


Mr.Suzuki:鈴木俊彦遺稿集:第3回
”アメリカ・カナダの旅N"
Alberta Deer
鈴木俊彦、玉子
●第一章 ロッキーの山
第五日 ロブソン山を眺める_1
旅も五日目ともなれぱ、みんな疲れたらしく、それに今日はさほどにいそがしくない旅とあって、われわれ夫婦以外の家族ほみんなよく眠っている。それならと、夫婦二人で早朝の散歩に出る。
この町は入口数千の小さな町、それでも教会があっちこっに塔をそびえさせている。宿の所を、昨日入って来た方向に戻り、そこを右手に出ると、まことにささやかな小公園があった。広場といった方がよく、こどもの遊び場であろう。そこに昔なつかしい馬車だの、馬具だのが置いてある。たぷん、その昔はカナダ西部の馬車の中継地の一つであったのだろう。
玉子は、昨日までの日記に書き残したところが沢山あるので、朝の静かな一時、それを整理しておきたいというので、公園の一隅のテープルらしきものの前に腰を下した。刻明に書いておかないと気が済まないたちだから、まず一時間はかかるだろうと思い、僕は町を更に右手に進んでいった。その道は、どうやら、今日これから行く道のように思えたので、頃合いの所から、左手の町の中にとって返した。
畿つかの教会のほかは、別にこの町に見るべきものもなさそう。ただ静かなカナダの田舎町というほかない。
一時間ほどして遊園地に戻ったが、玉子はまだ日記を書き続けている。こう毎日、岡じような山道を通り、山を見、川を見、湖を見ていては、前後が一所になったりして、昨日と一昨日のことがごったになってしまう。だから正確を期すると、筆も進まないのも無理もない。ときどき、僕にあそこはどうだったか聞かれるが、こちらも同様、頭の中の景色はすでに幾重にも重なり合っているし、町の様子もホテルの間取りも、みんなごちゃまぜになってしまっている。
旅が終ったら、ゆっくり思い出すことにして遊園地を離れた。
あまり時間がかかるので、息子と新が心配して捜しに出て来たのに、通りの角で出逢った。それから四人で、この田舎町をくったくなく歩き廻り、宿の前に戻った。そこに記念写真用の古めかしい馬車がセットしてあるので、代る代る車に乗っかり、五十年ばかり前のカナダ開拓者のつもりになった。
部屋には、千賀子、万里江も起きていた。
*ジャスパーホテル見取り図
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