1964年に仙台市に生まれ,1988年に地球にやって来た美しき超音波星人.
ふくやまけいこ先生の漫画,『ゼリービーンズ』に,女の子エリスとアメリアが屋根の上で毛布にくるまって星を見るシーンがある.仙台の空の下,本当にそうして星を眺めて過ごした少女がいた.なにしろ弁当持参だから気合が違う.それが今の遊佐未森さんその人.一家で老人ホームに慰問の演奏に訪れたりする音楽一家の長女.幼少のころから合唱隊に通い,音楽系の高校を卒業し,国立音大にて声楽を専攻する.在学中に外間隆史氏と運命的にめぐり逢い,アーティストとしてやってゆく気構えができはじめる.そして卒業後,福岡知彦氏(だけではないか.さすがに.ちなみに奥様は太田裕美さん!)にも才能を認められ,EPIC SONYより1988年4月1日,アルバム『瞳水晶』にてデビュー.その後10年となる1997年10月,東芝EMIに移籍.1998年初めになんと電撃入籍.1999年に目眩症で一時期活動に支障をきたすも,1999年に海辺に引っ越し,マイペースにアルバム『Small Is Beautiful』を制作.2001年,新たにまた熱い音楽活動を開始し,前作から1年弱にてまず『honoka』を発表.新世紀も期待したい.
93年からMacを使用.「泣きながら使っている」(本人談)とか.その後MacはG4機にグレードアップ.しかし2001年にHDDがクラッシュして曲のデータとかだいぶ逝ってしまったらしい(2001年11月10日の仙台のFM局公開録音にて).バックアップはとりましょう(^^;.
ファンクラブは『ソラミミ倶楽部』.詳しくはリンクを参照のこと.レコーディング中のスコットランドから絵ハガキをエアメールなんていう気のきいた(一瞬ご本人からの直筆かと(一瞬だけ)思った)サービスあり.
著書および資料集が数点存在する.遊佐未森さんに関する書籍はGreat Spangled Book Review参照.
その魅力は声といい音楽といい外見といい色々あるにはあるが,園芸,相撲,サッカー,和菓子などを語る平成の粋人であるとともに,重度のロックマニアであるという,二面性にも触れねばならない.彼女の音楽は,常にロックを指向していると私は考える.
1997年発表の『Roka』も油断してはならない.表題曲はいきなり5拍子である.これは彼女のプログレ志向を示すもの(キング・クリムゾンの『Red』の1曲目はいきなり5拍子だ).そして世界を憂い,社会に訴えかける歌詞はまぎれもなくロックである(『momoism』に副えられていたメッセージが発展したような歌詞).ロックは熱いハートを世界にぶちまけ,世界を揺さぶらなければならない.「Rock'n Roll Stop The Trafic」[1].遊佐未森さんの中にも,そんな炎が,密かに,しかし強く燃え続けている.
さらにいって,変拍子の曲をあれだけ自然にまとあげる感性と技術も注目すべきであろう.なお,「Roka」はスズキアルトのCMで使われたため,シングルカットされている.これにはカラオケもついている.めったにない変拍子のカラオケ.
1997年7月25日にNHKで放送された,『全国うまいもの名鑑』は,久々に視聴者を溶ろけさせる番組だった.茨城県下館市の手作りジャムの職人を訪れたドキュメントである.「Roka」の出だしがジャムだから選ばれたらしく,番組の冒頭でもちょっとかかった.歌詞からいうと,ジャムは決していい意味で使われているわけではないのだが(笑).
それで,平成の粋人の方に「食べ物評論家」の肩書きを是非入れたいと思う.彼女のレポートの独特の味はもっと知られてよいはずだ.『モザイクな日々』の道後温泉のレポートも素晴らしいし,96年には何の前触れもなく週刊朝日に出て鎌倉のスパゲティの紹介もしていた.
私が尊敬する故佐貫亦男先生は言った.イタリア人を称して「天才は大食いである」.私はこっそりうなずく.
遊佐未森さん,名字の「遊佐」は本名で,仙台ではとても多いお名前.しかしさすがに,「未森」というのは芸名.その由来は『空耳見聞録』にて「Youth of Memories」や「メモリー」,「mi-mollet」などの推測がされているが(他に「ユーザーメモリー」も遊佐未森に似てるし),詳細は実はご本人以外誰も知らないらしい.ストレンジ・デイズ別冊では,外間氏と喫茶店で話しながら「あっという間につけた」ということだが,では「みもり」という音そのものの由来は,というと,何も明らかにされていない.
もちろん私も真相は知らない.ただ,もう一つ「未森」に似ている言葉を知っている.「メモル」.もしかしたらもしかすると,時期的にもぴったりなので,やっぱりひょっとすると,遊佐未森はおおもとは遊佐メモルだったのかもしれない.
正確には,東映アニメーション制作で1994年4月から1年間,TV朝日系列で放送されていたアニメーション作品,『とんがり帽子のメモル』.主人公メモルはリルル星から来た宇宙人の女の子で,一見人間の4,5歳の子供に見えるけど身長は10cmぐらいしかない.タイトルにあるように,大きいとんがり帽子をいつもかぶっている.物語はそのメモルと,病気で山荘で療養している13,14歳の女の子マリエルとの交流を描いたもの.リルル星人は宇宙旅行をしていたところを宇宙船が難破し,フランスの山中の湖の島に不時着してそこでひっそり暮らしている.島から友達と外へ遊びに行ったメモルが病気で死にそうになったマリエルを助け,それから二人は友達として秘密の交際を続ける.名倉靖博氏の独特の柔らかい線のキャラクターや土田勇氏の水彩画調の背景など,美しい作画が私には特に印象的だった.
1984年の作品ということで,遊佐さんは大学3年生だったと思う.ちなみに私は大学入りたて(でそういうアニメを毎週見ていたと).「未森」命名にぴったりすぎるタイミングでは? また,遊佐未森といえばデビュー後しばらくず〜っと,帽子がトレードマークだった.遊佐さんが雑誌やTVに出るという情報を聞いては,またライブに行っては,どんな帽子をかぶって出るのかは楽しみの一つだった.で,リルル星人もとんがり帽子.もう一つ.マリエルはピアノをずっと習っていて,番組後半ではサンロワーヌ芸術学院で音楽を本格的に勉強する.このマリエルが小さくて華奢で目が大きくて,背格好が遊佐さんに似ている.そう思って『HOPE』のジャケ写を見ると,その髪型がまたマリエルによく似ていたりする(多分に牽強付会だが).牽強付会ついでに,遊佐さんは1992年にシングル『GRACE』を発表しているが,メモルにもマリエルのライバルキャラとしてグレイスという女の子が登場する.
これらを考えると,もしかしたらもしかして,遊佐さんが自分の芸名を考える時に,『とんがり帽子のメモル』を思い出したのかもしれない.もちろんしがないファンの推測でしかないけれど(『花右京メイド隊』と一緒にするなって?(笑)).
今ではすっかり定着している「未森」という名前,デビュー前にこれでゆくかどうかはちょっともめたらしい.同ストレンジ・デイズ別冊のインタビューに出ている.でも,この名前を選んで成功だったということは今にいたる息の長い音楽活動の実積や漫画の主人公の名前になったことなどが証明していると思う.
ところで,「未森」が芸名なら本名は,という疑問を持たれるのはごく自然なことかもしれない.が,遊佐さんや事務所から発信される情報にそれに関するものが一切ない以上,そこは謎のままそっとしておくのがよいと思う.そんなことより,いわゆる「重箱読み」という言葉,これから「未森読み」と言うようにしてはどうだろうか? 強引な論旨のすり替えをして筆を置こう.
『ココロ図書館』である.色んな意味で.お子様には癒し系の良質のファンタジーであり,オタクには遊佐未森というシステムのありようを様々な角度から立体的に考察して楽しめる.時間があったらこの辺の考察をもう少し進めたい.
(2002.11.04.更新)