芸術家の年賀状
- 「芸術家の年賀状」(二玄社)とタイトルのついた本を見つけました。私は長年芸術家はどんな年賀状を作るのか見てみたいと思っていたのでピッタリでした。絵手紙作家小池邦夫さんの編集で、明治、大正、昭和の画家、版画家、書家等の年賀状です。興味のある方は是非一度目を通してみて下さい。先日は毎日新聞にこの本の中のある年賀状が紹介されていました。
- 画才、筆才に有り余る芸術家達ですから年賀状も才能を披瀝できる領域ですから創作の苦労などたいしたものではないかも知れません。でもプロはプロなりに下手はできないわけですから銭は入らなくともそれなりに苦労はしたかも知れません。
- 編者である小池邦夫さんの解説が素晴らしいと思いました。絵手紙の創始者であることや今なおご活躍中であることなど私も存じ上げていましたがさすが実践者の言だと感心してしまいました。次はその中の冒頭の文章です。
|
- 年賀状というのは、年一回の出会いの場だと思っている。書の道を志し、模索を続けていた二十代の私は、雲の上の人と憧れていた熊谷守一や、棟方志功、井上有一、芹沢_介など、錚々たる芸術家に年賀状を出した。もちろん返信など期待していなかった。いや、正直に書くと万が一ということもあるとは期待もしていた。ところがどうだ。返事が貰えたのである。肉筆の年賀状を受け取った日のことが鮮やかに思い出される。熊谷守一さんのは、絵は印刷で表書きは奥さんの筆で書かれてあった。印刷ではあるが、字がすこぶるいいし、ハガキという小世界と言えども書と絵とが一つに溶けてひびき合っているではないか。洋画家である熊谷さんが墨と筆でかいた美しさが如実に伝わって来てたまらない思いであった。九十歳を過ぎたからこそ、生み出される魅力であろうか。色の数は二色しか使ってはいないのに、なんと見る者の心を引っぱり止まぬことか。(以下省略。熊谷守一の年賀状もあって氏の興奮が伝わって来る思いがしました。)
|