ適切ではない.
先の検索で,なるほどと思う批評記事を見つけたので以下に.
(1999.05.14.記)(2004.10.30.更新)
ご存じブレードランナー.ウイリアム・ギブスンもお薦めの(笑)サイバーパンク映画.私は高校2年の時地元の映画館で観て思いっきりハマった.ストーリーはなんだか分からなかったけど(笑).現在完全版LD所有.原作,『アンドロイドは電気羊の夢をみるか』も読んだ.これもよく分からなかった(笑).
そういえば,1985年登場のマツダRX-7のCMで「ブレードランナーのテーマ」が使われていたっけ.
詳細はこちら.高橋ヨシキ所長の考察は鋭い.
(1999.01.28.記)
中谷美紀初の主演映画.とはいえ,レンタル屋の売り文句は永瀬正敏主演.でも実質はダンカン主演だよな.
中谷は売春をバイトにしているどっかネジの緩んだ女子大生.相当の天然物という設定.もっとも,出すのは背中まで.セリフとしては「もうちょっと頑張ってみよう,必ずできるからさ」なんてのもあるのだが.
まぁ,一言で言うと人工の華原朋美か.永瀬との熱愛生活は小泉今日子に見えるから不思議だ.
1995年だから,ThinkPad 230Csの宣伝で「小さなIBMで、大きな顔ができます」(ホントに大きく写ってるんだこれが(笑))なんてやっていた頃の撮影だ.アプティバで踊り狂っていたり.いつもツボおさえた芸能人使うね>IBM.
クライマックス,テレビのニュースに偶然映る.
女性レポーター「どちらへお仕事?」
中谷「オ○○○商売」
女性レポーター「…」
初主演なんだから少しは遠慮しろよ,そういうセリフは(笑).
鈴木史朗アナとか松田美由紀とか,後の『さんまのカラクリTV』(伊藤園がスポンサー)や『ケイゾク』など,TBS関連の役者も顔を出していた.
同棲相手の中谷が出ていって,内心ホッとしている永瀬についつい感情移入してしまう,ヤバい映画だった.やっぱりすごい女優だ.
(1999.05.15.記)(2003.03.20.更新)