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時計じかけのオレンジ, Clockwork Orange, Warner Bros., 1971.

キューブリック監督によるSF映画.狂った未来社会を凝った影像で見せ, マルコム・マクドウェル扮するアレックス君はじめ非行少年(死語)らの暴力が これでもかと展開する.世界観を見事に描き出した凝った影像と, 厳選された音楽(主にクラシックだが,要所要所にムーグ・シンセサイザー!使用) が心地よい酩酊感をもたらす.何度見ても1970年代初頭の作品とは思えず, 時代を超越した輝きをはなっている.キューブリックの最高傑作の一つと思う.

一方ではこの映画,神経性の胃の不調を,恐ろしくリアルに再現している. 自分自身,不調なときに吐き気に悩まされることがあり, そのたびにこの映画を思い出してしまう.

『あしたのジョー』の後半,力石の死後,そのトラウマのため, 矢吹丈が人を殴ると猛烈な吐き気に襲われるという描写があったが, この映画も後半これと似た展開になる.こちらは, アレックス君が釈放と引き換えに人工的にこの状態になる処置を施されるのだ. ルドビコ法というその処置は,犯罪につながる精神の高揚が, 即吐き気となって当人を苦しめるというハラショーなものだ.

その具体的な手法というのが,薬物を注射し,かつ,暴力シーン満載の映画を, まぶたを強制的に開けさせられたまま(従って, 傍らに人がいて常時目薬をさし続けている)見せるという, 大変ストレートで分かり易すぎではあるけれど. まぁ,映画の始まりからして, オレンジ色一色の画面に時報の音が鳴り響くという 明快なものなわけだし(笑).

もっとも,シャレにならないのはオウム真理教の連中. 大抵の破壊的な宗教カルトは,教義に脱会すると不幸な目にあうという 項目を盛り込んでいて,何等かの方法でその恐怖心を徹底的に信者に 叩き込むようできている.オウムの場合,上九一色村のサティアンでは, 1畳ほどの小部屋に閉じ込められ,数日の間,アレックス君のように 残酷ビデオを見せられていたという.このように現実が後追いしてくるのだから, よくできたフィクションというのは侮れない.

ルドビコ法の効果はてき面だった.出所したアレックス君は, 警官になってる(これ自体すごい設定)昔の仲間にボコボコされてしまう. 反撃しようとするが,途端に吐き気に襲われ,どうしても抵抗できない. そもそも,恐怖映画を観せられているときから既に吐き気は現れていた.

ルドビコ法は,暴力をブロックしただけにとどまらない. 婦女暴行犯でもある彼は,性衝動に対しても吐き気が出るよう処置されていた. その効果を確認するため,刑務所の官吏が彼の前に半裸の女性を立たせる シーンがある.女性の前でひざまづき,乳房を見上げ,その乳房に手を伸ばす. ここで彼は猛烈な吐き気に襲われ,のたうちまわる. 背後ではムーグシンセサイザーが響き渡る(このシーン, 『ザ・シンプソンズ』できっちりパロられていた).苦しさの余り, 「靴の裏をなめろ」と言われても,それに従わざるをえなくなっていた.

もう一つおまけがある.ルドビコ法処方時の映画で,BGMにベートーベンが 使われた.彼は確かに非行少年(死語)だったが,ベートーベンの強烈なファンで, その音楽をほとんど神聖視していた.それが,これ以後, ベートーベンの音楽までもが,彼の吐き気にスイッチを入れる, 恐るべき存在になってしまう.映画を見ながら彼は叫ぶ. 「彼の音楽をこんなことに使うのはやめろ!」. しかし無情にベートーベンは流れつづけ,彼は吐き気にもだえ苦しむ.

このルドビコ法の描写は,原作者アンソニー・バージェスの実体験から来てると 確信する.私も,不調なときに食べ過ぎな状態でバイクに乗って, 吐き気に悶え苦しんだ経験がある.コーナーを曲がろうと精神を集中させると, 突如として吐き気が昂進する.結局,この体験のため,以後かなりしばらく, バイクに乗るとそれだけで胃の具合が悪くなる状態が続いた.アレックス君の, 精神の高まりがほとんどそのまま吐き気に直結している状態. それはルドビコ法によらなくても,人がそれに近い状態に陥ってしまうことが 現実にあり得るわけである.こんなの,胃が丈夫な作家に, はたして思いつくだろうか?

そういう体験を通して観ると,自殺未遂の後ルドビコ法を解かれ, 刑務所に戻されたとはいえ,再び狂暴な妄想にひたることが許された アレックス君の喜びに,静かなカタルシスが感じられる.「俺は治ったんだ!」. 私も丈夫な胃袋がほしい.そして映画は主人公のエッチで狂った妄想で幕を閉じる. ポップで病んだ未来社会だけでなく,こういった神経が傷んだ様子を描写している 面も,この映画の重要なポイントだろう.

LDおよびアナログ版サントラ所有.

関連サイト:時計仕掛けのオレンジ

(1999.05.14.記)(2004.02.29.更新)

トップシークレット, US.

ズッカー兄弟のバカ映画のひとつ.

アメリカ人のバカに対するこだわりというのは尊敬に値する.

9.11の同時多発テロにあたり,報復するな,と言い出すオヤジもいれば, 一方ではものすごい勢いでイラクに侵攻, 3週間ほどでサダム・フセイン政権を崩壊させてしまう.

この映画も,アメリカ人の政治ネタに対するバカパワーがほとばしっている.

内容は,アメリカで大人気のロックスターが東ドイツに招待され, そこで色々事件がある,というもの.

ここで,東ドイツがナチス・ドイツそのものとして 描かれる.

別に共産主義への皮肉とかどうとかではなく, 戦争映画の図式としてドイツ=ナチスをそのまま使っているのだ.

当然時代設定は完全に無視.主人公が東ドイツに足を踏み入れた途端, そこは第二次世界大戦中の,ドイツや占領下のフランスになっている. そこではスパイが暗躍しているし,なんとレジスタンスまでいる. 主人公はそのレジスタンスの女とお約束通り恋に落ちる始末.

アメリカ人のバカパワー.ズッカー兄弟らしい快作である.

元レンタルの中古ビデオ所有.

(2003.11.29.記)

トリック, TV朝日, 2000.07.〜09.

堤幸彦監督の2000年第3クールのドラマ.

ネタがかなりキワどいのがよい. 仲間由紀恵演じる手品師と阿部寛演じる物理学者が, 宗教カルトや自称超能力者などのインチキを暴いてゆくという話. いささかスタンスは違うが,『トンデモ本の世界』のTV版みたいな趣がちょっとだけあった. というか,製作者は一連のと学会本をネタにしているのは確かだろう.

と学会ファンの方であれば,物理学者である早稲田大学大槻教授の超能力批判が ボロボロで,先生の著作が昨今では見事なトンデモ本となっていることを 御存じだろう.一方,手品師ジェームズ・ランディがユリ・ゲラーはじめ 偽の超能力やオカルト現象の裏を暴きまくっているのも知られているはずだ. その方面では,超能力のトリックを暴くには,学者より手品師の方が適していると される.こういう背景があるので,上田次郎助教授は毎回相手の手に コロっとダマされ,手品師の山田奈緒子がトリックを暴いて一発逆転となる.

オカルト方面のネタでは,宗教カルトとか千里眼男とかの面々がなかなか リアルで面白かった.コールド・リーディングやホット・リーディングなど, よくある手口も仲間由紀恵がすらすらと説明してくれる. 今までドラマどころかドキュメンタリーでさえなかなか取り上げられなかった ネタなので,懐疑主義に味方したい私としては胸のすくドラマだった.

反オカルトドラマというこれまでにない体裁をひとまず置いても, 『トリック』は面白い.コメディとしてよくできていた. 上田次郎のボケぶりやら生瀬氏の胡散臭い刑事やら何やら. 時間帯が23:09〜という深夜なのを利用して下ネタのオンパレードというのも 強烈だった.まぁ,巨根はそんなに困るのか,ということや, 仲間由紀恵が貧乳に見えないとかで,強引なギャグも多いとは思ったが.

誉めるのはひとまずこれぐらいとして,マイナス点もいくつか 指摘しておいた方がよいかと思う.一つは,上田先生のセリフが物理学者として あまりに素人臭いということで,誰か理系の人間にチェックをさせた方が よかったのではと思った.

毎回のストーリーは理論的に組み上げたというより,行き当たりばったりな 展開が多く,せっかく反オカルトをネタにしながらもどうにも消化不良に感じた. 黒坂姉妹の話などは,「まさか双子じゃないよなぁ」という視聴者の疑念を逆手に とったすさまじい展開でそんなに悪くなかったが,結局事件の起点となった 黒坂姉妹の父親の事件は説明されないままで,殺人の動機がいささか 軽く感じられた.

最終回のまとめ方も,パイプ椅子よりは圧倒的によいとして, 初回からの伏線は十分活かしきれていないように感じた. これだと伏線はもう少し控えておいてよかったのではと思う. 台風の影響でラストシーンはかなり変更を余儀なくされたようだが, 変更なかったとしても果たしてどうだったかと思う(映像はきれいだったろうけど). もっとも,一応シリーズの終わりを納得できるだけの出来だとは思った.

どうもドラマの企画段階でラストが決まっていなかったのではという感じがする. その辺で,かなり初期から柴田の死が決まっていたらしい『ケイゾク』と比べてラストに向けての求心力に 差が出てしまったのではと邪推する.このドラマなら,ラストの展開は『サイコメトラーEIJI』のように, 伏線をあまり強調しないでラスト2話ぐらいで一気にまとめた方がよかったと思う. いかにもラストで化けそうなキャラクターの, 瀬田が化けなかったのも物足りない.

一方,散々オカルトを否定しながらも,最後には山田の霊能力の存在を ほのめかすような展開というのは,実は私は悪くないと思う. これはオカルト批判のノンフィクションでなく,娯楽としての芝居である. 芝居の中では,やっぱり何だか分からないものがあるんだ, という感覚を残しておいた方が,作品世界に広がりが出て面白いと思う. 現実だって,何もオカルトに頼らなくても,何だか分からないものは いくらでもあるのだし.

何はともあれ,2000年では『IWGP』と並んで面白いドラマだった.

トリック2, TV朝日, 2002.01.11〜03.23.

堤幸彦監督の2002年第1クールのドラマ.

2002年1月11日

トリック2

『トリック2』が始まった.いきなりハンドクより面白いぞ.泊まると 必ず死ぬ旅館という,『ケイゾク』4話と露骨に被るネタが笑える. 徳井優,長江英和と『ケイゾク』の役者まで出す凝りよう. 犬山犬子は4話のゲストキャラだったし. 毎度の書道ネタは「なんどめだナウシカ」に笑った. 犯人はやはり渡辺いっけいか. 地味な役の割に役者がお豪華だというのがお怪しい.

2002年1月13日

トリック2最終回

なんかすごいところでロケとは聞いていたけど,あれ本当に平壌なのか?  特に将軍様の誕生日祝賀会のマスゲームがすごかった. TVドラマであそこまでCGに凝るとは. でも,招待されて演じた山田の手品が,きっちりショボいのは笑った. あと,テルキナがきっちりいたぞ!! 上田は相変わらず懐柔されてたな. 金日成バッヂもらって嬉んでる場合じゃないだろ(笑). しかし圧巻は,山田が「んなわけねーだろ!」って将軍様をはり飛ばすシーン. また将軍様がよく似てるんだが,本人だって噂は本当か?  仲間由紀恵にはり飛ばされるなんてうらやましい. これで北の楽園の独裁体制を崩壊させるようなラストならよかったんだが, 現状維持になってしまったのは,やっぱり本人が出てるから配慮したってこと?  単に3を作る伏線か? ともかく今クール一番,いや, 今年1番の出来のドラマかもしれない.

2002年3月23日

トリック2最終回(真)

平壌ロケの予想は大幅に外れたか. しかし,まさかの日暮里ロケ(笑).意表を突いて ラブコメなまとめ方(笑).気がついたら上田にハマってる山田がなかなか可愛い. 黒門島の話よりいい最終回だと思った.映画化の話もいよいよ公式発表. 映画こそ平壌ロケだったりして. そういえば村長だったら四の五の言う前に銃刀法違反で逮捕できないか?>矢部よ. あんなアホなシチュエーションがそれなりに様になってしまう所が 堤作品のすごいところ.「文字の不思議な力」ってのもいいネタだ(笑).

2002年3月24日

ロングスカート

『トリック2』に限らず,堤組の作品はヒロインが美しく撮れているので 感服する.確かに中間由紀恵嬢はすごい美人で,2000年のクレシェンド祭りの時生で 拝見して,女優のオーラってなものを強く感じた.阿部寛氏も存在感あったし.

で『トリック2』.わざとだかなんだか.ロングヘアを真中分けしてる のはいいとして,山田はロングスカートまで履いている.まぁババシャツが 見えたりはしなかったけど,柴田純を何度か思い出した.特に正面からのアップ.柴田はあんな役柄だけど, 正面アップはハッとするほど美人に撮れていたし, 今度の仲間由紀恵嬢もそうだった.

キャラ設定というか,堤さんか誰かの好みの女性のキャラクターなのかな, と思う.それに,撮影中の現場の雰囲気か何かで,女優の顔もキリっとしてくる ものがあったのかと推測する.もちろん唐沢氏や斑目氏といった,クレシェンド 系のカメラマンのただ事じゃない腕前もある.

『ケイゾク』でもって中谷美紀嬢にしっかりハマった私であるけど,その後の 彼女の出るドラマで,どうにも『ケイゾク』ほど中谷をきれいに撮れている作品が ないなとずっと感じている.中谷のよさをもっと引き出す作品はないのだろうか? 観ていない作品もあるから,唯の厨房な所見でしかないのかもしれないが.

2003年12月06日

−劇場版−

ようやく『トリック−劇場版−』を見た.

カメ飼いとしてはなかなニンマリする映画. だけど序盤にショッキングなシーンが.生きたまま亀卜とはミナミイシガメ無残. というか,中のトカゲなどいない!(笑).

2000年からやってるシリーズだから, 本当は山田の部屋のカメが映画でも小さいミドリガメなのは不自然. ミシシッピアカミミガメなので, 甲長20cmぐらいのネズミ色の狂暴なカメになっているはず.

ミドリガメの成長をストップさせるとは,山田マジック,侮れず.

』も見返しているところ.小橋めぐみかわいい.

(2002.01.11.記)(2004.10.23.更新)



Written by Spangle Maker.