星川淳著『屋久島水讃歌』序文

             宮内勝典 


          


 星川淳とは、よく似た夢を追いかけて、同じような遍歴をしてきたという気がします。時も、足跡も、住む場所も遠く離れていますが、その著作や翻訳を通していつも存在を身近に感じていました。刺激を受け、学んだことも沢山あります。
 たとえば、地球を一つの生命圏「ガイア」としてみる考え方も、かれの翻訳によって初めて日本に種をまかれ、芽吹きました。
 民主主義の起源であったアメリカ・インディアンの「イロコイ連邦」について紹介したのも、かれの著書『環太平洋インナーネット紀行』が最初だったと思います。七世代先のことまで考えてからものごとを決めていこうという「イロコイ連邦」の理念は、いま若い世代に影響を与えつつあります。
 ぼくは長いことアメリカ先住民の独立運動に関わってきたのですが、その本を読んだとき、星川淳にバトンが受け継がれたのだと感じました。その思いは、いまも変わりません。
 ぼくたちは互いにバトン(タスキ)を相手に回そうと、精一杯、自分の受け持ち区間をひた走っている駅伝ランナーなのでしょう。

 星川淳は広い世界を見てきました。青年時代、インドやアメリカで暮らし、もう二十年近く屋久島に住んでいます。広い視野を持ちながら、地域に深く根をおろしています。しかし止まっているのではなく、かれの精神は動きつづけています。不思議なもので、屋久島にいる星川淳を思い浮かべると、縄文杉のそびえる花崗岩の島が、いま環太平洋の潮流のなかで脈々と動いているような気がしてくるのです。

 Think globally, act locally.
 という言葉を、ぼくは大切にしています。地球的な視野でものごとを考え、地域的に行動していこうという意味です。新しい意識を持ちつつ地域へ向かっていったアメリカのエコロジストたちの合い言葉ですが、ぼくは自分なりに、次のように言いかえています。

 ──惑星的な視野でものごとを考え、それぞれが自分の持ち場で努めるしかない。

 星川淳は、まさにそれを実践しています。かれは著作活動と農園の仕事をつづけながら、屋久島・奥山の乱伐を食い止めようと努めてきました。いまは、種子島か馬毛島に「核廃棄物の中間貯蔵施設」を作ろうという動きに対して、粘り強く立ち向かっています。そして住民たちと共に屋久町議会に働きかけて、ついに放射性物質の持ち込みを禁じる条例を成立させました。
 このような条例ができたのは、日本では初めてのことです。屋久島は「世界遺産」であることと同じく、このような条例を持つことを世界に対して誇りうると思います。
 そしてぼくは、星川淳のような友人を持っていることを、ひそかに誇りに思っています。


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              追記

 屋久島、種子島の「放射性物質」拒否条例をつくるために中心的に働いてきた星川淳の新著『屋久島水讃歌』が刊行されます。
 核廃棄物の問題を、地域で具体的にアピールするために、この本は、「南日本新聞社」から刊行されます。しかし内容は、普遍的なものです。県外の書店で目にする機会は少ないと思いますから、入手方法を記します。

   星川淳著『屋久島水讃歌』(定価2381円 南日本新聞社)

 注文は最寄の書店、図書館、オンライン書店などを通じてでもかまいませんが、時間がかかると思います。
 一番早くお手もとに届く方法として、
 編集・発行元の南日本新聞開発センターへ
 電話(099-225-6854)か、
 ファクス(099-226-0404)か、
 Eメール(hontumon@po.msinbunkc.co.jp)で、
 住所・名前・希望冊数を添えて申し込むことをお勧めします。
 
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          『屋久島水讃歌』 目次
        In Praise of the Water Planet

 第1章 水の縁(えにし) Terra Aqua

 水の縁/流域探訪・安房川/大空のサーファー/台風銀座の心理学/ 半農半X/いのちの種子/遊山遊水/夢見る水/水の旅人

 第2章 生命(いのち)の輪 Medicine Wheel

 生命の輪/貝塚感覚から地球感覚へ/再生のコストを考えたら破壊は引き合わない(故デイヴィッド・ブラウアー・インタビュー)/2010年 近未来予報/自然の論理/ナチュラル・イズ・ビューティフル/グリーンマネー・ディープデザイン

 第3章 魂の絆(きずな) Innernet

 平和ゲリラの祈り/インナーネット/魂の橋・感動の糸/ベーリンジアの記憶/二人の航海師/手斧と天文台/びっくり仰天ファミリー/郷愁の琉球弧/ネイティヴ・デモクラシー/終わりなき旅

 第4章 縄文の海へ Voyagers Across Time

 ウォーターワールドの伝説/黒潮とワタリガラス/琉球弧をつなぐ道 /北の海から

 第5章 世界遺産という宿題 Greening Future

 第6章 原子の火を見つめて Pluto's Fire


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 屋久島、種子島地域における、使用済み核燃料中間貯蔵施設拒否の軌跡は、かれが事務局を務めるホームページ「NAIS」(核廃棄物の中間貯蔵施設をつくらせない市町村議員住民連絡会・屋久町事務局)を参照してください。
 これは、屋久町の拒否条例案をふくめて、ほとんどの文書を星川淳が担当したものです。リンク集のコーナーにありますから、どうか、ご覧ください。