電子交差点

    屋久島から地方自治の春一番


 プレス/ネットリリース#3(2000年3月27日)
 by 使用済み燃料の中間貯蔵施設をつくらせない市町村議員住民連絡会・屋久町事務局
 屋久町議会が核兵器と原子力にまたがる包括的非核条例制定!

 3月27日の屋久町議会本会議最終日に、「放射性物質等の持込み及び原子力関連施設の立地拒否に関する条例」が町長提案として提出され、全会一致で可決承認されました。この条例は、昨年来、隣の種子島で取り沙汰されてきた使用済み核燃料中間貯蔵施設誘致問題に対する町民の圧倒的な反対意思に支えられながら、1988年(平成元年)に採択済みの非核決議に今日的な肉付けをほどこしたものです。条文は下記のとおり、従来より非核決議が対象としてきた核兵器を含めて、原子力の軍事利用と平和利用とを問わず、医療目的以外のあらゆる核物質の持ち込みと核関連施設の立地を拒否する画期的な内容となっています。
 これまで核廃棄物に限定した持ち込み拒否条例(岡山県湯原町、岐阜県土岐市など)はありましたが、加工前のウランから、使用済み燃料や各種レベルの放射性廃棄物まで、原子力発電に付随するすべての核物質を網羅し、さらには再処理後の濃縮プルトニウムのように平和利用と軍事利用の境界線上に浮上する核物質をも見据えて包括的に拒否する条例ははじめてでしょう。目を海外に転じても、非核政策を掲げるニュージーランドや南太平洋諸国連合は核兵器の持ち込みを拒否する姿勢はとるものの、原子力発電にともなう核物質までは明示的にカバーしておらず、今回の屋久町の条例はアメリカ・バークレー市などに続く先駆的なものと思われます。
 これは、昨年11月から屋久町の住民および議員有志が取り組んできた“予防活動”(リリース文#1〜2参照)の成果としてメンバー一同率直に喜ぶとともに、平成元年に住民サイドから提出した非核決議を求める陳情が12年目にして実を結んだという感慨もおぼえます。今回、その精神をしっかりと受けとめ、議会初日の施政方針演説で種子島への核燃料施設立地に反対意思を表明したうえ、「6月議会には条例制定を提案したい」という私たちのアイデアを聞いて、善は急げと町長提案による今議会末の制定をめざしてくれた日高十七郎(ひだか・となお)町長の勇断と、同じく本会議冒頭に反対決議を全会一致で可決したうえ、条例案もまた全会一致で承認してくれた議会メンバー全員の勇気を、ともに讃えたいと思います。
 そしておそらく、北半分の上屋久町(かみやくちょう)でも、種子島の1市2町(西之表市・中種子町・南種子町)でも、立場を問わず多くの人びとは同じ気持ちでしょう。議会での反対決議(上屋久町は3月17日に可決)や同趣旨の条例制定の輪が広がって、熊毛地域全体が新しい概念(核兵器と原子力発電関連の両方をカバーする)のスーパー非核圏を形成できるよう、さらにはそれが全国多数の非核自治体に波及していくよう応援していくつもりです。
 一つだけ、今回の条例制定趣旨で私たちが行政サイドの解釈と若干異なるのは、屋久島を特殊な場所ととらえすぎてはいけないという点です。核関連施設は「世界遺産だからNOだが他の場所ならいい」という問題ではありません。どこの住民にとっても、わが郷土こそ地球の宝であり、未来世代への尊い遺産です。屋久島がいまここで非核・脱原発の新たなメッセージを発しやすかった戦略的立場は認めますが、私たちはあくまでもこれを普遍化していくことに価値を見出します。日高町長は議会閉会後の記者会見で、「屋久島が2000年という節目において、われわれはこういう未来をめざしますよという姿勢を明確にすることは、子どもたちへの最高の贈り物ではないか」と述べました。同感です。
 いっぽう同じ3月27日には、屋久町漁協総会でも熊毛地域への中間貯蔵施設誘致に対する反対決議が可決され、他の3漁協(種子島・南種子・上屋久)に同調を求める請願書を送付することが決まりました。また、上屋久町の「核施設はいらない町民の会」では有志が鹿児島市に出向き、県議会の「屋久島議員連盟」(屋久島に関心の深い県議の超党派組織)に直訴した模様です。ついで3月29日には、西之表市議会でも反対決議案が全会一致で可決されました。種子島への中間貯蔵施設誘致・立地に対して、予防線と包囲網がジワリと強化されたと言えるかもしれません。
 私たち連絡会としては、これらの動きに誘致推進側がどう反応するかも見守りながら、4月からの鹿児島県知事向け署名運動(町内と島外との二本立て)と、2000年アースデイにちなんだ種子・屋久交流会(4月23日予定)、5月18〜19日の世界遺産会議におけるブース出店(上屋久町の「島民の会」と共催)などに取り組んでいく計画です。また、若いメンバーたちも独自にアースデイ関連の活動としてビーチクリーンアップ(毎年全国一斉に取り組む浜辺の掃除)や、「アースデイ2000ガイアシンフォニー上映会」(4月30日予定)などのアクションを準備しています。
 以下、条例文と、それに添えられた逐条解説(正式な条文とは別の覚え書き)を引用します。


(平成12年3月30日 屋久町条例第34号)
放射性廃棄物等の持込み及び原子力関連施設の立地拒否に関する条例

(目的)
第1条 この条例は、非核に関する決議(平成元年屋久町決議第3号。以下「非核決議」という。)の精神を具体化し、放射能による被害から町民の生命と生活を守り、世界遺産に登録された屋久島の豊かな生態系の放射能による汚染を予防することによって、現在及び将来の町民の健康と文化的な暮らしを保障し、自然と調和した地域の発展に資することを目的とする。

(定義)
第2条 この条例において「原子力関連施設」とは、原子力発電所並びに核燃料(使用済燃料を含む。)の加工施設、中間貯蔵施設、再処理施設及び濃縮施設並びに放射性廃棄物の最終処分場並びに研究施設など、原子力の利用と研究にかかわるすべての施設をいう。
2 この条例において「放射性物質等」とは、非核決議が対象とするもののほか、原子力関連施設から発生する使用済核燃料又はさまざまなレベルの放射性廃棄物など、原子力の利用と研究に供され、又はそれに伴って発生し、若しくは廃棄されるすべての放射性物質をいう。
3 使用済燃料を「リサイクル燃料」と呼ぶなどの名称の変更は、この条例の効力を損なうものではない。

(基本施策)
第3条 屋久町は、いかなる場合も放射性物質等の町内持込みを拒否する。
2 屋久町は、いかなる場合も原子力関連施設の熊毛地域内への立地及び建設に反対する。
3 この条例は、医療用放射性物質の利用を妨げるものではない。

(立場の表明)
第4条 屋久町は、第1条の目的を達成するため、国及び関係機関に対し、前条の基本施策を通知して、その立場を明らかにする。

(権限)
第5条 屋久町は、第3条に定める事項に関する計画等があると疑われる場合には、関係機関及び関係施設に対して関連情報の提供を求めることができる。
2 屋久町は、放射性物質等の町内持込みについて疑いが生じた場合、疑いのある原子力関連施設に対して報告を求め、必要な限度において関係場所へ職員を立ち入らせて状況を調査させることができる。
3 前項の調査を行う職員は、その身分を示す証明書を携帯し、これを提示しなければならない。
4 第2項の規定による立入調査の権限は、犯罪調査のために認められたものと解釈してはならない。
5 屋久町は、この条例に違反した原子力関連施設の責任者に対し、施設の供用及び操業の即時停止を求めることができる。

(委任)
第6条 この条例に定めるもののほか、この条例の施行に関し必要な事項は、規則で定める。

附則
この条例は、交付の日から施行する。 [条例文引用終わり]

[逐条解説抜粋]
第1条について
 屋久町は世界遺産条約(世界の文化遺産と自然遺産の保護に関する条約)に基づき、1993年12月、白神山地とともに、日本で初めて世界自然遺産に登録された。つまり、屋久島は世界的に見ても貴重な自然を有しているのである。
 このような屋久町の地域の特徴と独自性から、平成元年の非核に関する決議の精神を具体化することで、原子力利用施設の立地、放射性廃棄物の持込み、同関連施設の立地に起因する住民の生命身体、生活環境への悪影響、生態系への悪影響を事前に予防し、現在及び将来の住民の生活の安寧を保障することを目的とした。

第2条について
 第1条の目的を真の意味で達成するためには、住民に放射性障害等の被害を及ぼすおそれがあるものすべてを対象にする必要があったことから、本条例の対象を例示したうえで、原子力を扱うすべての施設及び放射能を有するすべての物質を含めた。
 また、使用済核燃料を廃棄物ではなく将来リサイクルするものであるというような政府の見解があることから、そのような名称の変更によって本条例の効力が損なわれることがないように確認的な規定をおいた。

第3条について
 放射性物質等の町内持込みについては断固反対する姿勢を示す意味で、「拒否する」という文言を用いた。これは法的な授権等に基づき強制力をもって放射性物質等の町内持込みを強制排除することができることを意味するものではない。
 また、原子力関連施設に対しては、熊毛地域内の立地及び建設にはすべて反対することから、行政範囲を超えた内政干渉であるという誤解を受けることのないよう「反対する」という文言を用いた。
 ただ、現在、放射性物質は医療の分野においても人類になくてはならないものになっていることから、それらの利用までも制限することは本条例の趣旨に反すると考えられるから、確認的に除外規定をおいた。

第4条について
 国及び関係機関に対し、第3条の基本施策を通知し本町の姿勢を理解してもらうこととする。

第5条について
 本条例の実効性を持たせるために本条の規定をおくこととする。
 関係施設に対する情報提供に関する規定を設けることで、関連情報の取得の途を開き、また、原則として相手方の任意の協力の下で、必要な限度において立入調査等を行うことができることとする規定をおいた。
 たとえ任意の調査であるにしても、適正な事務処理を確保するため立入調査を行なう職員に対しては身分証明書の携帯と提示を義務付けた。
 また、当該調査が強制力を持ったもの及び犯罪捜査のために認められたものでないことを明確にするため、確認規定をおいた。
 立入調査によって、本条例の違反が認められた場合には原子力関連施設の供用及び操業の即時停止を求めることができることとした。

施行期日について
 住民に義務を課したり、住民の権利を制限するような内容の条例ではないので、住民に対する周知期間をおく必要はさほどないと考えられることから公布の日からの施行とした。
[解説文引用終わり]

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[リリース#1は http://www.realwave-corp.com/16kouryu/kaku/kaku1.htm
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また、「核施設はいらない島民の会・上屋久町」がホームページ
http://www1.ocn.ne.jp/~yakuisl/ を開設しました。]