パリ便り 3
                        江中直紀



 もう何年まえになるのでしょうか、ヨーロッパ・サッカー連盟が外国人選手の人数制限をおおはばに緩和してから、あのような混淆がうまれたのですが、あれはむしろゲームもいよいよ金のちからでということなのでしょう。どこの国でもそうだというわけでもなくて、サッカー経済大国のイタリア、スペインのリーグ、それにイギリス、ドイツの裕福なクラブでおこっていることです。
 フランスのリーグにはフランス代表はほとんど皆無(アネルカという黒人選手がパリにかえってきたくらい)、そのかわり、もうすこし安いアフリカやポルトガル、東欧などの若手をたくさんいれているのです。
 地域性との関係でみれば、アネルカの移籍にこれまでのフランスの最高額、2億フラン(30億)以上をはらったのも、パリ・サンジェルマンというクラブにはちょっとお高いところがあって、パリの下町というか、場末の若者たちの支持がいまひとつ、そこでパリ近郊のうまれだし、パリ・サンジェルマンの選手養成所出身のアネルカをひきもどしたのだ、といわれています。
 コルシカやバスクの問題はそれぞれに複雑で、わたしはとおりいっぺんのことしか知りません。ジョスパン提案の骨子のひとつに、立法権の一部委譲とならんで、これまでふたつの県にわかれていたコルシカの統合、コルシカ語(イタリア語の方言)の義務教育化があり、それならバスク県やバスク語の義務教育も、という主張が出てきたのです。ただ経済の観点からいって、どの地方も貧しいから、完全な独立はむづかしいようです。
 コルシカ独立党の代表が地下テロ組織との連帯を表明したり、彼らにはどうにもきなくさいところがあります。いわば極右的な分子がいて、しかもそのナショナリズムが人種差別、とくにアラブの移民にたいする差別にむすびついています。コルシカはおそらくフランスでいちばん差別問題のひどい地域でしょう。
 パリの上層階級、パリの場末、地方都市、コルシカ、バスク、ポルトガル、東欧、EUの外、アラブ、地域性が階層性とかさなりあって、いりくんだトポロジーをかたちづくっています。わたしもそのなかの1ノードとしていまここにいるわけです。

                      2000年 7月31日