【き】


君を忘れない,ポニーキャニオン

一体どれぐらいの方が覚えていらっしゃるだろう.映画,『君を忘れない』.

役者に唐沢<ぜひ!>寿明,木村拓哉,反町隆史,松村邦彦,水野真紀ら有名人を配した豪華な戦争映画.粗筋は,唐沢寿明演じる隊長が海軍航空隊の各隊からフダつきの隊員を集め,特攻隊を編成し,いくつかのドラマの後,出撃するというもの.

TVで流れたCMでは,飛べる零戦が出ると知り興味を持った.で,ビデオで見たところ,本物ではなく,T6改造機と分かった.古くは『トラ・トラ・トラ』,最近では『太陽の帝国』や『エイセス・大空の誓い』で使われている.識別点は寸詰まりの胴体と後退角の目立つ主翼,主翼付根が水平で,脚位置から外側で上反角がついているところなど.

飛行可能な零戦は1機のみで,あとは3機の実物大の模型が使われた.模型は零戦をそれなりによく摸していた.

全体を通すとさしてマニアックでないこの映画だが,1箇所,海軍の練習機「白菊」が登場する.スタッフの誰かが,「俺こんなん知ってるんだぜ」という声が聞こえる気がする.

十五試機上作業練習機「白菊」(K11W)は九州飛行機が設計,生産し,昭和17年11月に完成,昭和19年3月に正式採用された.単発,固定脚,中翼配置の単葉機で,その外形は映画の書割りの背景にあった通り.798機が生産され,三菱90式機上作業練習機の後継機として,乗員の航法,通信,射撃,爆撃,写真偵察の訓練に使われた.

映画にあるとおり,この飛行機が特攻機に使われたのは事実で,渡辺洋二:『日本の軍用機』(朝日ソノラマ)によると,以下のように書かれている(P.277).

 可憐な名の機練の最後の任務は沖縄特攻。この鈍速、低性能機に二五〇キロ爆弾二発を搭載し、徳島空と高知空の百八名・五十四機が突入した。

また,永末千里という方が『白菊特攻隊』(光人社)という本を書いている(未読).

戦争末期にはどんな飛行機も特攻に使われたとはいえ,こんな低性能の飛行機まで使われたというのは驚きだ(「桜花」とか特攻専用機が開発されたことももちろん驚くべきことだが).これで出撃しなければならなかった搭乗員の心中は察して余りある.それで映画の方なんだけど,搭乗員たちの描き方に,その心中を想像したであろう形跡がどうも見られなかったように思う.後でもう一度見て確認したい.

渡辺氏は前述の本でこう結ぶ.

鹿屋の第五航空艦隊司令部では、傍受した「白菊」来襲の敵通信を聞いた参謀が「駆逐艦が八〇〜九〇ノット(時速一五〇〜一七〇キロ)の日本機を追いかけた」と笑った。この連中を「白菊」に縛りつけて、敵機動部隊へ向かわせてやるべきだったのに。

同感.

謝辞

当初,以下のように書いておりましたところ,

でも,これ,練習機とはいっても機上作業練習機だったと思う.だから,これが特攻隊の操縦者を養成したり,特攻に使われたり,というのは不自然だと思う.

徳島基地資料館を訪れたことのある方からメールにて,「白菊」の特攻隊が実在したことを教えていただきました.また,西村晃さんも徳島の「白菊」の部隊にいたということを教えていただきました.どうもありがとうございます.

改めて手元の資料を探しました所,渡辺洋二氏の本と,エアワールド別冊『日本海軍機写真集』でこれについて言及されており,上記の通り内容を修正しました.資料に当たらずに憶測で記事を書くのはよくないと,今さらながら痛感いたしました.

(1999.08.18.記)(1999.09.05.更新)

恐怖の不時着飛行, Family Flight.

テレビ向け作品.軽飛行機で旅行に出かけた一家が,アメリカの沙漠に不時着してしまう.そこで,飛行機を自力で修理し,滑走路まで作り上げ,脱出するという話.その苦しい状況を克服する中で,長男が父親との対立も克服してゆくという,とりあえずイイ話ではある.

多分困る人も少ないだろうからネタバラししてしまうと,滑走路ができていざ離陸だという朝,飛行機のスターターが回らないという事態になる.前の晩,長男は一緒に来ていたガールフレンドと飛行機のコクピットで話し込んでいた(テレビ向けなので大変健全である).そこで親父が,「お前ラジオをつけたまま寝たな!」と逆上して長男をぶん殴る.しかし怒っていても仕方ない.父親は長男をひとまず許し,手でプロペラを回してエンジンをかけようとする.そして,何度か失敗したのち,ついにエンジンがかかる.しかし,間が悪く,父親は回り出したプロペラにはたかれて倒れ,肩に重傷を負ってしまう.とにかく離陸だ,というので,長男が父親の指導で離陸.そして,飛びながら助けを求め,無線を発信し,近くの飛行場を探す.そこに現れたのが空母.艦載機(確かF-4)のエスコートを受けながら,空母への着艦を試みる長男.結局失敗して,海に不時着となった.

しばらく後,空母の病室で,父親は無事救出され,傷も治療され,ベッドに横たわっていた.長男と打ち解けて話す.その話というのが,「気にするなよ,父さんはアメリカ一の病院に入れたんだ」(大意).ということで,なんと米海軍万歳のラストである.よきかなよきかな.

(2000.02.06.記)

金田一少年の事件簿, 1996.〜

今でこそ『ケイゾク』なんかにどっぷりハマっている私であるが,最初に触れた堤幸彦作品がこれであった.

当時住んでいた大阪から,何かの用で実家に帰っていたとある土曜日,夜9時に手持ち無沙汰でTVをつけたら,まさにこの番組の第1話「異人館村殺人事件」の冒頭だった.いや,インパクトは強かった.ためしに最近,レンタルでもう1回見たけど,やっぱりこの1話はスサマジい作品であると認識を新たにした.トンデモと呼んで差し支えない.

何がって,その強引なストーリー展開,突飛なキャラ,鮮血が絵の具よりまっ赤な派手な映像,荒唐無稽なトリック.何やら,コミック2巻と3巻にまたがる長〜い話を,1話に圧縮したらしい.どうりで感情移入もへったくれもない訳だ.途中黒服や袋ジジイやカラス女の登場も,白黒線画の漫画なら違和感ないかもしれないが,実写で人間がやると大笑い.

でも,2話,3話と見るうち,その娯楽としての開き直った作りや,凝った映像は「なかなかいいぞ」と思うようになった.昔見ていた,天地茂の明智小五郎シリーズを思い出した.ジャニーズファンの多くの少年少女が見る番組なので,エッチなシーンはないけれど.

とりあえず,この,私が愛する第1話の粗筋を以下に書いてみたい.

金田一はじめや七瀬美雪の通う高校.英語の授業.早弁がバレて廊下に絶たされる金田一.一方,女子生徒が指名されて朗読を始める.そこへ黒服の一団と頭に袋を被った老人が乱入してくる.どつかれる先生.老人はなんと女子生徒の父親で,いますぐ連れて帰って許嫁と結婚させるという.止めようとする先生に一枚の写真を見せる.なんと,先生と女子生徒がラブホテルから出るところの写真だ.こりゃえらいこった,と思ったら,生徒達は特に騒がない.東京の学校は進んでるね.ロケ地は小田原の方みたいだけど.金田一の一喝もむなしく,連れ去られる女子生徒.

車で女子生徒の実家へ向かう先生.なぜか金田一と七瀬が一緒.山道の途中に車を止めると,山の中に十文字の道と4棟の洋館が見える.チャチな合成.そこへ謎の女性.黒いドレスと羽飾り,右手に鳥籠,そこにはカラスが! そして親切に十文字村の説明をしてくれる.だけど,4件の家しか見えないのに,村?.

村では翌日の結婚式を控え,4棟の洋館の住人達の宴会が,うち1棟で行われていた.先生達も加わる.女子生徒はいなかった.花嫁は教会で一夜を過す.そういうしきたりだという.密室殺人を予告する,とってつけたようなネタ.一方,その洋館には一体のミイラがあった.そのミイラは体の一部が欠けていた.その家の守り神だという.

翌朝.出てこない女子生徒.教会には鍵が.先生の車のウインチでドアを壊して踏み込むと,ウェディングドレスでベッドに横たわる女子生徒.しかし彼女は首がなかった.密室の殺人事件.泣き崩れる先生.ベッドの周りにカラスの羽が.犯人はさっきのカラス女と疑われる.外に出ると教会の十字架が落ちてくる.そこに血で書かれた犯行声明.犯人は5人目のミイラ.

警察登場.剣持警部,いきなり金田一と顔見知り.

カラス女が見つからない一方,邸宅の1件のおばさんがクスリをキメている最中に殺される.続いてカラス女の家の装飾の鎧からカラス女の首が発見される.鎧の背中にはまたも5人目のミイラからのメッセージが.

女子生徒の父親,袋ジジイが不審な動き.林の中の小屋を焼こうとする.そこへ剣持警部以下主要キャラ.この小屋は覚醒剤製造工場だった.

この事件は当然の報いだという.終戦直後,米国人牧師夫妻がこの地に来た.彼は米軍の放出品のモルヒネを沢山持っていたので,これから覚醒剤を精製し,売りさばいた.これで洋館の住人も村も栄えた.しかし,あるとき牧師は,この商売を止めると言い出した.アセった洋館の主人達は,牧師夫妻を殺し,牧師が育てていた4人の孤児の少女を生きたまま縛って,屋敷もろとも焼き払おうとした.焼け跡には,体の一部の欠けたミイラが4体残った.少女たちの死体だった.邸宅の主人達は,互いに裏切りを牽制するため,ミイラを各々引き取り,事件を闇に葬った.一通り説明した後,心臓発作か何かで女子生徒の父は息絶えた.焼死体とミイラって,全然別のものじゃないのか?

ミイラのトリックに気付いた金田一.焼け死んだのは3人で,1人生き延びた.3人の死体を切断し,うまく組み合わせて,4人死んだように見せかけたのだ.屋敷が焼け落ちる寸前に! そして生き延びた少女に子供がいたことが発覚.その子供とは.金田一の推理が映える.ああ,その少女の忘れ形見が,英語の先生だったのだ.一連の殺人事件の犯人,5人目のミイラは,なんと先生であった.

金田一,教会の女子生徒のトリックをあばいて先生を追い詰める.あそこで死んでいたのは,本当は女子生徒ではなく,カラス女だった.部屋にこもる前,女子生徒はカラス女と服を交換してすり変わった.そして,カラス女を麻酔薬で熟睡させ,女子生徒はケーブルを屋根の採光窓から垂らし,ベッドにひっかけ,先生の車のウインチでベッドを持ち上げ,採光窓まで持ち上げ,そこからカラス女を絞め殺し,首を切断した.う〜,どうやったら,採光窓からの操作でケーブルをベッドにそううまくかけられるんだ.先生の望み通り殺人を敢行した女子生徒.しかしあわれ,彼女は先生に殺され,結局ベッドの死体は本人になってしまう(発見された時はカラス女で,警察が来る前にすり変えたらしい.どーでもいいがDNA鑑定はそんなにすぐできるのか? 指紋調べる方が早いぞ).

先生逆上,銃をもって七瀬を人質にとり,金田一の膝を撃つ.金田一,女子生徒が殺される時抵抗しなかったのは,先生を本気で愛してたからだぞ,と説教タレる.七瀬もらい泣き.先生,キレながら自分の不幸な身の上を語る.母親から,復讐マシンとして育てられたこと.あらゆる殺人術を仕込まれ,最後の仕上げは母親を標的にした最初の殺人であったこと.泣きながら母を殺す,少年時代の回想シーン.その後,銃を構え,次の標的の眼鏡の親父をスコープに捉える.

バン! 一発の銃声.先生,射殺される.撃ったのはファンファン大佐.ここでまた意外な事実.先生はファンファン大佐のせがれだったのだ.つまり,牧師の家が焼き討ちにあった時点で,孤児の1人とファンファン大佐はデキており,将来を約束するどころか,子供までできちゃっていたのだ.さすが大佐.だてにスターリンを演じたわけじゃない.そして,大佐は,燃える屋敷でミイラの細工をし(3人は既に息絶えていた),1人の孤児を救い出した.真相を明かした後,ファンファン大佐も,田宮二郎モードで自らの命を絶ってしまう.死体死体また死体.流血流血.真相真相また真相.怪我人1人.壮絶な事件の幕切れであった.

ラスト,病院で金田一が諸星あたるモードで看護婦を口説いているシーンでエンディングへ.

とまぁ,こんだけの内容が,正味45分ぐらいの中に入っていたわけである(も少し長いスペシャル版だったっけ).私もあまり沢山ドラマを見る方じゃないけれど,ここまでムチャクチャなストーリーというのは,そうそうないと思う.とくに,「真相」が沢山ありすぎ.こんな無茶な脚本を,とにかく撮影してのけた堤組の皆さん.『ケイゾク』とは別の意味で,すごいと思った.

(1999.09.25.記)(2002.04.02.更新)



Written by Spangle Maker.