ウイリアム・ギブスンの傑作小説,「記憶屋ジョニイ」の映画化. 主演はキアヌ・リーブス,脚本はギブスン本人.
短編でキレのいい作品だった原作, 映画になってみたら間延びはするは文章に比べ視覚イメージは貧相だわ ミラーグラスのヒロインが出ないわで,すっかり凡作になってしまっていた. 悪役を北野武が演じていたことも今では忘れられている (日本語吹き替えをたけし本人がやっているのはいいんだけど, 英語のセリフもあんなに平板だったんだろうか).やはり,ギブスンの作品は, ハリウッドの生産ラインにそぐわないように思う.
ジョニイの記憶が,難病に苦しむ子供達を救う情報だという, 大義名分が掲げられている時点で,既に終わっているというべきか. 命懸けで引出した情報が,何の役にもたたないからこそ, あの小説の世界観が引き立ってくる.
悪役のアジトは破壊された吊橋. 補剛桁が中央径間の支間中央で切れているのはまだしも, メインケーブルまで切れているのはどうかしている. あれでは橋は崩壊してしまう.あんなウソが通ってしまうようでは, 映画の出来がアレでも仕方ないところか.もちろん, 原作では吊橋なんか出てこない.
そういえばIBMが協賛してたような気がするな. アプティバのCMで中谷美紀が「今ならJM当たります」と言っていたと記憶する.
(1999.07.20.記)(1999.07.24.更新)
『リング2』と同時上映で 公開されたホラー映画.どちらがよいかと言われれば, 私はためらわずに『死国』の方がよいと答える.あんまり正面切って言うと『ダーティーペア』でケイの方が好きというぐらいに恥ずかしい のかもしんないけど(笑)(ピンクレディーの例えは本当にナイス(笑)).
まず,B級作品として分をわきまえた作品で, もはや貞子サーガと化してしまった『リング』シリーズのような 妙な力みがないのがよい.
主演の海川もとい夏川結衣が驚くほど美しく(森高千里と遊佐未森を足して2で割った 感じ)写っていて,これも評価したい.演技力はちょっと置くが.
とはいえ,『死国』がいいというのは,やっぱり『リング2』 はじめ最近の日本製ホラー映画との比較であって,往年の『東海道四谷怪談』(1959)や『妖怪百物語』(1968)のような作品と比較できるようなものではない. 莎代里が復活するまでは,少年ドラマシリーズのようなノリで, 影像もまぁ美しいし,味のある小品を見させていただいたという感触があった. しかし,莎代里復活後の腰の砕け具合はどうも看過できない.
生き返った莎代里が生き返らせた母親と真っ向から意見が食い違ってるとか, 怪力サバ折り女になってるとか,そういうのはいいと思うが, もう少し観客を恐がらせる努力があっていいのではないか.それに, 最期の池の周りでの文也争奪戦は,もう完全に脱力. 夏川捨ててもとの彼女に戻るにしても,死んだ彼女が復活した喜びとか, またはゾンビを目の当たりにした驚愕とか, そういう心の動きはないのか?>文也君.または, せっかくいいところまでいった夏川にも未練てものは持たないのか?>文也君. しかもなぜに突っ立って見てる>夏川. サバ折りで生死不明の文也を何故に黙って見てる>夏川. このあたりが,自分の「人間てこうだよな」と思っている事柄と あまりに違っていたため,なんともやるせない気分になった.
なお,莎代里が洞窟から蘇るのは出産のイメージだとか, 池の石柱は男根の象徴とか言うのは,分かってますよと言っといた方が 一応いいんだろうか.
(2000.02.05.記)
アクション俳優ジェフリー・ファルコンの自主制作映画.なんしろ彼が脚本監督主演.話はIFの架空歴史でのアメリカが舞台で,核戦争で滅び,ソ連に占領された世界.ここで,新しい指導者を選ぶコンテストに出るためにラスベガスを目指し,沙漠を旅する男が主人公(確か).途中命を助けた少年と子連れ狼的道中になる.
主人公バディはよれよれの黒のスーツに黒ブチメガネというサラリーマンスタイルに,日本刀と6弦のギターを持った,独特のスタイル.刀の振り回し方がクンフー入ってていかにもアチラものというのは置こう(笑).殺陣はなかなか迫力がある.大量のソ連兵との乱闘もあるし.敵を叩き切ってから,中腰でメガネをズっとずり上げるキメのポーズなんか,えらい個性的でかっこいい.刀だけでなく,ギターで敵と勝負するところもしっかりある.
とにかく低予算なんだけど,評判通り面白かった.話が単純だし,映像は凝っていて目をひくし,音楽も凝りまくり.それでいて好きなネタはテンコ盛りだし,何より面白く仕上げてある.まさにオタクの夢の結晶だ.
こんな映画に気前よく出資したフジフイルムを大いに賞賛したい.
参考資料:映画秘宝Vol.12, 洋泉社, 1999.07.
(2000.01.29.記)
99年春に亡くなったキューブリック監督によるホラー映画.率直に言ってつまらない映画だった.
画像はけっこう凝っていると思うが,ストーリーはどこかで読んだ抄録,「父親がシャレにならない嫌がらせを家族に対して行い,外に放り出されて凍死する」(映画秘宝の『底抜け超大作』の記事.読み直したらスティーブン・キングへの溢れる愛情故の殊勝な抄録だった)がそのままずばりというものだった.格別キングに思い入れのない私には,抄録だけで沢山だった.
先入観をもって観るから悪いと言われればその通なのだが,「シャレにならない嫌がらせ」に狂気の演出を色々試みていても,<正常な人が狂人を想像して作り上げた演出>といった印象が最後までぬぐえず,感情移入できなかった.デビッド・リンチ監督の『ロスト・ハイウェイ』を観た後だったというのが,私的にこの映画をつまらなくしてしまった,さらに不幸な要因だったようだ.
(1999.05.14.記)(1999.06.06.更新)
この映画,科学考証のまずいところには目をつぶるとしても, ストーリーがよくないのがもったいない.
以前見たハリウッドを紹介するテレビ番組で, 映画のストーリーを自動で構成するプログラムが紹介されていたが, そこでこの映画が取り上げられ, 「ほら,こんなに問題があるでしょう?」とか言われていた. キャラクターの配置がまずいとかイベントのタイミングが悪いとか そんな話だったような.
そういうのはあっても, 最後のティラノサウルスはかっこよくてトリハダが立つ.
こういうところで作り手の熱意とかが伝わってきて, 映画の印象がぐんと変わる.
あとスピルバーグだけに飛行機(ヘリコプター)の描写もいい. アグスタA-109イルンド.イタリア製でデザインの評価が高い機体だ. 恐竜の映画なのにヘリコプターも無駄にかこいい.
(2003.09.27.記)
ジョン・ウォーターズ監督のコメディ.ゴミの出し方が悪いとかレンタルビデオのテープを巻き戻ししてないとかとにかくそういう日常感覚(ステロタイプで言えば「主婦」感覚)の不正に,趣味の殺人鬼コレクションの成果をもって容赦ないお仕置きをしてまわるという,ステキなママのお話.映画の体裁としてはごく普通のソープオペラの体裁をとっていて,それだけに残酷な展開がギャグとして引き立つ.冒頭の青空のサワヤカなこと(笑).
実際は,本当の連続殺人鬼が殺人鬼マニアだったということはあまりないように思うのだが,逆に考えても,数の比較からいって殺人鬼マニアが殺人鬼になる確率は極めて少ないはずなのだが,「危ない知識を好んで集める奴は危ない奴だ」という世間一般の偏見をうまく利用して,ママの隠れた一面が少しずつ家族に知れてゆくというぞっとする展開を盛り上げている.その殺人鬼コレクションがまた,ホントにマニア的にツボを押さえてあって嬉しい.いきなりテッド・バンディのインタビューの音声なんか流れるし.つまり,上記偏見がホントに偏見に過ぎないとウォーターズ監督自身きっちり分かっているのだ.
で,小道具についてちょっと.連続殺人容疑ですっかり有名になってしまったママ,彼女を取材にきてママの娘とデキちゃう記者のカメラは,ニコンのF3,MD-4つき.教会で誰かがママを写したコンパクトカメラはコンタックスT2.
(2000.02.06.記)(2000.09.15.更新)